【競馬】ダート三冠レース創設のニュースについての解説と考察
みなさん!!!!!!!競馬はお好きですか!!!!!!地方競馬は!!!!!!お好きですか!!!!!!!!
11/28追記:続報が来たので大幅追記しました
本日、こんなニュースが飛び込んできました。
分かりやすく解説すると
・今まで「南関東三冠」とされてきたレースを全てJpnIにして中央馬にも解放、「ダート三冠」へ
・最後の一冠となるジャパンダートダービーはジャパンダートクラシックに名称を変更し、秋開催へ
・ダート三冠のトライアルレースとして、南関東の京浜盃、雲取賞、岩手の不来方賞がJpnIIに
・さきたま杯がJpnIに昇格
・ジャパンダートダービーの前哨戦として行われてきた兵庫チャンピオンシップを1400mのレースにして短距離王決定戦にする
・川崎記念、名古屋グランプリ含む複数レースの開催時期変更(一部開催地変更)
・短距離路線の大幅拡充
・Jpnグレードを2028年以降段階的に廃止、ゆくゆくは全ての交流重賞を国際グレードに
です。
これは革命です。
今まで光が当たらなかったダート路線に「三冠」が整備され、本格的に「地方主導のもと」ダート競馬が行われることになります。
馬産のあり方、育成のあり方すら揺るがしかねない大事件です。
それでは、競馬がどう変わるのか。
これまでを整理しながら解説します。
(※個人の主観も入ってるかと思いますがご理解をお願いします)
これまでのダート競馬
これまでのダート競馬は地方は地方、中央は中央で隔絶されていました。
例えば南関東の2歳中距離馬のローテーションなら
秋 ハイセイコー記念(SI)orJBC2歳優駿(JpnIII)
冬 全日本2歳優駿(JpnI)
3歳になって
冬 雲取賞(SIII)or京浜盃(SII)
春 羽田盃(SI)
春 東京ダービー(SI)
夏〜秋 ジャパンダートダービー(JpnI)or黒潮盃(SII)or戸塚記念(SI)
秋 東京記念(SI)orJBCクラシック(JpnI)
冬 勝島王冠(SII)or東京大賞典(GI)
と、中央馬と戦うこともできるし、ずっと逃げてられるローテを組むこともできました。
対して中央の2歳は
冬 JBC2歳優駿(JpnIII)or兵庫チャンピオンシップ(JpnII)
冬 全日本2歳優駿(JpnI)
3歳になって
春 なんもないor海外(サウジダービーorUAEダービー→ケンタッキーダービー)
夏 兵庫チャンピオンシップ(JpnII)orユニコーンS(GIII)→ジャパンダートダービー(JpnI)
秋〜冬 ここまで順調ならGI連戦、賞金稼げてないなら武蔵野S(GIII)orみやこS(GIII)→チャンピオンズカップ(GI)
と、こんな感じでした。
一見まともそうな感じに見えますが、3歳春にオープン勝っちゃった中央馬が出られるレースが0だったのが中央ダート競馬のつまらなさの原因の1つでした。
まして短距離馬なんて無理やり1600mのレースを使うか古馬になるまで休養させるかしかありませんでした。
これからのダート競馬
それが今回変わります。
https://www.keiba.go.jp/pdf/uploads/20221128_01.pdf
↑のリンクがこれからのダート競馬の競走体系です。
2、3歳馬のための重賞が増加し、これまで以上にレベルの高い全日本2歳優駿が見られるようになります。
京浜盃や雲取賞、ブルーバードCから始動できるため、中央馬は無理やり海外に出て惨敗という目に会わなくても良くなりました。
3歳三冠で経験も十分に積めるし、古馬になったらもっと馬が強くなってる可能性もあります(過去比)。
これまでのダート競馬の問題点は、3歳馬が地方古馬GIに出られないことでした。
ブリッツファングという馬を例に挙げてみましょう。
この馬は中央で1勝クラスを勝った後、地方GII兵庫CSに勝利し、初GIのJDDでも3着と好走しました。
そんな馬が、秋はGIIIから始動し調子を崩しました。
レースは収得賞金の多い馬から順に出走できます。
条件戦〜リステッドまでなら1着、重賞なら2着馬までが収得賞金を加算できます。
ですが、地方交流はJRAの出走枠がだいたい5〜7枠くらいしかありません。
