かけだしヒーローと堕落した伝説のヒーロー

※初めて小説書きました。お手柔らかにお願いしますw



プロローグ

俺はヒロ、かけだしのヒーローさ。
10年前魔王を倒した伝説のヒーローたちにあこがれて、ヒーローになったんだ。
特にカッコイイのは、ガイア。ムキムキで、勇敢で強くて俺のあこがれさ。

「はぁーやっぱり何度読んでも面白れぇな。伝説のヒーロー戦記は」
「ちょっとあんた!なーに昼間っからソファーでゴロゴロしてんのよ!」
「あっ!ちょっと返せよ!」
20代後半ぐらいの女性が、僕の読んでいた伝説のヒーロー戦記を奪い、本棚に戻す。
「そんなことしてる暇あったら、さっさと魔物でも狩ってきなさいよね。事務所の会計が火の車なんだから。」
彼女はこのヒーロー事務所の所長だ。事務員みたいな見た目だが、俺より全然強い。ので逆らわず
「へいへーい」
事務所を後にして魔物を探すことにした。
ヒーロー戦記もすかさず本棚から回収しておく。俺の私物だからね。



帰ってきた伝説のヒーローガイア

大通りを歩いてると、今日は少しだけ人々が騒がしかった。
「なんだー?イベントでもあるんか?」
「兄ちゃん、知らないんか?伝説のヒーローがこの町に帰ってきたんだよ!」
「まじで!?だれだれだれ????ガイア!!?」
「そうだよ(肯定)。なんだ、知ってるんじゃないか」
俺は駆け出した。さっき薬屋のジジイから聞いた住所まで向かって。
伝説のヒーローガイアに会える!!会ったらまず何を言おう!何を話そう!まずはこの本にサインを貰おう!

「はぁ…はぁ…ここがガイアの家か」
どん!
「痛ってぇなぁ!」
興奮しすぎて前を見ていなかったので、知らない男性にぶつかってしまった。
「あ、すみません」
「ちっ」
「(感じ悪い奴)」
まぁいいや。ガイアの家のインターホンを押そう。
「お前、ガイアのファンか?見たら残念がるだろうなwwあいつクソ雑魚ナメクジになってっからwwww」
「あ゛!?」
ぶつかった男が喧嘩を売ってきた。
「なんだとてめぇ!ガイアを侮辱すんじゃねぇ!」
「だって本当のことだしプギャーwww」
「砂にしてやる!」
俺がこぶしを振り上げた瞬間、
「暴力はいけないぜ」
小太りのおっさんに手をつかまれた。
「なにすんだよ、おっさん」
「そいつがガイアだよwww」

「は?」



あこがれのヒーローは落ちぶれた

「ガイア?」
「ああ、ガイアだ」
……
………
……………まじですか!?

俺が憧れた筋骨隆々のガイアは、小太りのおっさんになっていた。

「えっと、自分のことを伝説のヒーローだと思っている一般男性…?」
俺は、信じたくない。
「本人だ」
ぽかん!
「いてっ!」
「おまえ!さっきから黙って聞いてれば…!」
ぽかぽかと少年に殴られた。
「パパは強いんだぞ!魔王を倒した伝説のヒーローなんだぞ!バカにするなぁああ!!!!」
ぽかぽかぽかぽか!
「いていていて!わかったよ、わかったから!」
「うちの息子がすまない」
ガイアが、息子を自分のほうにそっと抱き寄せて言った。
「パパ~~~💛」
少年は、ガイアに抱きついてにこ~っと笑った。

俺のあこがれた伝説のヒーローは、小太りのおっさんになってしまった。
でも、家族を得て幸せそうだ。
ヒーローじゃなくなっても、家族でほのぼの暮らす生活も悪くはないんじゃないのか。

バーーン!!
と扉が開いた。
「あんた、ヨーグルト買ってきてって言ったのにのむヨーグルト買ってきたでしょ!」
「ご、ごめん」
小奇麗なおばさんが怒ってる。
「すぐ買ってきてよね!高たんぱく砂糖不使用のやつ!」
「わ、わかったよ」
ガイアは走って出かけて行ってしまった。

家族を得て幸せそうだ。幸せそうなのか…?
ヒーローじゃなくなっても、家族でほのぼの暮らす生活も悪くはないんじゃないのか。
めっちゃ尻に敷かれとるがな。

「あら、ごめんなさいねぇ~お客さんがいたのに何も出さないで~。プロテイン入りのリンゴジュース入れてきますね~」
おばさん(ガイアの嫁)は、ニコニコと台所へと去っていった。
「あ、もう帰りますのでおかまいなく」
ガイア宅から帰る途中、先ほど出会った少年より少し年上の少年にすれ違った。
「ファンが来るといつも皆そういう顔するね。父さんあんなだから」
そんなことないです、なんて言えなかった。



魔物が現れる時

「はぁー暇」
所長はこの1時間で40回目ぐらいの足を組みなおした。
「暇ですねぇー」
「冬は魔物が少ないから、全部大手事務所が狩っちゃうのよねぇー。うちは弱小だから討伐依頼も来ないし…」
「ですねー。俺帰っていいすか?」
「だめ。」
「えー」
事務所で所長とダラダラ過ごしていると、カランカランとドアベルが鳴った。

