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カーテンコールはない!【春を抱いていた最終章】

◾︎はじめに
本編のネタバレを含みます。
読了後の思いだけで書いています。
作品に対しての感想だけでなく、
書いてる本人に関する記載(自論的な事)もあったりするので、
諸々含めて大丈夫な方はお進みください。

以下『春を抱いていた』感想、とか。

先程、しぶりにしぶっていたというか、
我慢との闘いにケリをつけ『春を抱いていた』
最終章を全て読了しました。
読了後、シンプルに「寂しい」という気持ちに襲われました。
ページをいくら捲ったって、
先頭ページから読み直したって、
続きがある訳でもなく、結末が変わるわけでもなく。
長きに渡って掲載された『春を抱いていた』が終わりを遂げた「寂しさ」と、
香藤の死という「寂しさ」がゴンゴン頭を殴ってきました。もはや「苦しい」。

もう緞帳は降りているんです。
でもその重い緞帳をこじ開けたくなるような思いでいっぱい。
緞帳をこじ開けたって舞台上にあるのはきっと桜の木と岩城さんだけで、舞台袖に洋介が居るような感覚。
しかもカーテンコールが無いパターンの芝居。
観客は観るしか出来ない、取り残された様な感覚。
取り残された人の時間は進み続けます。
いつまでも客席に座っているわけにはいきません。
だから、どうしたらいいのか分からない!
再演を願ったって結末は変わらないし、どんな素敵な芝居を見たって現実が待ってるし、今そんなかんじ。
芝居が終わって、緞帳が空いて、カーテンコールで出演者が挨拶をしてくれる訳でもないから、いつまでたっても現実世界と物語との切り替えが出来ない!
まじ、客席ぼっち。

私はハッピーエンドが当たり前だと思ってこれまで生きてきたのかもしれない。

今回、『春を抱いていた』(以下『春抱き』)が最終章へ突入、クライマックス、エンディングということで、きっとハッピーエンドで幕が終わると信じきって意気揚々と先陣をきって終幕を読んだファンの方々の感想を読んだ。
「読んでしまった」と思った頃にはもう遅い。
ネタバレを考慮されてか詳細を書いてない方が多くいて、「なんや、不穏やな、」で、留まっておけば良いものの、自分の性格上、気になったら気が済むまでの質なので、そりゃまあ検索かけまくった訳で、
直面したネタバレ
「まじかーーーーーーーーーーーーー」
我ながらシンプルな感想。

それでも、自分の目で確かめるまでは信じない系な性格なので、単行本発売まで大人しくしてようとその時は決めた...のだが。
ここからは我慢との闘いの日々。
とりあえず、まだ全貌が読めないのなら既出作品をこの際読み返そう!
ネタバレを踏んだ直後、新田先生やアシスタントのあだちさんのtwでこの結末を既に4巻で決めていたというのを知ったのもあり、久しぶりに1巻から読み直す事にしました。

『春抱き』1巻の初版が1999年4月10日。
当時私は9歳。勿論、BLのBの字も知らないし、
なんなら漫画にすら手をつけてなかったかも知れない。
そんな私が『春抱き』に出会ったのは成人を迎えてしばらくしてからだった。
そこに至るまで立派な?完全に腐女子と化し、
『春抱き』の存在も知っていたが、
その時は「新しいBL」「次世代BL」(勝手に自分でカテゴライズしてた)と言えばいいのか?にハマっていて、何となく絵のタッチから勝手に古めかしい印象を受け取って手をつけていなかったのが正直なところ...
今でも勿論あるが、私が中学.高校の時に読んでいたBLって今読むと古典芸能チックっというか、決まった型がある気がしていて、基本ハッピーエンドor元祖BL*にあるバットエンド(←耽美系って誤魔化して結末を受け入れてた)。
*『風と木の詩』とか『間の楔』とか

多感な時期に読んでいたBLはそりゃまあハッピーエンドでいちゃいちゃでラブラブで、えっちでみたいな感じで、それが私が大学進学以降位からかリアリティが加わった作品が増えできた気がしてて、そういった作品を読んだ時に凄くほっとしたのがあったんだよな。
中高時代に読んでた作品はそりゃハッピーエンドで最高だったんだけど、この子達は将来どうなるんだろ?とか周りの人との関係はどうなってんのか考えてしまうことが多くて、その時だけの幸せ感があって、なんか不安が付きまとってたんだけど、その後の作品では現代に生きる人として描かれてて、将来のことは勿論、周りの人間関係もしっかり描かれている作品が増えてて、なんか凄く安心したんだよな。
だから、昔の作品に触れるよりも今の作品に触れた方が自分が満足出来ると思って手をつけないでいた。
そんな私が何故、『春抱き』に出会ったのかというと。


