溜まっていく下書きとそれを読み直す陳腐な時間

とびっきりの美人、というものになってみたかった。
誰からも愛されるそんな。その基準は難しいが、一つ指標を持つとするならば、いつでも納得のいく証明写真が撮れる顔になりたかった。
そう、昨日証明写真を撮った。
お値段1100円。
美白モードで補正された肌はテカテカと、
顔はひしゃげているようで、
ずっとは見ていられなかった。
撮り直しモードがない機種だったので、
3回撮影された間抜け顔の中でも、
まだマシなのものを選んだ。
写真を撮ると魂が抜かれると信じていた頃の日本人と私の気持ちは変わらないかもしれない。
魂は抜かれていないが、魂に似た何かは抜けると思っている。自動で選ばれたグレーの背景よりは明瞭な青が良かったな、と撮り直しに行くことを考えた。
昼間の気温を引きずって、いつもよりは暖かい夜だった。冬なのに、夏みたいだと思った。アスファルトがまだ熱を持っている気がした。

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