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NSRI「公園が主役のまちづくり」を読んで

 本書は、設計事務所である日経設計のシンクタンク機能である「日建設計総合研究所(以下、NSRI)」が主に公園を中心としたオープンスペースへの取組を主に「官民連携」という視点から整理した図書である。

1.パブリックスペースにおける近年の動きについて

 日本におけるパブリックスペースは、「オープン化」の動きになってきていると言う。それは平成26年に改正された「都市再生特別措置法」の改正内容、個別法(河川法、道路法、都市公園法)の河川準則特区(平成16年)、ほこみち(令和2年度)、Park-PFI(平成29年)の規制緩和をみても明らかである。
 今後は、個別法の区域であるオープンスペース(河川、道路、公園、公開空地、駅前広場)を横断させる取組により「まち全体」へ展開していく取組が必要だと言う。道路はオープンスペースを繋げるためには、今後、一番重要な役割を果たしていくと思われる。(https://www.mlit.go.jp/road/hokomichi/pdf/s01.pdf) 
 パブリックスペースを中心とした街にしていこうとしている事例としては、「パリ市:15分都市」や「メルボルン:Plan Melbourne 2017-2050」、「ポートランド:20-minitune neighborhoods」という生活圏の豊かさ向上という指標の1つに街中のオープンスペースの改革を位置付けた事例である。

2.都市公園を事業化するための手順・留意点について

 都市公園の事業化、つまり「設置管理許可制度やPark-PFI制度」を活用した官民連携を進め方について本章では記載している。
 事業化発案段階においては、目的設定のための関係者間での共通認識(KPIとして設定)することが重要であり、その効果を見える化するためにも、横軸に関係主体、縦軸にその効果の星取表(便益機着表)を作成することが重要だと言う。また、土地のポテンシャルの測り方で以下が重要である。
→SWOT分析、3C分析、4P分析、STP分析、ジャーニーマップ
 次に、事業化検討段階ではサウンディング調査、事業者選定段階では各種公募資料の作成が必要ということが記載があった。

3.都市公園等におけるNSRIの取組について

スマートパーク:医大と連携したサービス
 橿原市と奈良県立医科大学が包括協定をしており、その取り組みの1つとして「公園施設の混雑度の見える化」と「先進機器を使用した健康アドバイス提供サービス」に関する実証実験を実施。

デジタルサイネージ:通信企業との連携による情報発信
 豊中市千里中央公園で西日本電信電話が豊中市と連携し、デジタルサイネージを活用した健康づくり支援実証実験をスタート。デジタルサイネージを設置し、ランニングのペースメーカー、走行距離の計測、広告・行政情報の発信、防犯カメラ、Wi-Fiなどの機能を使っている。
 この動きは、文科省「スポーツ実施率向上のための行動計画」においても示されている。

4.本書の感想

 本書は、街におけるオープンスペースの重要性を説きつつ、特に公園事業を通じて街全体をどう豊かにするのか。という課題に対して、官民連携やICT、健康、環境など様々な視点から解決のアプローチ方法・事例を紹介しているものと言える。
 モノの流れのスキームだけでなく、カネの面でのオープンスペースの在り方や、徳山駅前の広場や駐輪場、道路、公園を包括管理するといった維持管理手法面でのアプローチ、街全体への規制緩和策としての地区計画といった都市計画手法的アプローチなどもあれば尚良いと思われる。

http://www.city.shunan.lg.jp/soshiki/40/80582.html

 


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