見出し画像

時の洗礼を受けた本たち(1)

今年受けた大学の講義の一つに『実験経済学』というものがあって、その教授がこう話した。

「今、大ヒットと書店に並べられている本は、出版社が強く売り出そうとする為、質の評価に上方バイアスがかかっている。10年後も残っているのはほぼ無い」



この話は、『ノルウェイの森』に出てきた超インテリだけど人とズレている永沢さんの台詞を思い出させた。

「時の洗礼を受けていない本を読むな」



私はこの教授も村上春樹も大好きな為、これからは古い名作を読んでいこうとあっさり決意した。まずは家にある父の本棚に眠る名作から読み始めた。備忘録としてここに簡単に記す。



カフカ 『変身』 1915年

内容は有名だろう。ある男が朝目覚めると突然大きなムカデのような虫になっており、最期は同居していた父に投げつけられたリンゴがもとで亡くなる。

不思議に感じたのが、主人公が虫になったことを家族や本人自身でさえも多少驚きはするもののすぐに受け入れていることだった。まるで虫となった主人公とその家族の関係性を通して別の何かを表現しているように見えた。印象的だったのは、誰もしようとしない虫になった男の世話をしていた妹が、男が亡くなってから、この物語の中で最も溌剌として麗しく描かれていたことだった。少女には重すぎる責任感や、不条理な社会の目の存在にもしかしたら自分も加担しているのではないか、と少し戸惑いを感じた。


アンデルセン 『絵のない絵本』 1855年

アンデルセンという名をどこかで聞いたことがある気がしてこの本を手に取った。『醜いアヒルの子』の作者だ。この本は、世界を見てきた月が物語る“千一夜物語”のような話だ。

正直に言うと内容はあまり覚えていない。どれも2〜3ページで話が終わってしまうからだろう。以上。


カミュ 『異邦人』 1942年

話の内容は、正当防衛に思える殺人をした青年が、その少し前にあった母の葬式で涙を流さなかったことで死刑と判決されてしまうもの。とても大雑把に言った。

私は裁判が始まる本の後半よりも、前半の何気ない日常を切り取った作者の表現が好きだった。海と太陽、そしてデートしている女の子の描写をのめり込むように読んでいた。村上春樹に似ているところがあると思う。村上春樹の作品では、料理を作ったり食べたりする描写に特に魅入ってしまう。




この1週間は出来る限り読書にふけようと思う。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?