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学徒, 落徒, lacto, galacto

0.ゆる落徒ハウス

「ゆる言語学ラジオ」から派生した「ゆる学徒ハウス」という企画があり、そちらの選考に応募したところありがたいことに一次選考に通過をした。
残念ながら二次選考では落選してしまったのだが、貴重な機会をもらえたことに感謝をしたいと思う。
さて、そんなゆる学徒ハウスなのだが、僕の他にも二次選考落選者が30名ほどいる。そのうちの一人が「せっかくなのでみんなで交流しましょう」とメンバーたちに声をかけ、飲み会の場を設けてくれたり、Discordのサーバーを立ててくれたりしたおかげで、ただいま二次選考落選者同士での交流が深まってきている。
中でもDiscordのチャットでは連日自然発生的にうんちくしりとりパンクラチオンが開催されて大いに盛り上がっている。なかなか濃密なやりとりで、傍で眺めているだけでも随分と刺激を受けることができている。
そんな落選ゆる学徒たちの集いは自嘲と諧謔を込めて、いつからか「ゆる落徒ハウス」と呼ばれるようになった。
「ゆる言語学ラジオ」から派生した「ゆる学徒ハウス」。さらにそこから派生した「ゆる落徒ハウス」だが、もしかするとここから新たな企画や番組が生まれることもあるのかもしれない。「ゆる学徒ハウス」本編同様、しばらく目が離せないことになりそうだ。

1.lacto-

ところで、少し医学用語に寄せた話をしてみると、「落徒」という言葉から思い起こされる用語がある。
それが、接頭辞 "lacto-" である。
市販のアイスを買ってくると、よく「ラクトアイス」と書いてあったりする。あの「ラクト」だ。
ご存じの方も多いかと思うが、この "lacto-" は「乳(ミルク)」を意味している。ラテン語の "lac" がそのルーツだ。
ちなみにコーヒーに牛乳を混ぜたものを「カフェオレ」や「カフェラテ」という。"café au lait" の "lait" と "caffè latte" の "latte" はそれぞれフランス語とイタリア語だが、どちらもラテン語の "lac" を語源としているそうだ。なお、驚くべきことに中国語のラクも "lac" を語源としているという説があるらしい(出典:ランダムハウス英和大辞典)。
そんな "lacto-" だが、多くの医学用語にも使われている。
乳酸菌の一種、ヤクルトにも含まれている乳酸桿菌属はLactobacillusだし、母乳を分泌するホルモンはprolactinだ。また、ペニシリンの薬効はβ-ラクタム構造という化学構造に由来するが、この「ラクタム」という語もルーツを辿っていくと "lac" に行きつく。
このように、lacto-(ラクト)という語は医学用語においても非常に身近で重要なものであるのだ。

2.乳糖lactose

さて、そんな "lacto-" のつく言葉に、乳糖lactoseというものがある。その名の通り、牛乳に含まれる糖だ。
よく、牛乳を飲むとお腹を下しやすいという人がいるが、体質的にこの乳糖が分解できない乳糖不耐症が原因であると言われる。乳糖は分解(消化)が必要な糖なのだ。
分解が必要な糖というのは、多糖類だ。糖には単糖類と多糖類があり、単糖類が複数結合して多糖類が作られる。多糖類はそのままでは腸で吸収できないので、分解して単糖類にしてあげる必要があるのだ。
乳糖は、単糖が2つ結合してできた二糖類である。結合している2つの糖とは、グルコース(ブドウ糖)とガラクトース(脳糖)だ。
この後者のガラクトース。ラクトース(乳糖)と名称が似ているが、何か関係があるのだろうか?

3.galacto-

実はこの "galacto-" も、"lacto-" と同じく乳を表す言葉である。
"lacto-" はラテン語の "lac" が語源だったが、この "galacto-" はギリシャ語の "γάλα(gala)" が語源となっている。語源的にはギリシャ語の方が古く、gの音が脱落してラテン語のlacになっていったようだ(参考)。
この "galacto-" も、"lacto-" と同様にさまざまな医学用語に使われている。
例えば、妊娠出産していないのに母乳が出てしまう乳汁漏出症という症状があり、これを英語でgalactorrheaという。他にも母乳に関連した語句に "galacto-" が使われることが多く、母乳を分泌する管である乳管galactophoreや、その乳管に造影剤を注入する乳管造影法galactographyなどがある。
さて、そんな "galacto-" だが、実は医学用語以外にもある単語の語源になっている。一見乳とは関係がなさそうで、実は関係の深い言葉なのだが、読者の皆様はお分かりだろうか。
ちょっとしたクイズのようになってしまったが、ある有名文学作品の冒頭がこの問いに対する良いヒントになるので引用してみよう。

「ではみなさんは、そういうふうに川だとわれたり、乳の流れたあとだと云われたりしていたこのぼんやりと白いものがほんとうは何かご承知ですか。」先生は、黒板にるした大きな黒い星座の図の、上から下へ白くけぶった銀河帯のようなところをしながら、みんなにいをかけました。

銀河鉄道の夜

というわけで、正解はgalaxy(銀河)だ。
天の川を英語で "milky way" というが、実は "galaxy" も乳にちなんだ言葉なのだ。
学徒→落徒→lacto→galactoと連想を繋いでついに "galaxy" に至った。
冒頭でも述べたように、落徒の集いでは才能と才能が化学反応を生んでいる。二次選考通過者による「ゆる学徒ハウス」本編の公開は10月以降だが、こちらも間違いなく素敵なマリアージュを見せてくれるだろう。
そんな学徒・落徒の集いは、さながらきらめく星が集まる銀河と呼べるのではないだろうか。連想ゲームで到達した言葉を見ながら、ついそんなことを考える次第である。

なお、二次選考落選者の集い「ゆる落徒ハウス」であるが、現在20名ほどの交流がある。残念ながらコンタクトがとれず声をかけられていない人もまだまだ多いため、もし該当する二次選考落選者の方で、交流に加わりたい方がいらしたら連絡をいただけると幸いである。
連絡は私uraQ(Twitter:ura_Q)もしくは、ゆる落徒ハウス発起人のLEO_jpさん(Twitter:LEO_jp)までよろしくお願いしたい。

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