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ISSAYさんのはなし



「君はステージに居る"居方"がいいよ。ステージでの存在の仕方がいい」


TwitterもといXで、またオフィシャルサイト発表があったように、「Der Zibet」のボーカルISSAYさんが亡くなられました。
私は、ISSAYさんのバンド「DER ZIBET」や、「ISSAY meets DOLLY」で何度もライブやレコーディングに参加させて頂きました。

ただお仕事でご一緒しただけでなく、音楽のこと・生き方、本当に色々なことを教えてくれた人であり「Jill」がいまのかたちになるまでに多大な影響を与えてくれた人でした。
関係性としてはミュージシャンの先輩に当たる方な訳ですが、「お世話になった」などという月並みな言葉では到底表せないほど、沢山のものをくれた人です。
バンド、ロック界隈で活動する上でのある意味保護者、いや守護者か?とも言えるような、真っ黒な太陽のようなとてもとても大きい存在でした。

あまりに突然のことに、言葉であれこれ書くのはどうか…とも思ったし最初は衝撃が大きくて全然言葉なんて出てこなかった。
でも、なんとなく今の気持ちをメモしておこうとメモアプリを開いたら、あれよあれよと言葉が文章が溢れてきてしまったので、
こうしてnoteの一更新を使わせてもらって書こうと思います。 

ISSAYさんがどんな方かというと。
DER ZIBETオフィシャルサイトのメンバー紹介ページより。

メンバー内で唯一、体形を維持している驚異的な人間。酒以外、余り口にするのを見た事がない。今でもビジュアル系と呼ばれるゆえんである。
初めてのバンドISSAY and SUICIDESを経てISSAYソロプロジェクト(HAL参加)の後、1984「星くず兄弟の伝説」で映画デビュー。この時、プロデューサーであった近田春夫氏に見初められ、DerZibetデビューへとつながる。
映画、ドラマ出演作はドラマ、「あいつがトラブル」「ダンディーと私」ミュージカル 「ダンスはうまく踊れない」
ソロアルバムとして「Flowers」BMGビクターがある
バンド内では、主に作詞担当。攻撃的なルックスとは裏腹に、やさしく人当たりが良いので初めて会った人は恐る恐る近づいてくるが、その反動で一気にファンになる。
友人も多く、若手ミュージシャンからの信望も厚い。
現在参加しているバンド、ユニットは土屋昌巳ユニット「KA・F・KA」w/ウエノコウジ(the HIATUS、ex.TMGE)、宮上元克 (ex.THE MAD CAPSULE MARKETS)、森岡賢 (minus(-)、ex.ソフトバレエ)「ISSAY meets DOLLY」w/福原まり(ex,REAL FISH, SHI-SHONEN)

DER ZIBETオフィシャルサイトより抜粋   https://derzibet.com/profile/index.html

DER ZIBETとは

1985年10月、シングル「待つ歌」でデビューを果たす。直後に発表したアルバム『Violetter Ball』以降、耽美なギター・ロック・サウンドと独特の美学による世界観で、後のヴィジュアル系バンドなどに大きな影響を与える。「レッド・ツェッペリン系サウンドでゴスでせつない」「初の和製デカダンス・バンド」で、「V系の生ける伝説」といわれる。

Wikipediaより

ミュージシャンとしてだけでなく、舞台人として圧倒的な存在感・説得力を持って舞台に立ち独自の美学を貫いて多くの人を魅了したアーティスト。

初めてISSAYさんとお会いした日が初めて私のステージを見て貰った日だった。

10数年いやもっと前になるか、都内の小さなサロンで開催されたとあるゴシックイベント。
会場はサロンなのでライブハウスのような音響設備はなく、ステージに段差すらない。
すぐ目の前にお客さんが座っているような、ゴシックイベントだけに美意識は徹底されているが会場の作りとしてはある意味アットホームなざっくばらんな雰囲気の場所。

そこで当時私が組んでいた「Rose Noire(ロゼノワール)」というグループの相方Louieと2人でほぼ生音で演奏したのだが、それをたまたま観てくれていたISSAYさんと終演後初めてお話しした際に私にかけて下さった言葉が冒頭のものだ。


"ステージでの居方"

ステージにいかに"居る"か。
観客の前にいかに"存在する"か。

ただ立つのではなく、圧倒的な存在感を持ってステージに立つというのはどういうことかというのを私に教えてくれた人が、
まるで舞台に立つために産まれて来たのかと錯覚するような圧倒的な存在感を持つISSAYさんだった。

