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9隠者


彼は見るからに老人だ。暗闇にひっそりと隠れている雰囲気だ。公の場所にはいない。浮世離れした世界でひっそりと、ランプを当てて何かを探求している。

暗闇にこそ発見がある。しかし、誰もそんなところには近づこうともしない。彼は世間に認められるかどうかなどはどうでも良いのである。自分が探求したい道を突き進むのである。

その意味で彼は、老人でありながらパワフルでもある。内に秘めた情熱で何かを探求して解明しようとしている。よく見るとランプには鍵がついているようにも見える。

鍵は扉を開けるという意味があるが、その逆の意味もあることを忘れてはいけない。大切な知恵は扱い方を知らないものには危険な物となる。彼が探し求め、そして隠しているもの。それは、真のアルカナに違いない。

そうすると、彼が探し求めているものは、真のアルカナであると同時に、その知恵とアルカナを授ける後継者なのかもしれない。その相手は必ずやってくる。反対から言えば、知恵を授けてくれる先駆者は必ず待っている。

次のステージに行くためには、鍵が必要だ。彼はキーメーカーの役割を担う。2人が出逢う前に死ぬわけにはいかないのだ。暗闇の中にこそ真のアルカナは隠されている。だとすれば、自分自身の心の底にある暗闇に光を灯すことも必要かもしれない。

彼の足元には経験と知恵を表す本がこっそりと積みあがっている。2斎王との違いは本をもう手にしていないということである。きっと彼は、本という知識を体現する段階に来ている。

5法王は公の場所で霊的な教えを伝えるが、彼は違う。公では言えないような秘密を伝える使命が最後に残されている。だからこそ相手は選ばなければならない。大切なことは口伝で伝えられる。そもそもアルカナというコトバには、口伝という意味も含意されているのだから。

彼は過去の方向を見ている。歴史から学ぶ姿勢も持ち合わせている。この世の流れは、同じ象徴を繰り返しながら、円環的に進んでいることを彼は知っている。それは法則である。なるほど彼は、真実や法則を解明する役目もあるということは、その視線の先を見ればわかる。

自分の知恵や経験を理解し、秘密のアルカナを引き継ぐ相手は、実は若かりし頃の自分自身なのかもしれない。

そのことに気づいたとき。次のステージの鍵が実は掌の上にあることに気づくはずだ。


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