人出が7.6倍に増加!


数字の比較は本当に機械的にやらないで欲しい。2回目の緊急事態宣言が出たことで、ニュースではドヤ顔で

といった見出しが踊った。例えば「東京・銀座の夜間は前回の緊急事態宣言と比べて7.6倍もの人がいた!」と言うことで、「なんとケシカラン、人出が減ってないではないか」「こんな出歩くバカがいるからコロナが収まらないのだ」と暗ににおわせる。

私はこの「ケシカラン人」はバーチャルな存在であってほぼ実在しない人物だと思っている。だって前回の緊急事態宣言のガラッガラの銀座とか、絶対値として何人の人がいたのよって言う…今回は店だって営業してるんだから従業員だっているだろう。

確かに「ケシカラン人」も実在するのだろうが、ごく少数だと思うのだ。「ケシカラン人」がある程度の量いるのであればそれは”迷惑を顧みず常に遊び歩く”真の「ケシカラン人」なのかもしれない。だが、ごく少数だった場合、恐らく普段は自粛しているものの「今回だけたまたま」「今回はどうしても」の大してケシカランくもない人があちらこちらでポツポツと出没しているだけだと思う。

地方と比べると、最近の東京の映像でも「うわ、すげー人いる」と思うかもしれないが、それまでの普段の銀座とか渋谷とか池袋とか新宿とか東京駅とか、もうそれは地方では考えられないほどの人がいる。私のホームは”大宮の香りがする””埼玉が支配する出島”と呼ばれる池袋だが、そのしけたデパートですらバーゲンでもないのに人が押し合いへし合いで靴を買いたくても店員が捕まらないなんてザラだった(だから東京のデパートで買い物するのが嫌で、いつも実家に帰省する際に買い物していた)。池袋西武の無印良品では、どこの無印でも置かれているであろう通常ラインナップの商品を購入しようとする客の長蛇の列にうんざりして帰宅してネット通販で買う…とか普通だった。池袋東武のユニクロだって以前は信じられないくらいレジ待ちが長蛇の列で、もう諦めて王子神谷に行くことを考えるくらいだったのだ。レストランも不味い冷食をチンしたような店ですら昼時は行列。電車なんて10両編成で6分おきに来るのにそれが全て肋骨が折れそうなくらいの乗車率とか、座れはしない南北線ですら他の路線に比べるとガラガラに見えて「赤字なんだろうな」と憐れみたくなるのが日常だった。それに比べて今はガラガラであり、多くの人が外出していないのは明らかだ。

それをあたかも「ケシカラン人」がたくさんいるかのように見せるのはいかがなものだろうか。ほぼ0に近い数値の「7.6倍」に一体どれだけの意味があるのか。むしろ同調圧力に弱い日本人にとっては「そんなにケシカラン人がたくさんいるなら自分もやっても大丈夫」と思わせる、逆効果になっているのではないかと、強く強く感じる。今回の宣言前で人出の多かった年末年始と比べて「こんなに減っているね」「みんな外出していないんだよ」と見せた方がいいのではないか。

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