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デザイン論

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デザイナーとして生きていく矜持を培うために学んだこと、考えたこと。
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#読書感想文

デザインは、社会的差異を具現化する。(『欲望のオブジェ』) #331

そんな挑発的にも思える一文が前書きにある『欲望のオブジェ』は、構造主義的な視点で近代デザインの歴史を語る一冊。副題が「デザインと社会 1750年以後」であるように、社会背景からデザインを語る視点が特徴的である。 なお、この記事は本書の要約や解説ではなく、個人的な学びを中心にまとめていく。 デザインは進歩を隠蔽する第1章「進歩のイメージ」と第2章「最初のインダストリアル・デザイナー」を通して1750年代以降のデザインの歴史を紹介しながら、デザインがアートから独立していく様子

最先端のデザイン!? システミックデザインとは? #303

デザインの歴史は、デザインする対象が拡大してきた歴史。二次元のグラフィックから三次元のプロダクトへ、今では目に見えないサービスや体験までもがデザインの対象となっています。その歴史の最先端とも言える最も大きくて抽象的な対象であるシステムを扱うデザインとしてシステミックデザインという手法が提案されているようです。 そんなシステミックデザインを学ぶために『システミックデザインの実践』を読みました。この記事では本書を読んでみての学びを書いてみます。要約や解説ではないことをご了承くだ

デザインが文化人類学と出会う時 #210

パーソンズ美術大学・Transdisciplinary Designでデザインを学んでいると、デザインが文化人類学の方法論や考え方を参考にしていることに気づきます。 そこで、デザインをさらに知るためにも「文化人類学とは何か?」について調べてみることにしました。すると、文化人類学は現代社会の常識を形作った学問であることが分かりました。 文化人類学とは?まず、デザイナーだけでなく現代人が文化人類学を学ぶべきである理由を、ジリアン・テット氏の『Anthro Vision(アンソ

クリティカル・デザインは、次世代のデザイン思考なのか? #209

マイブームは、「デザインとは何か?」を調べることです。これまではデザインとデザイン思考の歴史や、現在のデザイン思考の多様性を見てきました。 今回は、そのデザイン思考を批判する立場として登場したクリティカル・デザインについて調べてみました。参考文献は『クリティカル・デザインとはなにか? 問いと物語を構築するためのデザイン理論入門』です。 クリティカル・デザインとは?本書ではクリティカル・デザインの対義語としてインダストリアル・デザインを置き、従来のデザイン思考との対比を意識

デザイン思考とは? ―三大流派を比較してみる― #208

これまでデザイン&デザイン思考の歴史を調べてきました。 今回は現在のデザイン思考を共時的に理解するために、IDEOの「デザイン思考」、ロベルト・ベルガンティの「意味のイノベーション」、ダン&レイビーの「スペキュラティブ・デザイン」を比べてみました。すると、デザイナーは現代の「預言者」であることが見えてきました。 デザイン思考の総本山、IDEO デザイン思考を一躍有名にしたのは、天下のIDEOです。そのIDEOのCEOであるティム・ブラウンがデザイン思考を紹介するために書い