南極大陸の土地を取得しよう!

コウテイペンギン至上主義の勉強会に出席し、コウテイペンギンのコロニーがどんどん減少していることを知った。

南極大陸はどこの国の領土でもない。当面は南極大陸を資源開発などで生息地が荒らされることはない。これは、南極条約で各国の領有権が凍結されているからである。

鉱物資源の採掘云々については、そもそも各国の領有権が凍結されているため棚上げの状態である。領有権の問題が解決しないのに採掘権の話し合いをするのは意味がないという理屈だ。

しかし、問題がある。2048年に南極条約の見直しが入るのが確定している。
現状では南極大陸における鉱物資源の開発は不可能であるが、これを機に解禁される可能性が高い。
南極大陸には石油、金、ダイヤモンド、ウランが埋蔵されているのが確認されている。
「極地で採掘して採算が取れるのか?」という問題は残るにせよ、石油やウランが貴重品になった場合は極地で掘ってでも採算が取れる可能性は高い。

コウテイペンギンのコロニーを保護したい。
環境保護の声を上げるだけでは不十分である。
弱者の叫び声は常に強者によってかき消されてきた。

南極大陸を買おう!

「全土は無理でも、一部分なら買えるのでは?たとえば私有地として囲ってしまうとか」と思い、買う方法を考えた。

私有地を囲って森林保護を通じて野生動物を保護するのは昔から貴族が行ってきた手法である。といっても、貴族が環境保護に目覚めたわけではなく、自分の狩りの獲物を農民に捕らせないためであるけど。
これと同じ考え方である。

幸い、2048年まで時間はあるので準備はできる。

南極大陸の領有権を主張している国々

フランス
チリ
アルゼンチン
オーストラリア
イギリス
ノルウェー
ニュージーランド


領有権を主張している国々に乗っかるのが早そうなので堂々と便乗しよう。

独立国家を一から作るのは予算オーバーだし、自分が生きている間にできるかも不明だ。台湾やパレスチナですら独立国家として認められていない。
ましてや、ポッと出の新国家が南極大陸に領有権を主張して認められるとは考えにくい。旗を立てれば領土を取得できたコンキスタドールの時代とは違うのだ。

領有権を主張している国の内、チリとアルゼンチンには南極大陸に関する国内法が存在している。
1493年のトルデリシャス条約で世界を二分割した。これはスペインがポルトガルと結んだ条約である。
チリとアルゼンチンは旧スペイン植民地である。
1810年の「現状承認の法理」により、チリ共和国はスペインのチリ総督府が有していた南極に対する権利をそのまま継承したという考え方である。この理屈はアルゼンチンも同様である。

乗っかるならチリやアルゼンチンが良さそうである。
国内法が既に用意されているなら手間が一つ減る。
イギリスやフランスで南極大陸に関する法を議会に通すのはすごいめんどくさそうだ。

借金のカタで差し押さえよう

南極大陸には各国が観測基地を置いている。

この観測基地を借金のカタで差し押さえることで、観測基地を所有しようという魂胆である。

国家相手に金を貸す方法で一番手っ取り早いのは、その国の国債を買うことである。国債は債券の一種であり、その国は必ず借りた金を返すという信頼があるからこそ通貨には価値があるのだ。

債務不履行(デフォルト)に陥ったら、担保として差し押さえる権限だってある。この辺りの理屈は住宅ローンと一緒である。

南極大陸の観測基地は国営であるため、ある国がデフォルトしたら、その国の施設や設備を差し押さえるのを狙う。
アルゼンチンがデフォルトした時に、債権者がリベリア沖で航行していたアルゼンチン海軍の軍艦を差し押さえようとした前例があるので可能性はゼロではない(結局は未遂で終わったが)。

この方法の問題点は、債務国がデフォルトしてくれないと南極大陸の観測基地の差し押さえができない点にある。
調べたところ、チリ10年国債の利回りが6.17%、アルゼンチン7年国債の利回りが49.25%であった。
金利が6%代の新興国でデフォルトしないで運営できている国はゴロゴロ存在する。
アルゼンチン国債を大量に買ってデフォルトしたら観測基地を差し押さえることができるかどうかが論点である。

軍艦の差し押さえすら失敗しているため、もう少し確実性の高い方法を考えた。

石油会社の株式を買い占めよう

デフォルトお祈りよりも、もう少し確実性の高い方法を考えた。
採掘権を通じて、南極大陸の土地の一部を購入する(正しくは永久に借りておくだけ)方法である。

採掘権を取得すれば、その土地の区画は石油会社や鉱山会社が自由に使ってもよい。
新興国で鉱山会社が地元民を追い出す問題が発生するのはこれが理由である。石油会社がその土地の採掘権を取得したのであるから、掘るのに邪魔な地元民は追い出してもよい。補償する/しないは石油会社と地元民の間で決めてくれ。

2048年にアルゼンチンやチリが南極大陸の領有権を取得できたとしよう。

南極大陸に先住民はいないので、そこの土地は国家のものになる。
農地にもならない辺境を国家がわざわざ取得したとなると、そこには地下資源がある。
国家主導で石油を掘るのは難しいため、鉱区取得の落札が行われる。公共事業の落札に考え方は近い。
鉱区取得の落札は石油会社が参加する。

ここで冒頭の「石油会社の株式を買い占めよう」に戻る。
会社は誰のものか?
株主のものである。

石油会社を買収、物言う株主となる。株主となった石油会社に南極大陸の鉱区を落札させる。
鉱区での石油開発は「今は原油相場が微妙だ」とか、「環境保護団体の圧力が苦しい」とか難癖をつけて開発は一切行わないようにする。
これで南極大陸の土地は確保できる。

「鉱区の取得だけして開発しないなんてあるのか?」という疑問については前例がある。
資源メジャーのRio Tinto がギニアのシマンドゥ鉱山の採掘権を取得するだけしてずっと開発しなかった前例がある(最近になって開発を進める話になった)。
ユナイテッド・フルーツがニカラグアやホンジュラスの土地の70%近く取得しておきながら、農地開発を一切行わなかった例もある。
土地を取得するだけしておいて、遊ばせるのはよくある。土地を取得しておけば少なくともライバル会社に開発させないようにはできるからだ。

鉱区の落札ができたら、更新料だけ支払って開発を永久に先延ばしにする。
取ったんじゃなくて、ずっと借りているだけだぞ。

石油会社の役員にコウテイペンギン至上主義者を送り込む、石油会社の株式を買い占めできるだけの資金を用意するなど事前準備は必要だが、国家設立や国債買い占めデフォルトお祈りに比べたら遥かに簡単な方法である。

まとめ

南極大陸の土地は買えそうにないので、永久に借りておく方針にした。
莫大な資金はかかるが、比較的現実的な方法に落ち着いた。
「コウテイペンギンを人間扱いする。彼らを南極大陸の先住民とし、自治権を与える」に比べたら遥かに現実的である。

参考にした文献はこちら

2048年までにコウテイペンギンが絶滅しないようにする、石油会社の株式を買収できるだけの資金を用意する、チリやアルゼンチンの要人にシンパを送るなどやることは色々ある。

債券や株式を通じて南極大陸の土地を取得する方法を考えるのは面白かった。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?