パレスチナ難民キャンプでの思い出
パソコンのデータを全て消してしまうという間違いを犯した。10年以上使っているiMac。動きが悪くなっていたので改善しようとした。
「内蔵のディスクを取り出し交換しなくても、USBで外付けすれば最新Macのようにサクサクになります」、、へぇ、そんなやり方があるのか。
上野まで行って最新の外付け機器を一万円で購入。新しいパソコンを買うよりずっと安い。途中でワインでも買ってゆっくり飲みながらやるか。
たぶん、それがまずかったのだろう。気づけば全て消えていた。状況からすると、おそらくフォーマットするディスクの選択を誤った。自分でも何をしたのか覚えていない。酒で半分ぼんやりしながら操作していた。そこで手元を狂わせたのだろう。
以前、パレスチナ難民キャンプを訪れた際だが、デジカメで撮った写真を全て消されたことがあった。
キャンプ内のカフェでコーヒーを飲んでいたときだった。顔見知りになっていた男性もそこへ現れ、軽く世間話をした。
写真を見たいというのでカメラを手渡したら、いろんなボタンやキーを押したり動かしたりしている。心配になりちょっと貸して、と返してもらった。
確認したら、写真が全てなくなっていた。
彼自身、あまり気にしてない様子なのがまた不快だった。キャンプ暮らしという男性の立場を考えると怒るわけにもいかず、しょうがないよ、とコーヒーを飲み干した。
その難民キャンプにはゲストハウスがあって、外部からの訪問者が泊まれるようになっている。ノルウェーから来ていたトミーに愚痴をこぼしたところ、「リカバリーできるかもしれないよ」と言われた。「カメラ貸して」
彼はSDカードを取り出し、自分のパソコンに差し込んだ。何をしているのか分からなかったが、どこかのウェブサイトを開いての操作。1時間程度でデータを蘇らせてくれた。
ジャーナリスト、と自称していた彼は今何をしているだろう? 彼と一緒に来ていたダニエルとは、日本赤軍の墓を見に行ったり、『サブラ・シャティーラの虐殺』で命を落とした人々の追悼広場を訪れたりした。コロナ前、Facebookで結婚式の写真をあげていたが、夫婦生活は順調だろうか?
データを全て消してしまったiMacだが、幸い、残しておきたかった写真はバックアップ済みだった。消えて困るようなものはもう何もなかった。難民キャンプでの写真、、たとえば墓碑に刻まれた日本赤軍メンバーの名前、大きく描かれていたアラファトの顔、アラビア語が印字されたコーラ、、全て手元にある。
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