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囀る鳥は羽ばたかない 竜崎と七原

(タイトル画像)https://www.irasutoya.com/

ヨネダコウさんの漫画『囀る鳥は羽ばたかない』。
矢代のよき理解者、竜崎と七原について書きます。

竜崎について

矢代の弱さに気づいているのが竜崎だ。

「あんなのがヤクザに向いてるわけねぇだろうが
お前らの目はどこについてやがんだ!!」

4巻 第17話

「矢代を殺れ」と平田に命令されて悩む竜崎が、矢代と出会った頃のことを思い出す。その回想シーンがとてもいい。

暑い夏の昼下がり。
雑居ビルの2階辺りにある殺風景な雀荘。
大勢で散々“遊んだ”後の部屋には、若き矢代(19)と竜崎(21)の2人だけ。

「他の人達は?」
「さあな どっか行った
メシでも行ったんだろ」
「アンタは行かないの?」
「腹減ってねえ」
「ふぅん」

「なぁ お前
男に惚れたりすんのか?」

「惚れたりとか
もういい」

3巻 第14話

矢代の答えを聞いた後の、竜崎の真面目な顔が、すごく好きだ。

いたわりたい気持ちがあるけれど、同情は相手を傷付けるとわかっているので抑えている。
でもやっぱり心の中では、「『もういい』なんて言うな」とつぶやいている。
そんな表情に見えた。


命令に背き、捕らえられた竜崎は、平田から、「まさかこんなに矢代に情があるとはな」と言われる。

「昔 矢代に入れ込んで
破門になった奴がいてな

お前を見てると
その男を思い出す

哀れでしょうがねぇ
あいつはお前が惚れてることだって
とっくに気付いてるんじゃねえのか?

気付かれてるから
お前はずっと奴にコケにされてる」

5巻 第26話

このシーンは緊張感があった。

平田の台詞に納得してしまう部分もあったので、竜崎がどう出るのかハラハラした。

竜崎の答えは、

「大概にしとけよ コラ」

5巻 第26話

竜崎が矢代を想う気持ちは、惚れた腫れたとはまた違うんだろうな。


矢代の画策で、竜崎は平田から逃れる代わりに逮捕される。

連行前に矢代と話す竜崎。

(お前が女だったらって
そしたら俺が守ってやったのにって
あの頃はバカみてえなこと考えてたなんて
死んでも知られたくねぇ…)

5巻 第27話

「情」にもいろいろある。

こんなふうに大切に思われている矢代が、すごくうらやましい。

七原について

七原は、『囀る』一(さえずるいち)、いい男だ。

七原が矢代の下につく前のエピソード。
慕っていた人間に騙され、捕らえられ、ボコボコにされた七原に矢代が問いかける。

「本音言ってみな
一回だけ聞いてやるよ」

「……俺は
悔しいっ
死にたくねぇ…っ
助けて欲しい…っ
もう痛えのは嫌だ!!

……でも
アンタに助けは求めねえ」

4巻 第18話

「助けて」と言えない矢代と、それを言った七原。

でも最終的には七原も強がるわけで。
矢代が七原を側に置く気持ちが、なんとなくわかる。


七原のいい奴ぶりがうかがえる描写は、
「女の頼み事ひとつ守れねぇなんてカッコ悪ィ」とか、
「人助けしに来たんじゃねぇだろーが」とか、
それはもう多過ぎるので割愛。


桜一家にて、綱川から百目鬼のことを聞かれた矢代の答え。

「俺は極道の中でも
道を更に曲がりまくってるような
ひん曲がった人間です。

アンタも聞いてはいるでしょう
だいたい事実なもんで

そんな男に従うこいつが不憫で捨てました」

(っておーい俺はいいんかーい)

7巻 第42話

思った。(笑)

ただ、七原は強い男だから大丈夫だと、きっと矢代は安心しているのだろう。

七原は「頭よくないキャラ」だが、そのわりに、周りの人達のことをとてもよくわかっている。

矢代のことはもちろん、竜崎の矢代に対する想いも、ちゃんと理解していそうだ。

人が好きなのかな?

屈折していないので、見ていて安心する。
こういう人に惚れたら、幸せになれそうだ。


すっかり変わってしまった百目鬼について、七原が杉本に心境をもらす。

「女のことも
社長への冷めきった感じも

ガッカリしたような
ほっとしたような
ビミョ──な気持ちになったのよ
俺は」

8巻 第47話

わかるー。

これからも矢代と百目鬼のことをよろしく頼みます。

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