いまもここで。

なんでこんなことになったんだろう?
目の前のフレンチクルーラーとアメリカンを前にしてぼんやり考える。

もともと部署の違う一期下の男の子だった。期の違う同期同士で飲みに行きましょうってなって何回かみんなで集まった。彼はその中の一人だった。
何回目かの飲み会で、私が週に1回同級生と通っているバドミントンクラブの話をしたら通いたいってなって、彼もそこに通い出したのがきっかけだ。

付き合って2年。私はほんの少し頼りない彼より、少し年上の女友達と遊ぶのが楽しくて彼のことをおろそかにしていた。なんとなく、もう別れてもいいかなーとも思ったりしていた。
そう思っていた矢先、彼は転勤が決まり、私たちはなんとなく別れた。彼が私の留守中に私の家に「お世話になりました」とケーキをもって現れたのを後から聞いた。「あんないい人いないよ」と母に言われ、もうここに彼がいないと思ったら、なんだか急にやっぱりこの人だ!と思ってしまったのだった。

名古屋まで会いに行き、やっぱり戻りたいと伝えると「すごく好きだったけど今は自分のために時間を使いたい」とけんもほろろに突き返され、私は今、名古屋のミスドに一人。
自分が悪いのだ、でも涙が止まらない。フレンチクルーラーがぼやける。
外は雨が降っているのか傘をたたみながら横に派手なスーツを着た女性が座った。黙って下を向いた私の隣の席で彼女は呟いた。
「雨ってやーねーー。」
「まあ、濡れるのも乾くし、胸の痛みも、いつか和らぐのよ。」

あれから20年がたち、私は別の人と結婚し子供を設けた。

彼女たちが予防接種で頑張れたときも、運動会で頑張ったときも、友達と喧嘩して泣いたときも、今もこの場所に来て美味しいコーヒーとドーナツを頬張る。

目の前にあるのはフレンチクルーラーとアメリカン。いまもここで。


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