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『ようこそ映画音響の世界へ』監督&プロデューサー インタビュー

8/28(金)より公開となり、封切りから6週目となった現在もミニシアターランキングで5位をキープし、常に感動の口コミと大ヒットが続く『ようこそ映画音響の世界へ』。
この日本での反響を受け、本国にこの状況を伝えたところ、監督のミッジ・コスティンとプロデューサーのボベット・バスターへのZoomインタビューの機会を得る事になった。

まず、2人の簡単なプロフィールからご覧頂きたい。

ミッジ・コスティン(監督)
25年にも渡り、ハリウッドで主に音響デザイナー、音響編集者として活躍。当時は同職に女性が少なかったものの、『クライ・ベイビー』(90)、『デイズ・オブ・サンダー』(90)、『愛と死の間で』(91)、『ホーカス ポーカス』(93)、『男が女を愛する時』(94)、『リッチー・リッチ』(94)、『ザ・ロック』(96)、『コン・エアー』(97)、『アルマゲドン』(98)、など数多くの大作に参加。『クリムゾン・タイド』(95)と『アルマゲドン』(98)では、ゴールデン・リール賞の音響編集賞を受賞。 音響効果監督組合ゴールデン・リール賞の元理事であり、長年に渡り全米編集者組合のメンバーである。2005年にジョージ・ルーカスによりダイアローグ・音響編集の芸術学校の権威ある教授に認められ、USC映画芸術学校でも教鞭を振るっている。 本作『ようこそ映画音響の世界へ』が初の長編監督作である。

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ボベット・バスター(脚本、プロデューサー) 
ノースイースタン大学の教授。「DO STORY: How to Tell Your Story So The World Listens」や「DO LISTEN: Understand What’s Really Being Said, Find A New Way Forwards」の著者でもある。「音+ストーリーテリング」や「映画制作の達人の解体新書」といったワークショップを、ミラノカトリック大学、ディズニー・アニメーション、ピクサースタジオの客員学部、フランス国立映像音響芸術学院など世界中の多くの映画学校やビジネスプログラムにて開催。ダブリンとロンドンのGoogle、BBC、アニメーションアイルランド等の企業でもストーリーテリングに関するワークショップを実施。ノースイースタン大学のスピーチ、そして南カルフォルニア大学のピーター・スタークのプロデューサー・プログラムにて上位の学位を保持。彼女は、トニー・スコット、レイ・スターク、ラリー・ゲルバートらのため、ハリウッドでストーリー・テリングのエグゼクティブを務める一方で、南カルフォルニア大学で長編映画とTVのための美術学修士の開設に携わり、1992~2015年までの間、教授を務めた。

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ミッジ・コスティンは音響技師のプロフェッショナルでありながら伝道師、ボベット・バスターは映画と音とストーリーテリングの効果と用い方についてを伝授するプロであり、2人とも、長年ハリウッドで映画製作に貢献してきた人間だ。

彼女たちが作り上げた映画の《音》に関する、おおよそハリウッドにおける歴史も総ざらいした、まさに教科書のように尊く充実した記録と挑戦のドラマ。
映画音響の”冒険者”たるウォルター・マーチ、ベン・バート、ゲイリー・ライドストロームなどのスタッフたちのほか、ジョージ・ルーカス、スティーヴン・スピルバーグ、デヴィッド・リンチ、アン・リー、ライアン・クーグラー、ソフィア・コッポラ、アルフォンソ・キュアロン、クリストファー・ノーラン、バーブラ・ストライサンドといった錚々たる映画監督たちが登場し、驚くべきエピソードの数々を明かしてくれる。
途方もない名作の数々と歴史を紐解く本作は、いかにして生まれたのか?
以下に、オフィシャル・インタビューの模様をお届けしたい。

――映画音響について人に教えるようになったきっかけは?
ミッジ:元々教えるのが好きでした。中学生から大学生まで水泳を教えていて楽しかったです。自分が現場で働いていた80年代、90年代、2000年代初頭は、映画がセクシズム、レイシズムはびこる作品が非常に多く、それに食傷気味でした。次の世代には私たちより良い作品を作ってほしかったという思いがありました。私が学んでいた当初はサウンドデザインについて教えてもらった事はありませんでした。音を作っていく事はストーリーやキャラクターを作っていく事だという認識がなかったのです。そういう事を後世に伝えていきたいという思いもあります。
私が学んでいた当初は、エンジニア達がやる事だというように教わっていたのです。