GI出走上位の馬はだいたい収得賞金1億超なので、そういう馬が5頭くらいいるともう詰みです。
GII(JpnII)勝ってたって言っても、肝心のJpnIIの賞金額がGIIIより低いので余裕はないのです。
GIIなら出られますが、そこで2着以内に入らないと今後に響く。なので、3歳春にJpnIIを勝っていても秋はGIII(JpnIII)で着実に賞金を稼ぐしかないのです。
そのためにシリウスS、白山大賞典、浦和記念、名古屋グランプリっていう中距離裏街道が用意されてたんですが、どう考えても歪です。
だって、兵庫CSは芝でいう青葉賞。2020年の青葉賞勝ち馬オーソリティは年末に有馬記念出てたのに、なんですかこの差は。
ようやくこの歪さが解消されそうなのが今後のダート界。
京浜盃や雲取賞のほか、ブルーバードC、羽田盃、東京ダービー、そして秋の不来方賞、JDCで連対するだけで収得賞金が増えるので、レース選択の幅が広がります。
東京ダービーは1着1億円。てことは5000万の収得賞金が入りますし、それまでに何かしらで稼いでたら7000万くらいにはなってるはず。ダービー勝てたらJDC回避してぶっつけJBCすら可能なのです。
馬をつくる側からしてもこれはありがたいはず。
もちろん裏街道もそのままで、3歳GIにギリ間に合わなかった馬が目指す先として、名古屋大賞典(2000m)という残念東京大賞典が12月に開催されることになりました。
川崎記念が4月開催になるため、ここで勝てた馬もゆっくり休んでから本番に臨めそうですね。
また、ダイオライト記念が川崎記念のステップレースに、名古屋グランプリ(2100m)が帝王賞のステップレースになるため、ここから来た馬が番狂わせを演じる可能性も考えられます。
どちらも距離短縮ローテなので面白そうですね。
牝馬路線はますますエンプレス杯の立ち位置が重要になりました。定量戦になったため、今後の行方次第では国際GI化も有り得ます。
マリーンカップは3歳牝馬限定の秋開催になったため、秋華賞的な立ち位置になりました。
関東オークス→ブリーダーズゴールドカップ→マリーンカップ→JBCレディスが今後の強い3歳馬の王道ローテになりそう。
唯一ちょっと嫌なのがTCK女王盃が兵庫女王盃になるところ。
もちろんエンプレス杯のステップレースとしては重要な立ち位置なんですが、園田の1870mは大外の12番枠が欠陥とすら思えるくらいに滑るため、出遅れの可能性が極めて高い上、コーナーまでの距離もそんなに長くないため苦戦を強いられます。
開催するなら暗黙のルールで毎年10頭前後になってくれると嬉しい。
短距離馬も兵庫チャンピオンシップ(1400m)という目標が見えるため、それに向けてレース構築をしていくことが可能になりますし、そこで勝てた馬はJpnIさきたま杯で古馬と戦うことも可能ですし、休養して南部杯とJBC連戦も視野に入ります。
間に合わなかった馬も3歳限定戦になった北海道スプリントCからJBCスプリントを目指せます。
長期的視野で考えると、兵庫チャンピオンシップ勝ち馬からJBCスプリントを制す馬、ドバイゴールデンシャヒーンに挑戦する馬が出てきたりするはず。
日本馬が目指す短距離GIは、JBCスプリント、さきたま杯、ドバイゴールデンシャヒーンの三本柱になりそうですね。
先ほどの中距離路線といい、確実にダート競馬の流れが変わります。
東京や中京より大井のコースの方が海外のダートの質感に近いため、地方レースにだけ出続けた中央馬が海外に挑むことも可能になるだろうし、より海外が近くなるんじゃないかと考えています。とくにブリーダーズカップ。
また、JRA認定の高額競走、ネクストスター競走が大々的に開催されるため、強い短距離馬が地方から続々誕生しそうな予感です。
いずれは兵庫チャンピオンシップもGIになりそう。
大改革の弊害と理由の考察
ただし、この改革には微妙な顔をしている地方ファンも多いです。理由を解説します。
羽田盃、東京ダービー、東京王冠賞。
この三冠は大井の三冠でした。
イナリワンとかが現役の時代からこうです。
それがジャパンダートダービーが創設されて東京王冠賞が廃止になり、この度羽田盃、東京ダービーも中央馬に解放されます。
南関東の馬が目指す三冠はどこにあるんだ…
