一言

京都の光悦会と並ぶ、東京の大師会。
ある年会場入口で、高名な御数寄者と
出会いました。

「おや大川君、相変わらず熱心だね。
今日は私と一緒に、どうかな?」
お声掛け頂きました。
これ程の方のお供となれば・・
ともかく緊張しました。

寄り付きの掛け物を指し「ほら君の
好きな歌切れ、読んでごらん」
背中に汗をかきました。幸いお得意
新古今和歌集で、恥をかかずに!
お菓子や器にも目を留められ「随分
江戸前の取り合わせ」嬉しそうに、仰せです。

本席に通ると、一休禅師の一行でした。語句も「萬法帰一」厳しいもの
です。釜はその年の干支に、かけた?
珍しい「唐犬」大きな耳が、特徴です。

すると大先輩が小声で「掛け物と釜が
合わない」と言われます。(どんな釜が、相応しいでしょうか?)

「軸が格調高いのだから、無地の真形などが良かったね」掛け物と釜に関する、忘れられない一言です。