茶道具百話 贋物

ある年の晩秋、若い数寄者との触れ込みの方から

お招きを頂きました。先様は茶友の知人で、私の

道具好きを知ってのお招きとか・・・

寄付きに通ると、床の間一杯の箱書きが飾られて

居ました。同行の友人はこちらに{目配せ}します。

私も静かに頷き床前を立ちました。

私が用足しに立つと、彼もついて来ました。「どう

見ますか?あの箱書きを」{全部駄目、本席に入るのが

恐ろしい様!}小声で会話しました。寄付きでは他の

お客様も居ましたので、安全な場所で話した訳です。

案の定席中で亭主は次から次への「道具自慢」が続きます。

{珍しい御道具ばかり、どちらでお求めに?}嫌味で言いました。

「みんなオークションで探しました」この答えで箱書きが

駄目な訳が解りました。

本人は目利きのつもり?「沢山の良い道具を安く買えた」と

自慢していました。世の中{目明き千人}と言われますから、

恥を広げる事もないのですがね~

今迄参加した茶会の中でも、一番珍奇な会でした。