というのが南関東ファンの悲しみです。
中距離ダートだと中央馬が無双しまくってます。羽田盃、東京ダービーまで中央馬に解放されてしまうと、本格的に南関東馬が勝てなくなってしまう。
ごもっともな意見です。
しかし、日本のダート馬を強くするにあたって、「こうするしかなかった」のだと思います。
JRAはダート重賞の拡充に消極的でした。
なぜかというと、「重賞を増やすと地方競馬のパイを奪うから」。
やろうと思えばJRAはダートレースをこれでもかと増やしまくって、JRA内だけでダート路線を完結させることは容易です。
しかし、そうすると地方競馬が終わります。
2000年代前半、多くの地方競馬場が経営不振で消滅しました。そういうのを見ているからこそ、ここまでJRAはダートの番組をほとんど変えず保ってきました。
しかし、時はウマ娘ブームの世。
今や赤字経営の地方競馬場は日本にありません。マジです。
笠松がちょっとヤバいことになりましたが、ウマ娘コラボを擦れば無限に収益が取れてしまうことは先日明らかになりましたし、他場もネット馬券が好調で、大井に至ってはここ数年で東京大賞典の1着賞金を4000万上げてます。
でも、この空前の競馬ブームもいつ終わるかわかりませんよね。
加えてJRAは「年間の開催日が法令で決まっている」。
何かのレースを増やせば何かを削らなければいけないところまで来ているのです。
つまりダート路線拡充のためには古馬の条件戦を削ったりとか、障害レースを削らなきゃいけない仕様に現状ではなっているのです。
もしかしたらこれが1番大きいかもしれないですね。
なんとかしてよ農林水産省さん…
さらに、
・大井競馬が世界初の両回りコースを導入したり、先進的な企画を押し進めていること
・パート1国だからJRA側がみだりにGIレースを増やすことが出来なくなっていること
・地方からダート競馬を発信していくことで双方にとってwin-winの関係にすること
様々な思惑が重なり「大井での三冠レースを」ということになったのだと思います。
最悪の場合、地方馬限定の南関東三冠を新たに創設しちゃえばいいですしね。やってみなきゃわからないです。
これからの地方競馬はどうなるか
これを機に地方競馬が大きく変わるのは明らかです。馬の流れが変わります。
※これから書く内容はあくまで僕の仮説です。
冗談程度に受け取ってください。
大井で三冠レースが行われるということは、栗東トレセンに馬を預けてもそこまでメリットがありません。
だって三冠全部輸送させなきゃいけないし。
美浦もなんやなんや遠いです。
加えて、先程の記事にはこう書かれていました。
だから、これからのスタンダードは「ノーザンファーム生産南関東所属クラブ馬」なんじゃないでしょうか。
南関東を拠点にして、ノーザンファーム天栄で外厩調整させ、南関東のレースに出続ける。南関東のレベルだけが格段に上がります。
一言で表すなら、「南関東の中央化」。
または、外厩調整できる地方馬。
船橋や園田に入厩し、チャンピオンヒルズのような高品質な外厩で調整してからレースへ、という流れもありそう。これが一番メジャーになるかもしれないですね。
現状だと日本テレビ盃勝ち馬フィールドセンスがまさにチャンピオンヒルズで調整しています。
確かに、前者ばかりになってしまうと、南関東を応援してた人にはちょっと悲しい結末になりそう。キャロットファームの勝負服で溢れ返る南関。
でも、交流重賞で勝つ馬がほぼ全て南関東馬になって、南関東の馬がブリーダーズカップやドバイで活躍すると考えれば…どうでしょうか…
こうなった場合でも、生え抜きの地方産南関東馬にも輝けるレースはまだまだあります。
例えば、盛岡の「ダービーグランプリ」。
これは地方馬限定のレースで、日本各地の地方馬が1着をかけて争います。ここ数年で賞金も倍増してます。
JpnI勝った馬はわざわざこんなレースに出ないでしょうし、ここが本当の地方ダービーになりそうですね。
ノーザンファームに負けじと高品質な地方外厩も続々生まれるでしょうし、今までの水準なら南関東で走れていた馬でも、急激なレベル向上により他場に移籍する可能性は大いにあります。
例えば今まで門別競馬場デビュー→南関東移籍→無双
