みてわかる電子回路「半導体とは?」

ここでは、みなさんがよく耳にする半導体というものについて簡単にみていきましょう。
(ご利用にあたり免責事項をご一読ください)


抵抗率

 抵抗率とは、材質の電気の通しやすさを表す指標です。ある材質でできた長さ$${ L}$$ 、面積$${S}$$ 、抵抗率 $${\rho}$$ の構造体がもつ抵抗値は、スライド中の式で表されます。抵抗率は構造体の形状に関する量(長さや面積)とは無関係で、構造体を構成している材質に固有の量です。


半導体とは

 材質は、その抵抗率によって「良導体」「絶縁体」「半導体」に大別されますが、これは大まかな区別であり、明確な定義はありません。半導体に区別される材質の抵抗率は $${10^{-4} – 10^6  \Omega\rm{m}}$$ 程度です。


原子の構造

 原子では、正電荷をもつ原子核を中心とし、その周囲を負電荷をもつ電子が取り巻いています。原子核のもつ正電荷量は$${+e}$$ [C] の整数倍であり、この整数は「原子番号」です。イオン化していない電気的に中性の原子は、正電荷量と等量の負電荷量の電子で取り囲まれており、その数の違いにより異なる元素が存在します。たとえば、半導体の代表格であるシリコン(Si)の原子番号は14であるため、原子核は$${+14e}$$ [C] の電荷をもち、$${-e}$$ [C] の電子が計14個その周りを取り囲んでいます。つまり「原子」=「原子核」+「電子」ですね。


電子の軌道

 原子を取り巻く電子は、決められた「軌道」のなかで運動しています。この軌道には下図のように1s, 2s, 2p, …といった名前が付けられています。一般的に、軌道の名前についた数字が小さいほどエネルギーが低く、さらに電子同士の相互作用のため s軌道よりp軌道のほうが若干高いエネルギーとなります。しかしながら、シリコンや炭素のような原子では、結晶中のように周囲の原子と相互作用するような状況ではsp$${^3}$$混成軌道という等価な軌道が形成されるため、下図のように一番外側の混成軌道に4個の電子が存在すると考えることができます。


価電子と内殻電子

 一般に軌道のエネルギーが高いほど($${n}$$が大きいほど)、その軌道は原子核から離れたところに存在します。電子が存在する軌道のなかで最もエネルギーが高いものは、原子にとって最も表層の「原子の顔」となります。このような表層の軌道に存在する電子は特に「価電子」と呼ばれ、原子の性質を決定する重要な役割をもちます。たとえばシリコン(Si)では、一番外側の混成軌道が完全に占有されておらず、そこに4個の電子が存在するため、これらの電子がシリコン原子にとっての価電子です。いっぽう、価電子に分類されない電子はひとまとめに「内殻電子」と呼ばれます。原子を卵に例えると、黄身=原子核、白身=内殻電子、殻=価電子、となりますね。原子がもつ性質の多くは、最も表層の価電子が決定し、内殻電子はそれほど重要でない場合が多いです。


価電子の性質

 価電子には、不思議で大切な性質があり、隣の原子に属する価電子と対(ペア)になろうとします。例えば、あるシリコン原子の価電子は、隣にいる別のシリコン原子の価電子とペアを組んで運動しようとするのです。どのような原子でも、その原子の価電子は以上のような性質を持ちます。異なる種類の原子の間でもこのような価電子どうしの引きつけ合いがおこります。

共有結合

 このように別の価電子とペアとなった価電子は、お互い強く引きつけあい、強力な結合をつくります。これは「共有結合」とよばれ、異なる原子をくっつける役割を担います。たとえばシリコンでは、4個の価電子が表層に存在するため、一つのシリコン原子は、近辺にある4個のシリコン原子と共有結合によってくっつきます。

結晶

原子が共有結合などによって隣の原子と結合し、無数の原子が規則正しくならんだとき、これを「結晶」とよびます。ダイヤモンドは炭素によってつくられた結晶であり、水晶は酸化シリコン($${\rm{SiO}_2}$$)によってつくられた結晶ですね。ちなみに、原子同士の結合が共有結合とは異なるものであったとしても、とにかく原子が規則正しく並んだものは結晶です。たとえば塩は$${\rm{Na}^+}$$と$${\rm{Cl}^-}$$の結晶、氷は水分子の結晶、といった具合です。

電子デバイスでの結晶

電子デバイスでは、シリコンやゲルマニウムなどの人工的な結晶が使用されます。デバイス性能を向上させるため、その純度は自然界に存在するものに比べてとてつもなく高くなければなりません。その抵抗率は、室温においてちょうど半導体と呼ばれる程度の大きさです。このような半導体結晶がもつ性質を理解することが、電子デバイスの基礎的な性質を知るうえで非常に重要になります。