見出し画像

まだ諦めずにいていいですか?

突然の宣告に混乱とショックで、その後の先生の話は今もあまり憶えていません。私はパニック状態になったようで、別室に連れられました。しばらく看護師さんが傍にいましたが、途中で私一人部屋に残されました。涙で何も見えません。何も考えられません。主人の顔が浮かびました。仕事中だけど…もう主人しか…とにかく早く…主人に…

電話をかけました。仕事中でしたが、すぐに出てくれましたが、電話口の私の様子で何かあったのか?と気づきました。

どんな風に説明したか、これも記憶が曖昧ですが、泣きじゃくる私に主人は、病院からの帰りの車の運転を控えて欲しいと心配していました。お義父さんに迎えを頼むと言われましたが、私は頑なに断りました。主人以外、誰とも顔を合わせたくなかった。

主人との電話を切った後しばらく休ませてもらい、自力で帰ろうと受付に声をかけると、先生と看護師さんが出てきてまた別室へと連れられました。

そこで先生は、「大丈夫か?帰れるか?無理しないで。」と心配してくださり、そして、

「ご主人に話せた?また次回、私からもご主人に説明するから、それまでご主人と話するんだよ?大丈夫?出来るかい?あなたもご主人も誰も悪くない。わかるかい?」

せっかく止まったのに、また涙が出ました。私はききました。

「…まだ…諦めずにいていいですか…?」

先生はしばらく黙って私を見つめ、優しく肩を持って

「人間の身体には何が起こるかわからない。医学では証明できない事例もある。私も今まで奇跡と言われる事例を目の当たりにした経験がある。でも、医師として言える事はここまで。これ以上は誰もわからない。良いも悪いも人間の身体は何が起こるかわからない。いいかな?」

空を掴む感覚。もう私にも誰にもどうする事もできない。どこに感情をぶつければいいのか…。

先生と看護師さんに肩を支えられ、背中を撫でてもらった温かくも悲しい空気。

無事に自力で家路に着き、主人が帰るまで、また記憶がありません。気づいたら、主人と泣きながら抱き合っていました。主人は私のお腹をさすりながら赤ちゃんに向かって、「お前、頑張れよー…頑張ってくれ…」と繰り返し声かけをしてくれました。わずかな希望にしがみつくしかない、何も出来ない自分たち。落とし所のない、ぶつけようのない怒りや悲しみの感情。なんで自分たちが?とまた戻り、そして涙が止まらず、また怒りや悲しみが込み上げる。次回診察は2週間後。エコーでの赤ちゃんの容態に奇跡が起こっていれば、羊水検査を経て結果問題なければ妊娠継続。そうでなければ………

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?