みてわかる電子回路「AC-AC変換回路」

ここではAC-AC変換回路であるトランスについて解説します。
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AC-AC変換回路とは

AC-AC変換回路とは、交流の入力をもとに所望の交流を安定的に出力する回路です。主に交流の電圧(電流)の振幅を変換したいときに用いるもので、身近なもののなかでは、電柱の上にある変圧器や電子機器を充電するためのACアダプタの中に入っています。

回路素子としては、二つのコイルをコアと呼ばれるものに巻きつけたもので構成されており、トランス(Transformer)などと呼ばれます。
このトランスでは、入力側を「一次コイル」、出力側を「二次コイル」とよびます。一次コイルを交流が通ると交流磁場が発生し、その磁場による磁束がコアのなかを走り、二次コイルに電磁誘導による起電力が生じます。

インダクタ(コイル)の基本的性質

ここで、コイル=インダクタについて復習しておきましょう。

インダクタに電流が生じると、内部には磁場が発生します。このインダクタが十分長く内部での磁場が一様であるとき、内部での磁束密度 $${B}$$ [T] は単位長さあたりの巻き数 $${n}$$ [1/m] と電流 $${i(t)}$$ [A] に比例し、その比例係数はインダクタ内部の媒質の透磁率 $${\mu}$$ [H/m] となります。

ここで、インダクタに生じる電流が時間的に変化すると、インダクタ内部の磁束密度が時間変化します。するとこの磁束密度変化により、電磁誘導による起電力がインダクタ両端に生じます。つまり、インダクタに生じる電流が変化すると、インダクタ両端に起電力が生じることになりますね。その起電力はスライド中の式のように表され、電流の時間変化率に比例します。この式のなかの比例係数は自己インダクタンスとよばれ $${L}$$ [H] で表されます。

十分長く内部磁場が一様なインダクタの自己インダクタンス $${L}$$ は、断面積 $${S}$$ [m$${^2}$$] 、長さ $${l}$$ [m] および単位長さあたり巻数 $${n}$$ の2乗に比例し、スライド中の式のように書くことができます。

さて、二つのインダクタが磁場を介して相互作用しているときには、インダクタ間の結合は相互インダクタンス $${M}$$ [H] で表されます。片方のインダクタにはもう一方のインダクタに生じた電流の時間変化に比例した起電力が生じ、その比例係数が相互インダクタンス $${M}$$ となります。

ここで、二つのインダクタの結合の度合いを表す指標として、結合係数 $${k}$$ が用いられることがあります。これはスライド中の式で定義され、 $${0 < k < 1}$$ の値をとる無次元の値となります。この結合係数が $${k = 0}$$ のときは二つのインダクタは全く結合しておらず、$${k = 1}$$ のときは完全に結合している、といった具合で結合の度合いを表す便利な指標として使うことができます。

トランスでの電圧電流変換

以上の基礎知識をもとにして、トランスでの交流電圧あるいは交流電流の振幅がどのように変換されるかを考えることができます。

トランスの左側には出力抵抗 $${R_{\rm{s}}}$$ [$${\Omega}$$] で起電力 $${v_1(t)}$$ [V] の交流電源が接続され、右側には負荷抵抗 $${R_{\rm{L}}}$$ [$${\Omega}$$] が接続されているとします。ただし電圧および電流は交流なので正弦波的に時間変化します。

ここで特に、$${R_{\rm{s}} << \omega L_1}$$ かつ $${k = 1}$$ かつ $${R_{\rm{L}} << \omega L_2}$$ という条件がみたされていれば、トランスの左側および右側での電圧振幅の比 $${V_2/V_1}$$ が、各インダクタの巻き数の比によって表されることを計算により示すことができます。同様にして、トランスの左側および右側での電流振幅の比 $${I_2/I_1}$$ もインダクタの巻き数比によって表されます。

このようにして、トランスでは巻き数比によって電圧および電流の振幅を変換することができます。