量子コンピューティング基礎講座「量子コンピューティングとは」

量子コンピューティングって何なんでしょうか?それを解説していきたいと思います。
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古典力学と量子力学

床があって壁がある。そこにボールが飛んでくると、床で跳ね返って壁で止まる。もしかしたら皆さんはこのような景色を目にしたことがあるかもしれません。

こういう物の様子や動きというものは「力学」によって表されますが、特に量子との兼ね合いで力学を語るときは、「古典力学」と呼ばれます。そして古典力学では、ニュートン方程式によって物の動きが記述されます。

これで大抵の現象は記述できますが、それでも表しきれない現象もあります。例えば電子や光の挙動。これらはある場面では古典力学に従うのですが、そうではない状況も出てくるということがわかっています。

このような電子や光の様子や動きをしっかりと表すには、古典力学ではなく「量子力学」が必要になります。そして量子力学では、シュレディンガー方程式が全てを支配しています。

このようにして、量子力学というものは古典力学とちょっと守備範囲の違う新しい力学だというふうに思ってください。

古典コンピューターと量子コンピューター

皆さんが知っている身の回りのコンピュータの中では電子が動いて信号を伝えていますが、この電子は基本的に古典力学に従って表される現象で動作しています。このようなコンピュータのことを「古典コンピュータ」と言います。

一方で、皆さんが今から勉強する量子コンピュータの場合、この中で動いている電子のような量子的粒子は、量子力学によって表される現象で動作をしています。

この量子コンピュータは、古典コンピュータよりも高い性能を示す場合があることが理論的に示されています。計算の内容によっては、古典コンピュータよりもずっと早くその計算が終わってしまうというようなことがありえるということですね。

皆さんはこれからこの量子力学と付き合っていくわけなのですが、この量子力学、ちょっと勉強するときに癖があります。

量子とうまく付き合う

古典力学で扱う現象は、日常の中で目で見て手で触るものが多いです。このため、古典力学で勉強する内容が確かにそのようになるということを簡単に実感することができます。

例えば、床があって壁があって、ボールが来るとポンと壁で跳ね返っていく、といった現象を古典力学で記述するわけです。私たちはこのような場面を実際に目で見たことあるので、確かにそうなるよね、という納得感がありますよね。

ところが量子力学の場合はちょっと様子が異なります。

床があって壁がある。そこに粒子が来ると、この粒子、え?消えた?と思いきや、壁の向こう側から出てきたりとか。こんなことが起きたりするんですよね。なので量子力学を勉強していて、ちょっと納得感がいまいち・・・なんてことはよくあります。「本当にそんなふうになるのかな?よくわからないな・・・」と疑心暗鬼になってくる人が多くいます。

このようになってしまうのは、量子的なものの動きというものが、私たちが自分の目で見て手で触れるようなものの動きと大きく違うために生じる違和感が沸いてくるからではないでしょうか。「量子的なものがこういうふうに動きますよ」というふうに量子力学で学んでも、それを実感して納得することがなかなか難しいんですよね。

さて、ここまでの説明では「感」という漢字がたくさん出てきました。個人的には、この「古典力学と量子力学の学びやすさと学びにくさ」に根ざしているものは、実は「人の感覚」なのでは?と思います。

つまり、「見たことがある、手に触ったことがある」というものは納得しやすいですが、その直感に反するものは、どうしてもなかなか納得しにくくて受け入れがたい、という心の作用なのかもしれません。

それでも量子力学と付き合っていくには、「赤ちゃんが初めて見たものに一切疑問を抱かずにそのまま受け入れる」ように、皆さんが「量子力学で学ぶものに疑問を抱かずにそのまま素直に受け入れて、そして量子力学に親しんでいく」という姿勢で学習するのが有効なのかもしれません。

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