「あのぉ~。校舎裏で魔物が暴れてるでしゅ~~」
ランドセルを背負った少年が立っていた。
「なんだガキか。帰れ」
「だめよヒロくん。一応お客様よ」
「でもなぁ~。ガキどもは今まで散々ピンポンダッシュとか虚偽の依頼とかしてきたしな」
所長はオレンジジュース(を水道水で1/2に希釈したもの)を少年の前に出すと、少年はじゅーっと一気にオレンジジュースを飲んだ。
「あー生き返るでゅ~~。一目散に逃げてきたから」
少年の話によると、A小学校の校舎裏で魔物が暴れているらしい。

「というわけでやって来た」
しーーーーーん
「ん?静かだな。まーた嘘こきやがったかクソガキめ」
ヒロが帰ろうとすると、
どかーーーーーーん!
「!?」



~1時間前~

「おらっ!」
ドカッ!
「ぐふっ!」
どさっと、少年が地面に倒れる。
「ぎゃはは!ざああああーーーーーこ!!!」
「こいつ父親に似て弱ぇえな!!ぎゃははは!!!!」
「そんなんだから、お前の父親のせいでフレアが死んだんだぞ!!!!」
少年は地面に倒れて、涙を流しながら、地面の砂をぎゅっと握りしめる。
「……もん…」
「ん?なんだぁ?」
「パパは弱くないもん!!強いもん!!!カッコイイ伝説のヒーローなんだッ!!!!!」
「うるせぇ!よっ!」
ガツン!
「ぐがっ!!!」
みぞおちに蹴りが入って、少年は息ができない。
「かひゅーかひゅー」
いじめっ子2人は、がくがくと地面にうずくまりながらかろうじて呼吸をしようとする少年を見下しながら
「バーカ」
「一生床ぺろしてろ」
と吐き捨て、その場を去ろうとした。
その時
どっかーーーーん!
デカいモグラにサングラスをかけたような魔物が、地面から姿を現した。
「ぎゃーーーーー!!!!!!」
「魔物だ逃げろーーーーーーー!!!!!!!!」
いじめっ子2人はおしっこを漏らしながら、一目散に校舎裏を走り去った。
少年を置いて。
モグラの魔物は、大量の牙の生えた小さめの口を開けて、少年に襲い掛かる。
「助けて、パパーーーーー!!!!」
「呼んだか?」



ヒーローは遅れてやって来る

「あなたは、昨日家に来たお兄さん…!」
少年―ガイアの息子は、のろのろと立ち上がって壁にもたれ掛かった。
「新米ヒーローのヒロだ!覚えとけ!」
ヒロははじまりの剣を構えると
「はぁあああ!!!」
キンキンキン!
モグラの魔物と戦う。
キンキンキン!
「くそっ!」
キンキンキン!
「はぁはぁ…つ…強い…」
ザシュッ!!!
「ぐわあああ!!!」
「ヒロさーーーーーん!!!!!」
モグラの魔物の牙がヒロの左腕を切り裂いた――――!

そして、モグラはそのままヒロへと食らいつこうとする!
「くそっ!間に合わない――――!」
どかん!
その瞬間、ヒロはぎゅっと目をつむった。
「…?」
しばらくしてもモグラの魔物の攻撃が、来なかった。
ヒロは恐る恐る目を開けた。

そこにいたのは、頭をつかまれたモグラの魔物と小太りのおっさんだった。
おっさんが、モグラの魔物の頭をがっしりとつかんでいた。
「パパ……!!!!」
「遅くなってすまない」



元伝説のヒーローは、堕落した己を懺悔する

「はぁっ!!!」
どかどかどかん!!!!
ガイアが3発ストレートを食らわせると、モグラの魔物は動かなくなった。
「つ…強い…!」
「ふん、まだまだだな。全盛期の俺だったら、ワンパンだ」
「パパ—!!!うわぁあああん!!!!!」
ガイアの息子は、ガイアに走り寄って大声で泣き出した。
緊張が切れて恐怖が遅れてやってきたのだろう。
「おまえ、その顔―――」
ガイアは息子の腫れた顔を見て、くやしさで顔をゆがめた。
「俺がもっと早く来ていればッ――――!!!」
「パパ…違うよ、これは…」

少年は、父が弱いといじめられていたことを話した。
「そんな…すまない…俺が不甲斐ないばっかりに…!!」
ガイアは息子を抱きしめて
「本当にすまない…くっ…!」
息子にそんな思いをさせてしまったこと。ガイアは悔しさで気が狂いそうだった。
魔王を倒し、ずっと望んでいた平和を享受できて、学生時代から付き合っていた妻と結婚し、2人の子供に恵まれて幸せだった。
でも、
「俺は、俺の愛する人達を守るためにヒーローになったんだ!」
息子を悲しませるなら、そんなものはヒーローではない。
「俺は…俺は…!!」
ガイアと息子は抱き合って、泣きあった。
夕日がきらきらと、校舎を照らして綺麗だった。

「ありがとうな、ヒロ。おかげで大切なものが思い出せたぜ」
「いえ、こちらこそです」
俺はガイアにサインをもらった伝説のヒーロー戦記をぎゅっと握りしめた。
ガイアは、カッコイイ、俺のあこがれのヒーローだ。

「さて。また師匠のもとで鍛えなおさないとな」
ガイアは息子と手をつなぎ家に帰る途中、そうつぶやいた。














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