茶道具百話 伊羅保

高麗の釘彫伊羅保を買いました。20代半ばの頃です。

渋谷・道玄坂に在った、古道具屋さん。茶道具専門では

ありませんでしたが、良い物が並んでいました。

お気に入りの一碗で、京都へ勉強に行く時も荷物に

入れました。

ある日稽古場に道具に詳しい「K業躰先生」が座られました。

先生のお呈茶にこれを使おうと、急いで寮に戻りました。

{先生この伊羅保いかがでしょうか?}お尋ねすると言下に

「これは出雲の権兵衛だね」ショックでした。高麗と信じて

いたのが、出雲とは!「恐らく初代の作でしょう。上手く

写している。高台・べべら口・申し分のない出来ですよ」

うれしいお答えに調子に乗り{箱を新調したらお書付が

頂けますか?}「私が口添えしてあげよう」と仰せでした。

高麗ではありませんでしたが「初代権兵衛」との、お箱を

賜りました。