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【競馬】日本の馬はどうして勝てないの?よくわかる凱旋門賞と海外競馬

みなさん、競馬見てますか?


多少競馬をかじった人なら、今年の凱旋門賞が熱い!という話は聞いた事あると思います。


タイトルホルダーディープボンドステイフーリッシュドウデュースの日本馬4頭に加え、海外馬も錚々たるメンツが揃っています。


しかし。タイトルやドウデュースが凱旋門賞に勝てるのか?という話になると、途端にみんな表情を曇らせます。
これにはちゃんと理由があって…


日本馬の凱旋門賞挑戦がメジャーになって二十余年。
先駆者エルコンドルパサー含め25頭が凱旋門賞に挑み、一回も勝てていないのです。


それどころか、凱旋門賞はヨーロッパ以外の馬が勝てた事がないのです。

それは何故なのか。


簡単に言うと凱旋門賞はうどん、ジャパンカップはラーメンだからです。

これだけじゃ訳分からんと思うので詳しく解説します。

凱旋門賞とは

凱旋門賞とは、世界のホースマンの誰もが勝利を目指す憧れのレース。
ダービーとはまた異なった輝きを放つ、伝説のレースです。


そもそも凱旋門賞は世界の最強馬が集まる、全世界版有馬記念みたいなスーパーレースなので、騎乗、出走出来た時点で強いし、1勝できたら人生の誇り。

4勝(3連覇)したゼンノロブロイの鞍上としてもおなじみオリビエ・ペリエ騎手は神のような存在になってますし、日本の競馬民には「髪の毛以外の全てを手に入れた男」とネタにされてます。(また髪の話してる…)


じゃあ凱旋門賞の何が特別なのか。
仕様を見ていきましょう。


凱旋門賞
Prix de l'Arc de Triomphe

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開催地
🇫🇷ロンシャン競馬場(パリ)

コース
芝2400m右回り

賞金
1着 約3億8500万円
総額 約6億7500万円

斤量(ハンデ)
牡馬59.5kg 牝馬58kg
3歳牡馬56.5kg 3歳牝馬55kg

馬場 洋芝

狂ってんすよ、コースが。
そりゃぶっつけで勝てないのも納得できます。


中山競馬場を遥かに凌ぐトリッキーなコース。
クソ長直線からクソ長コーナーを抜けた先が最後の直線かと思いきやもう1回右に曲がる。
ぶっつけ本番だと戸惑う馬もいるかもしれません。


で、斤量(要するに馬が背負う重量)も重要です。
日本のレースでは負担重量が58kg(牝馬は56kg)を超える定量戦はありません。

対して凱旋門賞は牝馬で58kg、牡馬で59.5kgと、かなり酷な斤量を背負わされます。(海外はポンド計算だから小数点付きがち)


日本馬が僅差で負けた凱旋門賞(エルコンドルパサー、ディープインパクト、ナカヤマフェスタ、オルフェーヴル)は、全て斤量が軽い馬、要するに年下か牝馬に差されて負けています。