2008年ー2015年
色々手を出して来た時期だったけど、
特に、2015年は自分の中でBLマニアと化していて、世の中に出ている本、全部読みたい!!!
位の事を本気で思っていた頃...
溝口彰子先生が執筆された、
『BL進化論 ボーイズラブが社会を動かす』
が出版された。
著作の中に『春抱き』の記事があったのは勿論だったが、手に取る決定打となったのが、著作記念で開催された溝口先生と作家の三浦しをん先生の対談イベントだった。
著作に関するトークは勿論、お二人の萌え語りが聞ける貴重で楽しいイベントだったのだが、いつくかあった興味深いお話しの中で、お二人が『春抱き』についてお話されている時、凄く幸せそうで、楽しそうで、
「こりゃ読まなきゃ!」と思ったのが確かきっかけだったはず。
その後試し読みを読んで、その先が気になってしょうがなくなって、気がついたら全巻購入して、届いたその日には涙を流しながら14巻まで読み上げた。
「最高以外に何がある??!」
当時自称BLマニアを謳っていた私は、初版所持というこだわりもあり、古本屋を駆け巡って出来るだけ初版、ビブロス発行の物を探しに探した覚えがある。

「食わず嫌いはほんとに良くない!」
ALIVE前の『春抱き』無印を読了し、完全に魅了された私だった。
とんでもない出会いから好き者同士になった2人。
そして、芸能人としての2人。
2人の家族。
しっかり描かれているじゃないか!
そして、子供(子孫)の存在。ここがすごく大きい。
こんなにエンターテインメントでラブファンタジーはBLというジャンルでしか読めないと思う。
ほんと、好き。
そんなこんなで、今の今まで単行本が出るのが楽しみな作品になった。
あーほんと、好き。
素敵な作品に出会わせてくれた、溝口先生と三浦先生、そして当時の自分の貪欲さに感謝。
そうして、私と『春抱き』は出会ったのだった。

だいぶ脱線気味になったので少し元に戻す。
岩城さんと香藤の前世編といわれる
『冬の蝉』。
単行本で前世編(番外編)として収録され、後に「ダブル・キャスト」で劇中劇として描かれている。

『冬の蝉』は秋月(岩城)と草加(香藤)の死でラストを迎える。
これが2人の前世の物語ならめちゃくちゃ悲しい結末...。
でも、これを本編で劇中劇にすることで『冬の蝉』がフィクションに近いものになり、2人の死はリアルから遠のき、フィクションとリアルがハッキリとした気がしていた。
「2人は死なない」
また、4巻「インサイド・レポート」にて、
岩城さん主演ドラマの作中でゲスト出演した香藤の役が死ぬシーンが描かれているが、これも劇中劇内での死なので、「フィクション」。
死から遠い存在に香藤と岩城さんが居るように私は感じてしまっていた。
 
最終回までに描かれた死が「フィクション」だったから、最終話での香藤の死がまじでノンフィクションを叩きつけられた感じがして。
ほんと、やられてる...。

最終話までの4話がさ、ほんとホッコリしたからさ、しかもサクサク読んじゃって気づいたら「トコハル・後編」

ほんと、読み進めるのが怖かった。
結末を知ってしまっているから、「トコハル・後編」までの心地いいリズムが怖かった。
いい気分で波に乗ってたのに落っこ
ちた。
でも、ほんと死の直前、直後がリアル過ぎてそれも大分堪えてる理由なのかな。
ほんと、人の生き死にって突然で、いつ身近な人が居なくなるか分からなくて、
いざそれに直面すると、嘘みたいにサラサラ時間は経っていくのが、ほんと、リアル過ぎた。

気持ちが追いつかないまま、取り残された人が日常を取り戻すのは時間が居る。
私はまだそこまでそういった体験はして来てない方だと思うけど、数少ない経験の中でも感じてしまっていたし。
でも、タイトル見てみてよ、
「トコハル」なんだよ?????
このタイトル付けた先生すごくない????
物凄く好きな言葉になったよ。
一年中春のように穏やかな気候って...
香藤が岩城さんに与えた愛が凄すぎる。
なんて素敵なタイトルなんだと思ったよ。
結末はしんどい。
非常にしんどい。
泣いて、頭が痛い。
でも、このタイトルに込められた思いが強すぎて、すごい幸せだなって思いました。
いや、ほんとしんどいんだよ。
でも1年中穏やかって、香藤が与えたものが大きすぎて、そしてそれを描かれた先生が凄すぎて。
辛いけど、この作品に出会えて本当に幸せです。

20年間、長きにわたって丁寧に2人を描いてくれてありがとう。
そして、「トコハル」というタイトル最高です。

また、単行本が出たら今よりしっかり感想書けるかな...
 

登場キャラクター、そして新田先生、あだちさん、お疲れ様でした。
カーテンコールで対面出来ないのが残念です。
閉まった緞帳が開いて、手を繋いだキャスト達が観客席に向かって挨拶をしてくれるのを待っていました。
でも、このお芝居はこれで終わりのようです。
寂しい。
すごく、寂しい。
でも、とても素敵な作品でした。
ありがとうございました。

アイナナにはまって推し1stな日々をつらつらと。 メッゾ推しの20☝︎腐。 ネタバレ等ございますので、御自衛頂けましたら幸いです。