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その労力、他に使い道があるだろう。

これは私が大学2年生の頃、結婚も視野に入れながら付き合っていた彼氏に完全に騙された話です。

その彼氏は私より4つ上の社会人2年目でした。

私がアルバイトをしていたバーによく一人で飲みに来ていて、話をするうちに仲良くなり、遊びに行ったりするうちに付き合うような流れになりました。

のんびりした優しい性格の人で、平日は仕事があるためあまり会えませんでしたが、休日になると家に呼んでくれて料理を振舞ってくれたり(しかもかなり上手い)、看護の実習で疲れている私にマッサージをしてくれたり。

付き合って1年がたつ頃には、「卒業して(私の)仕事が落ち着いたら結婚したい、子供は2人は欲しい」なんて話も出るようになって、私も本気になり、彼の家で半同棲生活をするようになっていました。

きちんとスーツを着てネクタイを締め、朝8時過ぎに家を出発し、夜は10時前に帰宅する彼。

「まだ偉くないから今の給料は35万くらいだけど、そのうちもっと稼げるようになって、専業主婦になってほしいな」と毎月25日に給与明細まで見せてくれる彼を、私は1ミリも疑うことはありませんでした。

彼の嘘に気付いたのは、ほんの偶然でした。

授業のない平日の昼過ぎ、彼氏の誕生日プレゼントを選びに街へ来ていた私は、ぶらぶらと散歩をしている時、たまたまパチンコ店の中に彼氏とそっくりな男性を見かけました。

いやいや他人の空似…、と言い聞かせながらよく観察しますが、やっぱりどう見ても彼氏。

今朝も普通に出勤したはずなのにどうして?昼休みに息抜きがてらパチンコ?と思いながら店内に入って後ろから肩を叩くと、振り向いた彼氏は大慌て。

「どういうこと?仕事じゃなかったの?」と問い詰めると、初めはなんだかんだ誤魔化そうとしていましたが、しまいには「ゴメン、俺の仕事、パチプロなんだ…」と白状しました。

私のことが好きと言う気持ちに嘘はなく、いつか言わなければ、結婚するためには収入が減ってもちゃんとした会社に就職しなければと思ってはいたそうなのですが、私がかなりギャンブルに批判的だったため、とても言い出せなかったとのこと。

内心、開店から良い台をゲットするため店に並び、閉店近くまで粘り、店の傾向や機種の研究なんかもして、私を安心させるために細やかな偽造工作までするガッツがあれば、普通の会社に勤めてもバリバリやっていけるよなぁ…と妙に感心しましたが、騙されていたということがショックで別れることに。

パチプロという以外は完璧な人だったので、部屋の荷物を片付ける時お互いワンワン泣きながら「よりによって何でパチプロなのよぉ~」「ごめんよぉ~」みたいな意味のない会話を何度も交わしました。

彼氏の嘘と同時に、一緒に住んでいながら見事に騙されていた自分にもビックリした経験でした。

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