海外は三冠路線の概念が薄いか凱旋門より前に終わるので、3歳で凱旋門挑める上に勝っちゃうんですよね。

だから度々「日本馬は菊花賞回避して凱旋門賞行け」と言われるけど、行ったら行ったで負けると思います。

敗北の最も大きな理由が他にあるからです。


洋芝と野芝

芝の違い。これめちゃくちゃ大きいです。

日本の競馬場のほとんどは野芝と言われる柔らかい芝、札幌や函館、そして海外はだいたい洋芝が使われています。


ウマ娘では芝/ダートの区別しかない馬場適正ですが、現実は東京と阪神でもそこそこ違うし、札幌はもっと違います。

個人の主観ですけど

東京≦中山、京都、中京<阪神≦アメリカ、オーストラリア≦札幌、🇦🇪メイダン、🇭🇰沙田<(ヨーロッパ全般)<<<🇫🇷ロンシャン


芝の重さ順で並べるとこんな感じ(主観マシマシ)
東京とロンシャンは別物なんです。
というか、ヨーロッパ競馬が浮いてます。


日本の競馬が「人工的に整地された芝生」の上で開催されるのに対し、ヨーロッパは「自然の芝生の中に競馬場を作った」のでこのような差が生まれちゃってるんですよね。

同じ洋芝なので、芝の固さは札幌とロンシャンでそんなに変わらないと思われます。
ですが、一番大きいのは

人工的に整地した馬場は反発性が高く、自然の馬場は脚が沈み込む

という所にあります。後述しますがディープインパクトに似た走り方をする馬はこういう馬場だと大失速します。
また、起伏(坂)があるため、そこでスタミナを削られます。


日本馬が凱旋門賞に勝てないから弱いんじゃないんです。凱旋門賞馬もジャパンカップでは絶対勝てないんですから。




噛み砕いて、競馬を早食い選手権として見てみましょう

東京競馬場ラーメンを日々ズルズルと啜っている日本馬さん。
ラーメンなら多少ハリガネ寄りでもいけるように訓練されてます。


結構な大会で勝てたので、海外に挑もうと札幌記念ラーメンや宝塚記念ラーメンを軽々と啜り、ヨーロッパへ旅立ちます。

日本馬の中で一番いい感じの成績を残したオルフェさんの走りを見てみましょう。

なんかめっちゃヨレてますね。大失速してますね。
そうです。これが「勝てたレースを落とした」と散々言われている伝説の凱旋門賞。


正直なところオルフェは特例です。イレギュラーです。例年の日本馬の走りを見てみましょう。

毎年だいたいこうなります。
日本競馬では直線長いコースなら後ろからかっ飛ばせば勝ちですが、欧州の芝でそれは不可能です。
瞬発力だけで勝てるコース/馬場ではないからです。
坂めっちゃある、直線長すぎる、レース展開が基本超スローだから後ろからは絶対届かない。

ラーメンの啜り方しか知らなかったやつが、ほぼ初見でうどんの早食いができる訳ないんですよ。

同じ汁物の麺類なだけで、最速で完食を求めるなら必要なスキルは全く違ってきます。

そういうことなんです。
凱旋門賞とジャパンカップの違いは。



前哨戦のフォワ賞を勝った重馬場大得意のオルフェでこれなんだから、並の馬や前哨戦使ってない馬ならなおさら脚を取られるんですよね。
(オルフェが馬場のせいで負けたとは思えないですけど、ここではそういうことにさせてください)


証拠として、日本馬と欧州馬だと走りのフォームが違います。
ポイントは「首の高さ」と「脚の回転」。

これは日本馬代表ゴールドシップ。
優雅に走ってるのがお分かりいただけるでしょうか。


対して欧州で走ってる馬、スノーフォールさんです。

脚の回転数も首の高さも、全然違うでしょ?

日本だと一部の差し追い込み馬だけがものすごい脚で追い上げてくるイメージですが、海外ではみんなこの走り方です。
ゴルシみたいに首を高くして走ってると100%負けます。


欧州の馬場は日本の比じゃないくらい荒れやすく、芝も自然の状態に近く、均等に生え揃っているわけではないし、結構脚が沈み込むし、起伏もあります。つまり下向いてないと詰むんですよね。

そしてそれだけボコボコだと大きなストライドで駆けた時、着地点が荒れててバランスが少しでも崩れたら失速して終わります。
なので小さなストライドで回転数を早くする「ピッチ走法」が普通です。

対してゴールドシップは「大跳び」。首も高いです。
日本のような整地されていてスピードの出る馬場だとプラスですが、ヨーロッパだとそれが弱点になります。



日本馬はゴルシまではいかずとも走ってる時でも首が高く、脚のストライドは大きめな馬が多いです。

これの代表例がディープインパクトとその子供たち。

凱旋門に挑んだ馬だと
ディープインパクト
キズナ
マカヒキ
サトノダイヤモンド
フィエールマンがこれに該当します。


そして2022年。ディープ産駒シャフリヤールはプリンスオブウェールズSの最後の坂で大失速しました。

ディープ系の走り方はみんな「後脚で地面を蹴り、前脚でその加速を補助する」ような走り方をします。
が、欧州はその走り方ではスピードが出ません。蹴っても反発しないから加速できません。そこが主な敗因です。


ディープ系の凱旋門賞を振り返ってみましょう。

ディープはストライドは大きいながら脚の回転数を上げて直線で伸びましたが、健康面があまり強くなく、万全の状態で挑めなかったために3着に。重馬場得意じゃないはずなのに能力の高さで押し切って3着に入ったのは凄い。

