みてわかる電子回路「バイポーラトランジスタの小信号等価回路」

ここではバイポーラトランジスタの小信号等価回路について簡単に見ていきましょう。
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バイポーラトランジスタの小信号での入出力関係

バイポーラトランジスタ(Bipolar Junction Transistor, 以下BJT) では、その動作状態を表す変数としてベース電圧、コレクタ電圧、ベース電流、コレクタ電流の4つがあり、そのうちの2つを与えれば、残りの2つが決定されると考えることができます。例えばベース電圧とコレクタ電圧を与えれば、ベース電流とコレクタ電流が決定されますね。このため、BJTは2変数を入力として残りの2変数を出力とする増幅器(あるいは変換器)とみなすことができます。入力として与えるものは 、4変数のうち好きな2変数を入力として選ぶことができるでしょう。

BJTにおいても小信号等価回路を考えることができ、その基になるものは各変数の交流信号複素振幅 $${ I_{\rm{b}} }$$, $${ I_{\rm{c}} }$$, $${ V_{\rm{be}} }$$, $${ V_{\rm{ce}} }$$ の間に成り立つ関係式です。結果のみ示すと、この関係式はBJTの小信号特性から下図中の式によって表されることが分かっています。この式に従って交流信号からみたBJTの見かけの回路図を探っていきましょう。

小信号等価回路

まずベースエミッタ端子間に生じる交流電圧信号 $${ V_{\rm{be}} }$$ [V] は、$${ I_{\rm{b}} }$$ [A] に比例する成分と $${ V_{\rm{ce}} }$$ [V] に比例する成分の和で与えられます。ここで $${ I_{\rm{b}} }$$ [A] に比例する成分は電圧が電流に比例して発生するため「抵抗」によって表現され、その抵抗値は比例係数で与えられるでしょう。いっぽう $${ V_{\rm{ce}} }$$ [V] に比例する成分では、電圧が電圧に比例して発生するため「電圧源」によって表現され、その起電力はコレクタエミッタ間に関係する $${ V_{\rm{ce}} }$$ に比例します。以上から、ベースエミッタ間の関係は下図中の電気回路で表されます。

つぎにコレクタエミッタ端子に流れる交流電流信号 $${ I_{\rm{c}} }$$ [A] は、$${ I_{\rm{b}} }$$ [A] に比例する成分と $${ V_{\rm{ce}} }$$ [V] に比例する成分の和で与えられます。ここで $${ I_{\rm{b}} }$$ [A] に比例する成分では、電流が電流に比例して発生するため「電流源」によって表現され、その電流量はベースエミッタ間に関係する $${ I_{\rm{b}} }$$ [A] に依存します。いっぽう $${ V_{\rm{ce}} }$$ [V] に比例する成分では、電圧が電流に比例して発生するため「抵抗」によって表現され、その抵抗値は比例係数の逆数で与えられます。以上から、コレクタエミッタ間の関係は図のような回路で表されることになります。

以上をまとめると、BJTが交流信号に対して見せる入出力特性は、それを簡単な回路素子の組み合わせによって表現すると図のようなものになります。

これがBJTの小信号等価回路です