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【反対討論】議案第65号

議案第65号、西予市立市民病院、野村病院および西予市野村介護老人保健施設つくし苑の指定管理者の指定について、反対の立場で討論いたします。

この指定管理者の指定については、わたしは大きく二点で反対いたします。

第一に、市が指定管理制度導入の理由としている一つ、財政課題の解決にはなっていないことです。
今回の指定管理者には、公益社団法人地域医療振興協会が指名されています。
協会から計画としてあがっている指定管理料は、予想をこえた4億8,000万円でした。
これは現時点の金額であり、確定ではないと市は説明しますが、
ではどこが交渉の項目になり得るのか?
特別委員会でお聞きしたところ、明確な答弁はありません。
課題項目が分かっていない状態で、どう交渉できるのでしょうか。
また、市が協会へ提出している仕様書に、50万円以上の機器や修繕は市が負担することとなっており、この経費もいくらかかるか、一般質問で問いましたが、今も見積もりが出されて来ておりません。
このほかにも5年間の職員の現給補償もあり、結局いくらかかるのか、概算さえ出されていません。
「指定管理の指定がされてからでないと出せない」と市は言われますが、
経常収支率97.5%の西予市にとって、財政の課題は切実です。
おおよそでも数字を出さないその市の姿勢をもって、今の時点で、
「指定管理制度導入によって、また、協会の指定管理によって財政課題が解消する、今より良くなる。」とはまったく言えないと考えます。

また、今の計画では、どんなに病院ががんばって事業収益を上げても、その2%が本部に流れる仕組みになっています。
その額はおよそ5,800万円と計画されています。

外来や入院や施設の利用が増え、その収益がたとえ上がっても、本部に流れるお金が増えるばかりで、それが病院や施設、職員に還元される仕組みにはなっていません。

ご存じのように、経済は、そのフィールドで循環することが大切な要素です。
お金が外に流れていく仕組みを入れてしまえば、西予市の中で循環するお金がどんどん減ってしまいます。
現在直営している給食も、外部委託になってしまって材料などが西予市産でなくなること、西予市の業者を通さなくなることなどによって、外部へお金が流れてしまう可能性があります。

赤字の経営は良くないというイメージをもたれるかたが多いと思いますが、公営企業は、ムダや不正がない限りは、その赤字というのは市民の利益になっているということです。
もちろん、現在の一般会計繰り出し額は大きくなりすぎていますし、
赤字の削減に努力すべきなのは言うまでもありませんが、
市内で循環しているお金のその経済効果はムダではありません。
指定管理導入によって、むしろこれまで市内で回っていたお金が外に流れてしまい、さらには財政も圧迫するという事態になりかねないと考えます。


第二に、大きな課題である「医療従事者の確保」についての解決も答えとなっていないことです。

市は、協会に全国規模のネットワークがあることから「医療従事者の派遣による一時的な支援は期待できる」としていますが、それは文字通り長期的なものではなく、根本的な解決にはなりません。看護師学校も2校運営されており、新規医療従事者の確保も期待できるとしておられますが、一校は定員割れしている状況と聞いています。
医療従事者不足は全国的な課題であり、指定管理を導入したところで簡単に解決することではないでしょう。
むしろ、市がさまざまな施策を実行し、医療従事者がたとえ増えたとしても、ほかの病院に派遣されてしまう可能性も出てきます。

わたしたちの町のような、帰りたくても仕事がなくて帰れない、という声を多く聞く自治体は、公立病院の職員という安定した雇用形態を、人口減少対策やまちづくりの重要なインフラと捉えて、これを維持していくほうが、有益なのではないでしょうか。

また、協会の計画書を審査した選定委員会でも、「医療従事者確保のための提案」という項目は17点と、すべての項目の中でもっとも低い点数でした。市は及第点であると答弁されていますが、提案自体が弱かったことはこの点数が示しています。

職員組合のアンケートでも、協会に指定管理となった場合、退職を考えているという職員の数も未だに多くおられ、この現状を抱えたままで指定管理の指定に踏み切ることは、これまでなんとか維持してきた病院機能が、大量の退職者によって維持できなくなる可能性を大いにはらんでいます。


ですがなにより、市長がこの指定管理の指定をしたい一番の根っこは
「両病院の協力体制の構築が行えなかったこと」なのではないでしょうか。

この問題が持ち上がったとき、最初に「財政」次に「医療従事者不足」と言われましたが、それは二つとも、良くなるという兆しが見られる計画案では今のところありません。

ではなぜ指定管理しかないのか。

それは、このややこしかった二つの病院問題を、専門知識も兼ね備えた外部である協会が、強制的に実行できる指定管理という手法で、なんとか解決してほしいという市長の思いがあるように見受けられます。

