見出し画像

小さな茶入

茶壺のお茶も少なくなった10月、小さな
茶入の出番がやって来ました。
幾つか小振りの茶入を持ちますが、この品は
特別なのです。

と言うのも、一番最初に買った思い出の茶入
ですから・・・今から54年前、私は池袋の
男子校に通っていました。池袋西武百貨店の
茶道具売り場を良くのぞいて居ました。

学生服の子供が熱心に道具を見るので、中年の
男性店員さんが色々と教えてくれました。
茶入はそれこそ茶色系統の釉薬で、肩衝ばかりが
並んでいました。

その中で形も色も違う品物が、目を引きました。
17歳の誕生日に「何が欲しい?」と祖父に聞かれ
ました。正直に{西武デパートの~}と話して、
軍資金をもらいました。それで購入した品です。

作者は京焼の「国領拡治」氏で、仕覆もお馴染みの
「紅牙瑞錦」です。例年誕生日近くでのみ、使って
来ました。名残に使うのは、初めてです。

この茶入を手にすると高校生だった私が、彼方此方の
デパートの茶道具売り場をうろついていた頃が
蘇ってまいります。