というローテができてた馬でも、能力が高水準で拮抗している未来の南関東ではやられてしまう可能性もあります。
そうなったら逃げる先は兵庫です。
南関東の次に賞金が高いのが兵庫ですからね。
兵庫競馬もイグナイターやジンギ、コウエイアンカが交流重賞で中央馬とまともに戦ってるあたり相当レベルが高いですが、門別からの移籍馬が増えれば平均レベルが大きく向上します。
兵庫だけじゃなく地方各地でこの傾向が見られるんじゃないでしょうか。あくまで個人の妄想ですが。
現状、多くの地方競馬で「八百長」と呼ばれているプレイは、実は騎手が下手だったり、調教がなってなかったりするケースも多いです。
ですが、各地に能力の高い馬が分散されれば自然と騎手の腕も磨かれていって、少なくとも今よりはマシになるんじゃないでしょうか。
現に強い2歳馬を御すことが多い門別の騎手は上手い人ばっかりです。八百長がどうこうとか騒がれてるのも聞いたことがありません。
大井からそういう好循環が生まれていってほしいです。
また、全てのダートグレード競走を段階的に国際競走化させていくことも決定したため、日本のダート馬の地位は格段に上がります。
芝とダートのGIレースを両方開催している国すら少ないのに、馬産の基盤が整っており、海外馬にも対抗出来る戦力と技術がある現状。
ここからさらにダートが強くなれば、日本は最高の競馬大国だと胸を張って言えるでしょう。
ただし、気になるのがサウジカップと開催時期が被ってるフェブラリーS、ドバイワールドカップと近くなる川崎記念。
いつもGIとは言えないくらいレースレートが低いこの2レース。GIIに降格してしまったら元も子もないので、今後爆発的に賞金が増える可能性がありますね。
さすがに1着賞金が2億近くになったらレートも崩れないでしょう。
これは他のレースも同様で、地方のダートグレード競走は今後JRA水準まで賞金を上げてくるはずです。
国際競走化のためにはそれが最低条件。
また、今回の改編に関わった南関東4場と門別、盛岡、園田、名古屋の計8場を中心に、大規模な工事が行われる可能性が高いです。
国際競走と認められるには、その場に「国際厩舎」と呼ばれる、外国馬が滞在できる厩舎が無いといけません。
現在、これを有している地方競馬場は大井と川崎のみ。2028年までに、その他の6場はそこ周りの工事があるはずです。施設も新しくなるはず。
今挙げた競馬場はみんな黒字も黒字なので、問題なく次のステージに進めるはずです。
その他の競馬場は、新技術を次々導入している高知を除いて置いていかれそうな気もします。頑張れ佐賀…金沢…。
これからの地方競馬場の動向に注目です。
追記:三冠路線のコース設定について
今回設定される三冠路線の
羽田盃、東京ダービー、ジャパンダートクラシック
は、それぞれ大井1800m、大井2000m、大井2000mで行われます。
めちゃくちゃ条件が似通ってます。
ですが、大井競馬場には右回りと左回りがあります。
世界初の両回り開催が可能となった大井。
昨年から試験的にフルゲート12頭で実施されている左回り1650mのレース。
その当時の記事を読んでみると…
つまりこれは…
ジャパンダートクラシックは左回りで開催される可能性が高いということです!!!!!!!
ジャパンダートクラシック、JDC。
わざわざこんな名前にしたのは、このレースを国際GIにして海外馬を招待したいのではないでしょうか。
世界的にはダートは左回りがスタンダード。
特にドバイのダートで馬を走らせる事が多いクールモアにしてみると、この条件は魅力的でしょう。
逆に言うと、左回り大井で日本馬が活躍することができれば、海外ダートG1制覇も夢ではありません。
JDCからブリーダーズカップやドバイワールドカップ勝ち馬が出てくれたら、地方競馬の地位も大きく上がりますね。
まとめ
以上が今回の一件についての予想と思ったことです。
とにかく、色んな改革が行われるのが僕としてはとても嬉しいです。
地方馬が中央馬に勝つのは嬉しいですが、日本の馬が海外で勝つのはもっと嬉しいですからね。そこに向けて頑張ってもらいたいと思います。
それではまた。
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