「傲慢な高校生が2人」(小市民シリーズ第1期感想)

最終回を見終えて、やっぱり小鳩くんも小佐内さんも好きになれないな、と思った。それでも最終回まで見てしまう魅力と面白さがこの作品には詰まっていたと思う。

今まで見てきたアニメの中で一番静かなアニメだった。夏といえば、ヒロアカやサマーウォーズ的なアクションド派手なアニメが公開される季節。そんな季節にこんなに静かなアニメで勝負するのが凄い。

私は羊宮妃那さんのオタクなので、羊宮さん演じるキャラクターのことは好きになりたい。でも小佐内さんは怖すぎる。自分がこの手の子に上手く利用されていた過去が、その悲しさと恐ろしさが、どうしてもフラッシュバックしてしまう。
これは小鳩くんにも言えることなのだけれど、人畜無害そうな感じを出しておいて、遠慮なく相手を叩き伏せるのが怖すぎる。しかもそこに欲があまり感じられないのが、ますます怖い。

ここからは何故私が2人の主人公を好きになれないのか、怖いと感じるのかを語ることになる。

まず小鳩くん。推理で相手を叩き伏せること自体が目的って、あまり共感できない。相手に罪を認めさせて悦に浸った経験がないからだろうか。刑事や探偵の物語ならそれが仕事だし、その先に実は自分の大切な人を傷つけた犯人を探しているとか、犯人を止めないと色々な人達に被害が出るから、といったわかりやすい理由がある。
でも、小鳩くんの推理にはそれがない。アニメで見る限り、数々の推理の先に解明したい大きな謎がある訳でもないし、被害者が可哀想だからみたいな同情をするタイプでもなさそうだ。純粋に推理で他人を負かすことに幸福を感じる人なのだと思う。スイートメモリー(9,10話)では小佐内さんの事も徹底的に推理で問い詰めたし。
そして彼は推理で追い詰めた末に笑う。とんでもないドSだ。あんな「ぼく、人畜無害です」みたいな顔をしておいて、えらいドSで傲慢だと思う。

そして小佐内さん。報復のためなら手段を選ばないって時点でかなり怖いが、小鳩くんに推理で詰められても、自分を守るために周りの人間を騙して使うことを反省はしてなさそうで怖い。自分がかわいくて、男子から好かれ、女子からは嫌われるのは多分わかっている。
その上で自分に酷いことをしてきた男子を警察に突き出す。悪いことをしている女子を告発すれば、普段からイラッとくるであろう自分に思いっきり反撃してくれると分かっていて告発する。反撃を倍返しにできるから、あえて自分に矢を向ける。
周りの人間を自分の思い通りにできた時、彼女はかわいらしい笑顔を見せるのだ。自分の思い通りに人が動くのはさぞ楽しいだろう。

そしてこの物語では男女の恋愛要素が無いわけではない。視聴者にもわかりずらく描かれているのが、すごく好きなポイントだ。
小佐内さんは自分の最大の武器である小動物的なかわいさ、自分が人を虜にする魅力を持っているとわかっているし、自覚的に無自覚のあざとさを振りまいてると思う。小鳩くんが小佐内さんを好きになってしまうのも凄くわかる。あざとくても、かわいいもんはかわいい。
「まるで男女交際じゃないか…」と浮かれる小鳩くんを、最終回で「私たちを見て付き合ってるっていう人もいるね。あれも嘘」と突き放す小佐内さん。でも別れ際にスイーツセレクションを巡るのが楽しかった気持ちも本当にあったの、とか言い出す小佐内さん。
仲丸さんとの会話で「別れた」とまるで付き合っていたかのように話す小鳩くん。「じゃあさ、つきあっちゃう?」と言われても「いや…」とか言っちゃう小鳩くん。
平気で他の男に「嫌いじゃないの」なんて言って、小鳩くんとの思い出の店に連れていく小佐内さん。
小鳩くんが狼で、小佐内さんは狐なんて表現があるが、恋愛的な面から見ればネズミと狐でしかないと思う。

書いていて段々小鳩くんに同情してきてしまった。ちょっと可哀想だ。彼だけ夏が終わっても宙ぶらりんなのだから。

この作品で一番印象に残っている台詞は、
「傲慢な高校生が2人」
という最終回の小佐内さんの台詞だ。
前述の通り、怖さと傲慢さを持ち合わせた2人の互恵関係が終わる決定的な一言だ。推理で人を任したい。徹底的に復讐したい。そんな欲望を抑え込み、小市民になろうとしたけど出来なかった傲慢な高校生が2人。

でもこの物語はここで終わりでは無い。
そう、2期が待っている!傲慢な高校生2人の物語の結末。それがどんなものなのか、今からとても楽しみだ。

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