マカヒキもディープ産駒特有の連戦苦手属性が祟り、ニエル賞1着→凱旋門賞14着と惨敗。調整も失敗しました。

サトノダイヤモンドは馬場が合わず惨敗。凱旋門賞以降全く走らなくなりました。

フィエールマンも一戦一戦の消耗が激しく、凱旋門賞も馬場が合わずで先頭から48馬身離され惨敗。


しかしキズナだけは母の血統がやや欧州寄りだったからか、ニエル賞1着、凱旋門賞4着と大善戦。
翌年の天皇賞(春)の後に骨折し、以降も色々あって活躍出来なかったものの希望を残しました。

その重馬場適正は子供にも受け継がれており、これからも産駒に期待したいところ。


凱旋門賞を勝てる馬

それじゃあどんな馬が凱旋門賞で勝てるのか。
個人の主観ですが、必要なポイントは以下に絞られると思ってます。


①欧州または重馬場で活躍した馬の血を濃く引いていること(特に母方)

②連戦を耐え抜く強さ、またはぶっつけ本番で結果を残せる順応性

③体質の強さ

④重馬場で戦える力(数馬身離せるくらいが好ましい)

⑤先行で強い馬、または差しでめちゃくちゃ強い馬

⑥並外れた持久力を持つ馬(2500〜3000を走れるポテンシャルがある馬)

⑦運


この7つです。

サドラーズウェルズ、ガリレオといったハードな馬場に強い馬の血が色濃く配合されている欧州馬に対抗するには、ステイゴールドやキズナといった重馬場に強い馬の血を引いてないと勝負にすらなりません。
そして母方に欧州馬の血が入ってようやく善戦できます。

それに加え、それだけハードな馬場だと最後に加速しても脚を取られて届かない場合が多いです。
もちろん日本のレースよりスタミナが必要ですし、前に付けて強い馬か重馬場で差せる馬で、心肺機能が超高い馬じゃないと勝てないでしょう。


でも結局最後は運です。
騎手の仕掛け方、敵の強さ、枠順、体調、全て揃ってないと勝てないです。
エルコンドルパサーとオルフェーヴルは運が足りずに負けました。オルフェは特に。


2022凱旋門賞

そんなわけで、日本馬は例年苦戦を強いられている凱旋門賞。

じゃあ今年はどうなのか。

枠順はこちら。

バーイード、ハリケーンレーン、アダイヤーと、日本勢の脅威となる馬が多数回避したためラッキーではあるものの、強敵は他にも盛りだくさん。


それなりに雨が降るので良馬場では無いことは確か。
もう逆に21年の不良馬場まではいかなくても、ルクセンブルクみたいな馬の末脚が活きない程度に雨が降ってくれることを祈ります。日本馬のスタミナに期待するのみ。


予想

※めちゃくちゃ現実的な話をします。
苦手な方はブラウザバックをお願いします。


凱旋門賞における日本馬の好走の基準は「2桁着順にならないこと」だと思っています。

かなりハードル低いですが凱旋門賞は異種格闘技。
本気で勝つならバケモンみたいに強い馬か、年度代表馬クラスを最低半年間欧州遠征させて慣れさせなければ話になりません。
ずっと負けるべくして負けてます。

ですが、今年は上の基準でいう好走が出来そうな馬ばかりです。解説していきましょう。


まずはディープボンド。

これはディープボンドの21年フォワ賞。
ここで逃げ切って疲れからか体調を崩し、本番で大敗しました。
今年は凱旋門賞直行。正しいかは別として、来年も現役続行するならこれ以上無い選択だと思うし、昨年のフォワ賞の時の馬場なら善戦できても驚きません。

しかも今年は日本の馬の中で最も調教で動いてます。めっちゃ調子が良い。
意地で掲示板内に食いこんでほしいなあ…




ステイフーリッシュは長期遠征させれば欧州GI勝てそうですよね。

初欧州でこの安定感。勝てておかしくないメンツでしたが前走が日本とほぼ変わらんドバイの馬場ですからね。そう考えたらやっぱり適応力はあります。
ただ、普通の欧州の競馬場とロンシャン(凱旋門賞)でまた違ってくるんですよね。ロンシャンはよりハードです。そこにどう対応できるか。

