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焼肉にまつわる記憶
一度セックスをした男に焼肉を誘われた。
行かなければならない。
なんで断らなかったんだろう。
人の金で食べられるであろう焼肉。
LINEでお店の位置情報が送られてきた。
「〇〇って知ってる?」
「知らない〜!!!」(行ったことあるわ!!)
茶番。LINEの茶番。ああくだらない。
お店はその名前に聞き覚えがあったどころか、
大好きな人(もう会えない)と
初めて食事をしたお店だ。
とりあえず知らないふりした、でも心は素直ってか?
色々思い出した。以下回想。
大好きな人(もう会えない)は、
会社で出会った先輩だった。
口が悪くて女好き、でもとっても優しい人だった。
その頃の私は、会社の人間関係ややりがいのなさなどに憔悴して体重が36.5kgまで落ちてしまっていた。飲酒orタバコが出来ればいい。なんなら飲酒andタバコがベストだった。そんな私を心配して連れ出してくれたとかそうじゃないとか
焼肉屋に着く前に、タバコが切れたと
セブンイレブンに寄ったのも覚えている。
テリアのメンソールが染みついた車内で待っていた。なかなか大好きな人(もう会えない)が戻ってこなかった。やっと戻って来たと思ったら「テリアって言ってんのにロッテリア?と聞き間違えられた」って怒っていた。私は笑っていた。焼肉屋に到着した頃、雨が降っていた。大好きな人(もう会えない)は先に降りて
私が濡れないように傘をさしてドアを開けた。
焼肉は美味しかったし、
いっぱい食べる君が好き、だと思った。
焼肉の後は夜景見に行こうとしたのに
濃霧でなにも見えなかった。
とか、記憶を辿って脚色していくうちに
身体の力が抜けていく。
なんなら飲酒で浮腫んだ目がじわりじわりと滲む。
大好きな人(もう会えない)と行った焼肉、
どうでもいい男と行く焼肉、
はぁ、難儀。とても億劫。
大事にしたい思い出が汚れるわけはない。
むしろギトギトの油臭にまみれた方がいい。
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