【読み物メモ】Designing Constructionist Futures - Cheesemaking emancipation: A critical theory of cultural making

あけましておめでとうございます。
2022年は昨年よりもインプットをたくさんする年にしたいと思うので(もちろんアウトプットももっとしなければなりませんが)さっそく正月に読んだチャプターのメモをしていきたいと思います。

Digital Fabrication の教育的役割についての代表的な研究者であり、世界中から学者・教育者・芸術家やデザイナーのあつまるFabLearn conferenceの発起人であるDr. Paulo Bliksteinによるチャプター。

この章では、もともとはヨーロッパやアメリカでの価値観にもとづいて生まれ、発展してきたMaker Movementの教育活用が、他の文化においては違った意味をもつということについて、世界からの例を踏まえて説明しています。

Maker教育では、自らの手で作ることの教育的な意味が語られますが、発展途上国においては、手で物を作らなければならないことは、(効率化を図ることが許されないという意味で)抑圧やコロニアリズムの象徴であり、そこから抜け出すことが、成長と発達への道であるという現実があります。兎角美化して語られがちな「作る」というプロセスが、所変われば全く違う意味をもつということを思い出させてくれます。

こういった文化的な違いをのりこえるため、さまざまな異なる文化圏にいる学習者向けの素材や活動が開発されていますが、Bliksteinは、"the fundamental question is not only about respecting the local culture and context, but fundamentally about the compromise between what is already there—the culture, the practices, the materials—and the new elements that teachers or designers want to bring. 根本的な問いは、地元の文化やコンテクストを尊重するだけでなく、文化、活動、素材などのすでにそこにあるものと、先生やデザイナーが持ち込みたいものの、中間地点を探すことなのだ (p.122)" と述べます。

こういったことを実際に実行するための具体的な基準をいくつか紹介した上で、他の研究者との対話を引用しながら、"we should focus on empowering people to change their world and on supporting social and cognitive processes that would enable this transformation 私たちは人々が彼らの世界を変えられるよう力づけること、そして、その変化が起こせるような社会的、認知的なプロセスをサポートしていくことに集中すべきだ (p.125)" とまとめます。

ポスドクのあと最初に日本で活動を始めようとしたとき、自分にも似たような気づきがありました。ワークショップしようとしてもいつも使っていた素材が手に入らない。似たようなテーマでワークショップしても、アメリカではすごい盛り上がったのに日本ではいまいち。そういったとき、現地で長い経験のある他の先生やファシリテーターの方々の手を借りて少しずつ外から持ってきたものを現地用に適用していきました。こうやって書いてみると当たり前なことなのですが、どんなに良いものが持ち込まれたとしても、このプロセスは必要不可欠だと思います。そして、上の一文は、なぜこの仕事をしているかの、的確なリマインダーでした。


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