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(いい感じの)既成戯曲の探し方

演劇は「小説」「漫画」「ドラマ」「映画」と比較して場面転換がしにくい(できない)という異質な物語展開を行う遊びなので、一定のお作法を守ったり、それなりの工夫をしかける必要がある。ということは小学生4年生の指導要領には書いてあったはずだ。

浦川(1996~)

まともな戯曲を使わないと、まともな稽古はできないし、ましてや上演なんてできるはずがない。と思うので、戯曲選びはかなり慎重にするべきだが、戯曲を選ぶのは実際相当困難であることは疑いようがない。

手当たり次第に戯曲を購入して読むというのが王道にも感じるが、そのような潤沢な時間を確保することは困難だ。さらに問題なのは、文字情報でしかない戯曲を頭の中で立体化して面白いかどうか、自分たちで上演できそうかどうかを判断するのは素人には(ていうか本職の人でも)非常に難易度が高い行為だ。

ではどうすればいいのか。

1. まともな戯曲賞を受賞している作品を選ぶ

まともな戯曲賞は日本には「岸田國士戯曲賞」「鶴屋南北戯曲賞」の二つしかない。世界に範囲を広げれば「ピューリッツァー賞」「(戯曲じゃないけど)トニー賞」などもある。(異論は(ちょっとだけ)認めます)
恥を捨てて、これらの賞を受賞している作品を上演する。
これが一番いい。なんてったって認められてるんだから。
作品自体のポテンシャルが高いことを強く信頼して、創作活動に集中しよう。

また、できることなら、実際に観たことがある作品がいい。実際に見て「面白い」「やってみたい」と思えることが大切だ。「思い入れがある」というのは素敵なことで、創作する上での一番の原動力になる。
生で舞台を鑑賞したならベストだが、映像資料でも基本的には問題ないだろう。文字情報を立体化するのは本当に難しい。

エピソード1
岸田國士戯曲賞受賞作の「トロワグロ」を上演したくて、役者の候補と読み合わせをしたのだが、メンバーが「何が面白いのか分からない」「こんなのを面白いと感じている演出で大丈夫なのか」などと、口々に辛辣なことを言われた。最終的にはほぼ全員面白い作品だと思ってくれていたようだが、著名な優れた作品でもそういうことは起きる。

エピソード2
実際、私が初めて野田秀樹の「赤鬼」を読んだ時、「???」だった。
役者が何役も並行して演じていくスタイルの作品を見たことがなかったので、脳内で変換できなかったのでは?と今は思っている。
今ではマジで最強最高の物語だと思ってます。

2. まともな戯曲賞を受賞したことのある作家の作品を選ぶ

あまりオススメできないが、「まともな戯曲賞」を受賞したことのある作家の(受賞していない)作品から選ぶのも選択肢であると思う。受賞作ではないが、作品のポテンシャルをある程度は信頼できる。
ただ、どんな天才であっても駄作を作ってしまうことはあるので、信用できるかはかなり怪しい。

エピソード3
トロワグロで岸田國士戯曲賞を受賞した山内ケンジの作品を10作ほど読んだが、「上演できる」「上演したい」作品はついぞ見つからなかった。(念のため書いておくが、駄作だとか言いたいわけではない)
脳内で立体化する難易度が高いこともあっただろうが、著名な作者・好きな作者だからといってハマる作品を見つけるのは本当に難しい。

3. 有名な作者は避ける

あんまりにも有名な作者は色々なリスクがある。謎のスポンサーがついて作りたくもない作品を作らされたり、アイドル俳優や不祥事でテレビに出にくくなった役者を使うことを強要されたり・・・etc

有名な作者とは

別役実
つかこうへい
ケラリーノ・サンドロヴィッチ
野田秀樹
鴻上尚史
中屋敷法仁
三浦直之

でいったんいいだろう。
平田オリザと岩松了と松尾スズキと宮藤官九郎も悩んだが、上演してる団体を見たことがないので、わざわざ「避けろ」と言う必要がなさそうだから除外した。

野田秀樹の作品例

まあ、キスシーンとか面白いけどね。
小さい団体が小さい劇場で上演するのに向いているかは非常にあやしい。

4. 10年以上前の時代性を反映した作品は避ける

当時の時事ネタや、世相を反映した作品はかなり慎重に扱う必要がある。現代ではあまりにも一般化しすぎた問題や、すでに解決されて久しい問題(いじめ・ひきこもり・オタク…etc.)がメインに据えられていたりすることがある。
5年前くらいの作品の時点でかなり怪しいが、10年以上前はかなり論外になってる可能性が高いので積極的に避けよう。

ただし、ファンタジー色が強い作品は大丈夫なこともあるので、臨機応変に考えよう。

エピソード4
「推し活」という言葉が浸透して久しい現代(2024年)に生きている人には信じられないかもしれないけど、オタクは駆逐されるべき醜悪な人種として本気の社会問題になってました。一時、NHKでは差別的表現として放送禁止用語にも指定されています。

参考文献
(出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』「おたく」)
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%81%8A%E3%81%9F%E3%81%8F

かなり過激なことが書いてあるので、心臓の悪い「オタク」は読まないほうがいいです。

まとめ

以上の4つの方針に従えば、ヤバい作品を引き当てる可能性は低くなるだろう。まさかとは思うが「ネットで拾ってきた著作権フリーの戯曲」などの、もうどう転んでもヤバい作品とか、「地元のわけわからん戯曲賞」の作品を選ばないように注意してほしい。もし、知り合いがそのような作品に手を伸ばしていたら平手打ちして目を覚ましてあげよう。その脚本で数ヶ月練習して、何十人の観客に見せるんだぞ。一生の汚点になるぞ!!

ていうか

自分で書くのが一番いいよ!
早めに作品を書いて、同期とかに見せてブラッシュアップしてから持っていくのがベストだけど、絶対無理だから全然未完成なヤバいやつでも「俺が書く!」って宣言してやっちゃったほうがいいよ!マジで!

ただし

初めて演出を担当する人が脚本も担当すると
「脚本が面白くないのか?」「演出が面白くないのか?」
で無意味な無限ループが始まるので絶対にやめよう!!!
空気悪くなるよ!!!!!

エピソード5
経験が浅い人ほど、脚本を入手・選別するのが難しいので自分で脚本を書きたがる(書かざるを得ない状況になる)傾向があります。(私の知り合いだけでも、初演出・自作脚本の例を6例知っています。)
2例を除いて、すごく苦しんでいました。その苦しんでなかった2例は脚本自体を書いた経験が豊富(たぶん10作以上)でした。

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