石油会社のRoyalty trust について

石油株が好き過ぎて「ワイも油田のオーナーになりたい。石油王になりたい。地下資源の利益で甘い汁を吸いたい」という気持ちが強くなってきたので、石油利権について調べた。

元々、鉱山会社には鉱山を実際に持っている企業と、鉱山会社に鉱区を貸し出しをしてロイヤリティー収入(不動産の大家みたいなもの)を得る企業があることは知っていた。

「金鉱やニッケルのロイヤリティー収入があるなら、石油のロイヤリティー収入もあるのでは?」と疑問に思って調べたら見つかった。

日本語の記事もなかったので石油会社の鉱区の取得に関する情報と一緒に書く。
なお、投資したからといって必ず儲かるわけではない。
投資は自己責任デース

鉱区の取得について

鉱区について軽く説明をする。鉱区は簡単に言うと「ここで採掘してもいいですよ」の地区を指す。地区の所有者は国家であったり、個人であったりするのだが、大半は国家が所有者となる。

例外は米国。米国の法律において、地下資源の所有権はその土地の所有者に属する。企業と地主が話し合いをして「掘ってもいいよ」の許可が出れば、国家に承認を得なくても掘ることができる。

大半の国の法律では地下資源の所有権は国家に属するので、もし裏庭で石油を掘りたいなら国に許可を取る必要がある。この承認手続きがやたら長いので、大半の国では石油開発はゆっくりとしたものになる。

米国のシェール革命が採算が取れるとわかってからの行動がやたら早かったのは、法律面で石油会社に有利であったからである。
油層(石油が埋まっている地層のこと)があるとわかったら、地権交渉人(1エーカーあたり年間これだけ払うから、おたくの土地を使わせてくれと交渉する人のこと)を派遣して辺り一帯の鉱区を一気に取得することで石油開発を素早く進めた。

鉱区は高い買い物

鉱区も取得できそうなので、石油開発が始められそうだ。
しかし、ここで問題が出てくる。
鉱区の取得は金がかかるのだ。まだ生産も始めていないのに、財務諸表に赤字がデカデカと記されてしまう。

石油会社のCEOは困ることになる。
米国のCEOは「いつまでに株価を上昇させて株主に利益を出さなければ、てめえはクビだ」の契約を結んで働いている。
米国のCEOの高額報酬が時々問題になるが、高額報酬は株価を上昇させなければならないプレッシャーを対価にしたものである。
また、CEOは株式のストックオプション(権利行使価格で株式を買える権利のこと。株価が上昇していれば実面の株価より安値で買える。詳しくは「コール買い」で検索)で報酬を得ていることも多いので、株価と自身の報酬が直結する。

CEOは考えた。
鉱区の取得は長い目で見れば会社に利益をもたらすが、株主は今期の利益の方が大事なのだ。「これは将来への布石だから我慢していただきたい」では株主は納得しない。どうしたらいいか?

別会社に会計を分離させよう!

別会社を立ち上げよう

ここで鉱区の取得のためだけに別会社を立ち上げて、鉱区の取得は別会社経由で行うことにした。

このようにすれば本体の会社の財務の見かけを良くしたまま、鉱区の取得ができる。
この時に立ち上げた会社がRoyalty trust である。

Royalty trustには税務上でメリットもある。
Royalty trust は利益の90%を株主に還元すれば、税金が免除される仕組みである。
二重課税を避けられるのだ。企業は法人税で税金を払い、株主への配当金で配当税を払いと二回も税金を取られる。
Royalty trust経由なら法人税を免除されるのだ。仕組みは不動産投資信託(REIT)に近い。あれの鉱区版である。

この時に支払われる配当金の利回りが高利回りで5~15%くらいある。
「今期の配当金利回りは5%」と言われた時は「しけた野郎だ」と思うくらいの高利回りである。

タコ足配当をしているわけでもないので、この手の高利回り金融商品にありがちな「配当利回りは高いけど額面がそれ以上に下がっている」といったことも少ない(たまにある)。

当然、高利回りである以上はリスクもあるのでリスクについて説明する。

「Royalty trustを買っていれば億万長者や!」と思った人は相場の世界に向いていない。
相場の世界で必勝法を見つけたと喜んでいる時は、そもそもの前提が間違っている。

所詮は原油相場に依存している

利益の源泉が石油の鉱区の権利収入である以上、原油価格が高ければ利益は出るし、原油相場が低迷していれば利益はたいして出ない。
この辺は石油株とたいして変わらない。

石油株と違う点は
・鉱区の権利収入なので土地さえ貸していれば、一応利益は出る
・油層が枯れたら終わり
な点である。以下説明。

石油会社が利益を出せるのは石油開発を行って石油を汲み上げて、汲み上げた石油を他社に売るか、自社で精製するかをして石油に付加価値を付けることで利益を出している。

ここで大事なのが石油会社は、採掘をして石油を当てないと利益は出ない点である。
Royalty trustは地権の収入が利益の源泉なので、別に石油が出なくても利益はある程度確保できる。無論、石油は出た方が利益は出る。
鉱区の貸主は「石油が出たら、石油による収入の一部を受け取る」契約を結んでいるので出た方が当然得。

油層が枯れると鉱区に価値がなくなるので、石油会社は土地の利権をさっさと貸主に返すか他社に売却するかをして、その土地からは立ち去る。

「油層が枯れた鉱区を欲しがる石油会社がいるの?」という疑問を持つ方もいるだろう。
石油会社はそれぞれ独自の採掘技術を持っているので「うちなら掘れる」という会社もある。
地質学者も多数雇っているので、地層のデータを見て「他社は撤退したけど、ここは掘ればまだ出るぞ」と他社が叩き売りした鉱区を取得する会社もある。この辺りは山師の感覚である。

石油会社なら「地点Aで採掘しても望みは薄いが、地点Bに行けば石油が出る」と思ったなら新規の油田開発ができるが、Royalty trustは土地に依存しているので見捨てられたら利益は出ない。

石油会社とRoyalty trust のいずれも原油相場に依存する株式なのは共通点。

石油会社
・油田の開発をしてガンガン利益を出して、値上がり益も配当金も欲しい方
・値動きは荒め

Royalty trust
・値上がり益は重視していないので、高配当が欲しい方
・値動きはほどほど

どっちが向いているかは人によりけり。

どこで買えばいいの?

米国株を扱っている証券会社なら一部のRoyalty trustは買えるが、Royalty trustは日本での取り扱いが少ない。
自分が使っている証券会社の銘柄検索で「royalty」と検索するとそれっぽいのが出てくる。

色々買いたいなら外国の証券口座を開設する必要がある。
外国の証券口座は特定口座の計算なんてやってくれないので、確定申告がクッソめんどくさくなる。売却した日や配当金を受け取った日の外貨レートを調べて計算するのがめんどくさい。

口座開設の手間と確定申告のめんどくささを考えたら、石油産業がよっぽど好きな人以外は適当に石油株を買った方がいい。

ちなみに石油パイプラインの会社も高配当銘柄が多い(パイプラインの敷設は多額のコストがかかるが、一度敷設してしまえばドル箱になるので新規投資よりも株主還元に熱心)。

まとめ

石油会社とRoyalty trust のどちらも原油相場に依存するので、原油高のインフレヘッジに石油株を買おう。
「原油高でも、どうせ手持ちの石油株が稼いでくれるからいいや」とスーパーのお惣菜を躊躇なく買えるようになる。

以下参考文献

Royalty trust の英語版Wikipediaの記事↓


エネルギー・資源投資の会計実務↓


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