指定管理導入の理由が、財政も看護師不足も解決が見込めないのに、
「両病院の相互の理解が進まなかったせい」なんてことで決まってしまうとしたら、
市民にとってこんなに不利益なことはありません。

ですが、この問題を、これまで市長一人に背負わせてきてしまったこと、
知ろうともしてこなかったことに、
市民の一人として、恥ずかしく、申し訳ない気持ちでいっぱいです。

むずかしさがあったことは、事実だと思います。
議員になって、それぞれの病院の話やこれまでの経緯を聞くことができる立場となり、それを実感することもあります。

ですからたとえこの議案が否決されたとしても、両病院の協力体制が構築できなければ、西予市の医療・福祉改革はできません。

両病院の医師、医療従事者のみなさんは、この制度導入時点の市のやり方に、大変不満を抱かれ、今もそれがずっと心にあることだと思います。
また、これまでの話し合いの過程の中でも、自分たちの存在意義を軽く見積もられていると感じ、失望されておられることをアンケートで読ませていただきました。
この間、仲間が退職していき、業務が増え、心身ともに疲れておられることでしょう。
将来が見通せない不安な毎日の中で過ごされてきたこと、それでも日々の業務と向き合ってこられたこと、どれも本当に大変なことだと思います。

ですが、この議案が否決され、公立として存続するとしたら、
医師・医療従事者のみなさんには、市民のための地域医療・福祉とは何か、どういった病院が求められるのか、お一人お一人がその役割と運営を担う当事者として、考え、行動してもらわなければなりません。
そうでなければ、わたしも市民の代表である議員として、この議案に反対することができません。

先ほどこの会議の前の行政報告で、市長と菊池病院長の意見書から、
「今、この議案を可決しなければ両病院が共倒れになる」と言われました。
可決されても指定管理が始まるのは令和7年度からであるのに、すぐにでもそうなってしまうように感じる説明を受けました。
また、「反対するなら対案を出せ」とも言われました。

わたし個人は、西予市が公立病院を二つ維持していくことは難しいと判断しています。立地要件から、野村病院への集約が望ましいのではと考えていますが、あくまでもこれはわたしの意見です。

厳しい言い方ですが、宇和が、野村が、といった対立を煽るような議論は、真に市民のためになるものではありません。
それぞれの病院が培ってきた歴史や背景は活かし、
それを尊重し合う土台に立った上で、
どの地域の住民にもなるべく公正に、そして患者が望む個別の医療と福祉をどう提供していくか、これを公立病院・施設としてどう実現していくのか、その医療改革に向けて舵を切らなければなりません。
それには両病院の、みなさんお一人お一人の、相互理解、交流、協力が必要です。
どうかお力をおかしください。


わたしは、この指定管理導入の議論をきっかけに、
管家市長が西予市の医療・福祉の問題をテーブルにあげてくださったことは、良かったのではないかと思っています。

多くの市民も病院がここまでになっていることを知らなかった。
どうしても、病院に行くのも施設を利用するのも、自分や家族や知り合いが病気になったとき、弱ったときです。
自分やまわりが健康で充実しているときには、他人事だったはずです。
もちろん、それはわたしも同じです。

これからは、市民、病院、行政職員、議会、それぞれが自分事として、西予市の地域医療・福祉をどうしていくか、
10年、20年、30年後、もっと先、どういう病院だったら残して行けるのか、あらゆるリスクや可能性を想定しながら、
そして今、この「公立病院医療体制確保支援事業」で受けられるさまざまな専門知識によるコンサルタントや支援を十分活用して、
外部からの知恵をお借りしながら、
「自分たちのまちのことは自分たちで決める」
その力をつけていくことこそが、わたしたちの自治体が生き残っていく道だと、わたしは確信しています。

市長にはぜひ、その旗振り役をやっていただきたい。

管理者を信頼すればよい、という議論が議会でもたびたびありました。
わたしは、協会より、管家市長を信頼したい。
これまでたった一人に背負わせてきてしまったこの医療問題を、議会の中の議員の一人として、わたしも共に背負っていきたい。

そのために公立として存続して、予算・決算をきちんと責任をもって見ていかせてください。
市民の代表として、市民の意見を広く吸い上げ、行政に提案する役割を果たさせてください。
二つの病院の医師・医療従事者の考えを聞き、その集約、課題解決、
ともに考える場づくりに参加させてください。

わたしはそれが「議会として責任をとる」ということだと考えます。

市民に選ばれた議員のみなさん、一緒に責任をとっていきませんか。
指定管理にお任せしてしまうのではなく、
市長をリーダーとし、議会がそれをチェックする、
住民自治によるほんとうの医療・福祉改革を心から希望して、
反対討論といたします。

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