ワレボメ
あれは20歳の時でした。
可愛がって下さった先輩から、昼食に招かれました。虎ノ門近く、小さな和食の店です。
主人は京都の名店で、修業した方とか。店内もスッキリしていて、壁に
徳力画伯の版画が飾られていました。
色白男前の主人から「なにか苦手な物は?」と聞かれ(鳥と貝類は。それと午後からお茶の稽古なので、一文字・二文字は使わないで)
主人は大層驚き「お若いのに、良くその言葉ご存知で!」ほめて下さいました。宮中の女房言葉からで、一文字は
葱を単に「き」と言ったことから。
それに対して「韮」を、二文字と称しました。
先輩は「なあ、僕がこの子を気にいって連れて歩く理由分かった?」いささか自慢気でした。
続いて「お好きな物は?」即答(玉子料理全般)と答えると、先輩は声をあげて笑われました。
「まだ子供だからな~」つられて、主人も笑いました。