(教えてくれたといっても、もちろんレッスン付けてもらった訳じゃない。
ISSAYさんのバンドであるDER ZIBETやISSAY meets DOLLYのライブを観させてもらえる機会があればどんなに忙しくても行ったし、またそれらのライブでゲスト参加という形で一緒にステージに立たせてもらって、またごくたまに私のライブを観て貰える機会があれば二言三言良かったところなど感想をくれた。
そんな環境の中で貰った言葉・自分で気付いたことを宝物のように大事に育てたし、その環境の中で無意識のうちに刷り込まれたものも沢山あったように思う。
いやむしろ、そっちが大半かな。)
勉強させて貰った、なんていう表現をしたらきっと嫌がるだろうなぁ。


音楽のこと、舞台人としてだけでなく、美意識や生き方もとても気高く美しい方だった。
180センチ超えの華奢な長身に長い黒髪、
いつ会っても、どんなラフなリハーサルや打ち合わせ、レコーディングの立ち会いのみの日でも必ず細身の黒光りするレザーのパンツにタイトなトップス。
冬は長身に地面すれすれまで引き摺るようなスーパーロングコートをまとい裾を翻し颯爽と現れる。
真夏でも冬でも全身真っ黒(ステージでは赤や白など華やかな色も着られることはあった)。
まるで1000年も前からそこにあったように、当然のような顔をして指に嵌るシルバーのゴツいリング。アクセサリー。サングラス。

黒のレザーパンツとフリルのついたシャツがあれほど似合う人をわたしは知らない。

まさにロックスターかくあるべし、といった佇まい。
歩く耽美、歩くデカダンスだった。
日常のどの瞬間を切り取られてもアー写になるし動画ならばMVに使えるシーンになるんじゃなかろうかという、そんな人。

そんな在り方や、あとは何と言っても
酒の飲み方!!!!!笑
これを教わった。
(といっても、ただいつも打ち上げやリハーサル終わりにみんなで一緒に飲んでただけですが。笑)  

飲めない人に無理に勧めるような飲み方とは対極にある、でもちゃんと楽しくバカになって飲んで、ひと仕事終えた後ちゃんと打ち上がることで次へ進める、そんなお酒の飲み方。

そう言った打ち上げの席などで、私も参加させてもらい当時は若手なりに身の振り方・振る舞い方を学んでいったわけなのだが、
関係者に向かって我々(Rose Noireのふたり)のことを紹介するとき必ず
「この子達はね、僕の"眷族"(けんぞく)なの!」
と紹介?してくれた。


(ライブ後の打ち上げにはいつも酒と煙草と大量の真紅の薔薇の花束があった。
音楽を、酒を、煙草を、芸術を、猫を、美しいものを愛した人だった)



まぁそんなふうに色々関わらせてもらう時期があって、その後私も他に多くのプロジェクトやバンドに参加したりと
自分で色々幅広い活動が出来るようになっていった。

で、ここ最近はちょうどコロナ禍だったのもあり、最後に会ったのは2020年にISSAY meets DOLLYのライブに私が参加した時だった。



いつかあんきものステージを見て欲しいと思っていた。
特に豊洲PITやZeppなど大きなステージでワンマンをやるようになった2022年頃から強く思うようになった。
ご迷惑でないタイミングでご連絡しようしようと様子を伺っているうちにとうとう見て貰うことは永遠に叶わなくなってしまった。
これは本当に単純に自分が悪いし、悔しくて仕方がない。
「そのうち」は人生でいっぱいあるし、なんなら毎日だってそう思うタイミングはあるだろう。

けど時にはそれが絶対に許されないこともあるのだ。
今回その事実をこの上なく目の前に突きつけられて鈍器で頭を殴られたようなショックだった。


今、ありがたいことにあんきもで・メタルで・ロックでバイオリンを弾いている私、または様々なジャンルのカヴァーをやっている私に影響を受けて、
バイオリンがメンバーにいるバンドが次々と産まれたりバイオリンでロックなことをやろうという人が増えたりしているみたいだ。

そう思ってもらえる存在であることは本当に誇らしいし嬉しい。


私もISSAYさんが示してくれたロックでデカダンで美しい生き方でもって、これからもどんどんかっこよくステージに居続けたいしこれからの人生を生きていきたい。
(〇〇でもって、という言い方をよくされていたのが懐かしい)

夜の王・デカダンの帝王の眷族、夜の子供たちのひとりとしてその名に恥じぬ気高い存在のしかたでこの世界に居たいと思う。


全てを過去形で書かねばならないのが心底悔しく寂しく、全然実感を持てないし嘘みたいだ。
今でもまだ、たちのわるい悪夢なんじゃないかなってどこかで思ってる。

おかしいんだけど、本当にヴァンパイアなんじゃないかってどこかで思ってたのかな。数多の音楽系メディアが伝える「死去」の文字がなんか浮ついて見えて趣味のわるい冗談みたいで、ISSAYさんでも死ぬことあるの…??みたいな気持ち。


これまでに頂いたたくさんのものに感謝し敬意を表し、
謹んでご冥福をお祈り致します。


Jill

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