お茶のセンセ 晩節

友人は、東都でも有名な先生の門下でした。

80代後半となっても、お元気で指導を続けられ

社中も大勢が学んでいました。

その彼女から相談を、持ちかけられました。

古い茶杓を手に入れ、それを老先生に見て頂こうと

持参。他の社中も居る前で「先生これは○○作で

間違いないか、ご覧頂けますか?」と渡しました。

それが一ヵ月・二か月経っても、何も仰せにならないので

自分から「先生お預けした茶杓は・・・」と訊ねたそうです。

すると「そんな物見た事も無い!」と激怒され、稽古を

止められてしまいました。

共に暮らす、指導の助手もしているお嫁さんに訴えました。

「お父様は頑固で、一度言い出したら引きません」悲観的な

事を告げられ、相談に来たのです。

「どうやら老先生は、痴呆が始まったらしい」と稽古場でも

噂されていたとか?これは誠に難しい問題ですが、諦めるしか

無いのかも知れません。目撃者も居るので、法的手続きに

訴えれば品物は戻るかもしれません。

それにはお金も時間もかかります。気の毒ですが、茶杓は

無いものと考えた方が良いでしょう。