―― 豪華映画人の名言をどうやって引き出しましたか?
ミッジ:いろいろリサーチをしていく中でこういう映画をフィーチャーしたほうがいいよねというのを選定していきましたが、その中で音が大好きで物凄くこだわりがある人と、音を手掛ける人達を大事にしている人たちを必然的に選定していきました。そういう方たちなので、非常に快く承諾し、快くコラボレーションしてくれたので、割と難なくインタビューすることができました。
ボベット:スピルバーグは忙しい人ですし、なかなかインタビューには応じてくれないだろうと読んでいたので、『ジュラシック・パーク』や『プライベート・ライアン』などで組んでいて7回オスカーを受賞しているゲイリー・ライドストローム経由で働きかけていました。5年間、出演を働きかけていましたが、忙しくて快諾してくれませんでした。諦めて、スピルバーグが映っている授賞式のシーンを映画の冒頭と最後にはめ込んでいるので、肖像権を得るためにリリースを書いたところ、それを受け取ったスピルバーグが、「前からやるって言ってたからやらせてよ!今週末できるからお願い」と言ってきました。急いでミッジにメッセージし、プロデューサーのカレンに電話して週末インタビューを撮ろうという事になりました。一度ロックした作品を再編集するために準備しました。ところが、やっぱり忙しくなったと言われ、次の火曜日にようやくインタビューに応じてくれ、色んな質問に答え、素晴らしい話をしてくれました。

―― 音が印象的な映画をひとつ選ぶなら?
ミッジ:『地獄の黙示録』
ボベット:『エレファント・マン』、『ゴッド・ファーザーⅠ・Ⅱ』、『レイダース 失われたアーク』……ひとつには絞れません。

――『ブラックパンサー』に関する思い出は何かありますか?
ミッジ:ライアン・クーグラーのことを思い出さずにはいられない。
『ブラックパンサー』の声が掛かった彼が次のように言いました。「アメコミを手掛けるなら自分でストーリーを作らせてもらえないと、自分から出てくるものでないと、オーセンティックではないから、自分のストーリーを作りたいです。そうでなければやりません」
監督を務めることになって開口一番、「僕はアフリカへ行ってリサーチをする」と言いました。彼は全ての作品に於いて、受け取った題材を必ず自分の経験に照らし合わせて自分のものにしていく人です。パーソナルに作り上げていく監督なので、今回のチャドウィックさんの事は、大事な友だちを失ったというのは言うまでもなく、そういう人だからつらい思いをしてるだろうと思います。ライアンは本当に周りの人を大事にしてコラボレーション上手な方で、スタッフからいつも愛されていて、すごくセンシティブな方なので、さぞかしつらい思いをしているだろうと思います。最近よくライアンの事を考えて涙が出てきます。

ボベット:アフリカ系の文化は先祖を大事にします。それこそ『ブラックパンサー』で描いている事。チャドウィックがそこまで重い病気を患っているとはライアンもスパイク・リーも知らなかったのです。そんなチャドウィックが先祖の一員になってしまった事が信じられないとライアンが言っていました。

―― 日本での大ヒットに関して、メッセージをお願いします
ミッジ:本当に嬉しいです。音周りは注目される事があまりないので、こうしてお客様に届けることができ、充実感を感じています。

ボベット:本当に嬉しい。こうしてインタビューをして頂いて、私たちが疑問視していた事が、皆さんも同じように疑問に思っていてくれていた、それを未来に引き継ぎたいという思いも、きっと皆さん一緒なんだという事も感触として感じられて、とても今充実感あふれるような感じです。
このヒットは私たちにとって、とても重要な意味合いを持っています。

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音響制作さながら、本作の制作にも様々な道のり、苦労や喜びがあったようだ。
この他の更に細かなインタビューはfan's voiceのこちらの記事に記されているので、ぜひとも併せてお読み頂きたい。
https://fansvoice.jp/2020/09/23/making-waves-interview/

一音、一音には誰かの想いやドラマがあり、その集積こそが感動を形作っている。映画音響の存在価値を私たちに示してくれた彼女たちにも、また心から感謝したい。

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