そして厳しい事を言うと、前走GII2着、GI未勝利の馬がそう簡単に凱旋門賞を勝てるのか。

矢作調教師もこれからの凱旋門賞制覇に向けた試金石としてステフを投入してそうな感じがします。枠順は大外で絶望的ですが、なんとか頑張って欲しいですね。



「勝つ」という一点に関してなら、タイトルホルダーに望みを託すしかないと僕は思っています。

自分でペースを作れて、ハイペースも追走できる圧倒的なスタミナがあって、末脚もそこそこ使える。

そして母方の血が欧州の馬のそれ。エルコンドルパサーを負かしたモンジューやイギリスダービー馬シャーリーハイツの血が入っています。


そして、凱旋門賞に挑むにあたってこの馬を信頼できるポイントは、「日本ダービーでボロ負けしていること」です。


お前何言ってんの?とお思いかもしれませんが、先程も書きました通り、ジャパンカップ(東京2400m)と凱旋門賞(ロンシャン2400m)は真逆の強さが求められます。 もちろんジャパンカップとダービーはコースが同じなので、そういうことです。


整備された馬場の直線で弾ける瞬発力⇔起伏の激しい馬場を粘り切る持続力。

タイトルホルダーは間違いなく後者です。

直線の長い競馬場で勝てていないのが心配ですが、騎手が追い出しのタイミングを我慢できればきっと勝てると思います。この馬は本物です。


対してもう一頭の本物、今年のダービー馬は…

日本ダービーをレコード勝ちしてしまった馬としては当然の結果だと僕は思っています。
ドウデュースでさえためらうほどのスローペース。それに付き合わされ、初めての馬場に戸惑い走り方まで変わっている。うまく手前を替えられず最後に失速。


今から、日本馬を応援する者として最低な事を書きます。許してください。



僕はドウデュースが勝つかどうかより、大敗して帰ってきて、日本でもこの2戦のダメージを引きずって昔のような走りが出来なくなってしまう可能性を憂いていました。


ドウデュースは明らかに調整に失敗していました。
めちゃくちゃ飼葉を食べますし、今までプール泳がせて減らしてたのが遠征はプール使えないので太る一方。
2週前段階では帯同馬のマイラプソディ(絶好調)に追い切りで抜かされかけるくらいには絶望的状況でした。

ディープボンドが勝てる可能性を仮に100だとすると、ドウデュースは1くらいじゃないかと、そう思ってしまっていました。


ですが、ここ数日で急激に調子が上向きました。
2週前とは完全に別の馬になり、ようやく臨戦態勢へ入りました。
あの絶望的な状況から立て直す友道さんやっぱすげえや。


前提として、ドウデュースは凱旋門賞に挑むような馬ではないです。
ダービー勝てる馬は凱旋門賞を勝てる馬と正反対。
そう何度も書きました。

しかし、風は吹いています。
当日は内枠の方が圧倒的に芝の状態のいい所を走れるのですが、ドウデュースは3番ゲート。

そして隣の2番ゲートのヴァデニの騎手がスミヨンだったんですが、レース中に肘打ちして他馬の騎手を落とすという外道プレーをしたため乗り替わり。トップジョッキーにあるまじき行為です。
ヴァデニはスミヨンしか乗ったことがないため、乗り替わりの騎手は手間取ると思います。ドウデュースが普段通りスタートを決めれば、内ラチスレスレを回れる可能性も出てきました。


そして一縷の望みは、ドウデュースの走法。
ディープ産駒は空を飛ぶような軽快な大跳びですが、ドウデュースはハーツクライ産駒。地を這うようなピッチ走法。走り方だけでいえば欧州でも通用します。

展開さえ向けば、調整さえ上手く行っているならワンチャンあってもいいんじゃないでしょうか。




とはいえ、現実的な話をするなら今年の本命はアルピニスタです。

何がいいって馬場の重いドイツで2400mGIを勝ち、フランスでは斤量61kgを背負って勝っていること。時計のかかる展開にも慣れてる。凱旋門賞を勝つために走ってるような馬です。
この馬が大敗したらショックで寝込みます。


ということで、僕の予想は

◎アルピニスタ
○オネスト
▲メンドシノ
△トルカータータッソ、タイトルホルダー
☆ウエストオーバー、ルクセンブルク、ヴァデニ


こんな感じです。
ヴァデニは色々あって宗教上の理由で買わない予定でしたが、騎手が乗り替わりなので評価しました。
日本馬が会心の走りを見せてくれることを期待してます。


あとがき

22年の凱旋門賞があと数日となったので、旬が過ぎたネットミームを削除して加筆修正しました。
今年こそ頼むぞマジで。


ちなみに、凱旋門賞2着馬ナカヤマフェスタが活躍してる様子はぜひ競馬史シリーズをご覧下さい(次回オルフェーヴル登場予定)

タイトルホルダーに日本馬初の凱旋門賞制覇の夢を乗せて…

それではまた次回!!

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