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クラップス(成金への道)

クラップスの面白さの原点は・・・
やはり、自分でサイコロを振れる所だと思います。

勝負の行く末は、自分の手の中にある。

自分の運命も、他のプレイヤーの運命も、この手に握る。

これこそが、クラップスの醍醐味です。
 

そんな醍醐味の味わい方は、千差万別で・・・

サイコロを、天高く放り上げる者もいれば・・・

地をはうように、転がす者・・・

コブシに、フッと息を吐きかけ気合を入れてから投げる者・・・

また、何のポーズもなく、無造作に投げる者もいる。

ちなみに、この手のタイプは、年老いた、おばあちゃんに多いです。
気合入れても、どうにもならん事が分かってるんでしょうかね。

私はと言うと・・・
ピンゾロの目を上にして・・・
軽く向こうの壁に当たる感じで投げ入れております。

なんか、こうしますと・・・
「7」が出にくいような気がするんですよね。

一投目は、「7」を出した方がいいとお考えの方もおられるかもしれませんが・・・

一投目、二投目に限らず・・・
例えば、ず~~っと、「6」を出し続けますと、負けない訳ですので・・・

私は、ぞろ目を期待して・・・
ピンゾロの目に揃えてから、投げ入れるようにしております。
 

また、そんな投げ方をしているからか・・・
なぜか、ピンゾロの出る確率が高いように思います。

単なる記憶のマジックで、自分に都合の良い統計だけを覚えているんじゃないの?と問われれば・・・

「おそらく」って、あっさり認めてしまいますけどね。
 

また、投げ入れる時にピンゾロの目に揃えるので・・・
他のプレイヤーやディーラーも・・・
私のピンゾロ好きを察してくれてるようでして・・・

ディーラーは、予めピンゾロの目に・・・
サイコロを器用にスティックで揃えてから渡してくれたりしますし・・・

他のプレイヤーも、「ピンゾロ」(エイシスと言う)に賭ける事が、多かったりします。
 

そんな、ある日の事です。

私が、シューになって、いつものように、サイコロをピンゾロに揃えていると・・・

私の対角線上のプレイヤーが、「ピンゾロ」に$5を賭けていました。

そのプレイヤーは、ごっつい体格(筋肉質ではなく、ぽっちゃり系)で・・・

西部劇等に出て来る、冴えない悪党風で・・・
図体はデカイくせに、主人公に一発で、のされるタイプの人でした。

お金持ちには、到底見えず・・・
手持ちのチップも、レッドオンリー(レッドは$5チップの事)で・・・

それも、5,6枚しかない感じであります。

そんな、冴えない貧乏ウエスタンが・・・
ピンゾロに$5も賭けるとは、意外な感じであります。
(ピンゾロには、$1を賭けるくらいで充分ですからね)
 

でも、まぁ、特に気にも留めず・・・
「7、11」を念じながら、サイコロを放り投げたのであります。

必然的に、サイコロは、私の対角線上におります・・・
その貧乏ウエスタンの所ら辺で止まります。

すると、貧乏ウエスタンが・・・
「イエ~ス」とか小さくガッツポーズをしているではありませんか。

あらら・・・と思っておりますと・・・
パスラインに賭けてあるチップが、サササッと片付けられて行きます。

そして、私達のチップを片付け終わると・・・
貧乏ウエスタンに配当が渡されようとしていました。
 

しかし!!
何を思ったのか、貧乏ウエスタンは・・・
「プレス(プラスの意味)」と大声で叫び・・・

30倍の配当をそのまま・・・
ピンゾロに上乗せ賭けしてしまったのであります。

クラップスのプレイヤーは、流れに乗ろうとする人が多く・・・
配当をそのまま上乗せして賭ける「プレス」をよく使いますが・・・

「プレス」するのは、プレイス賭けの場合に多く・・・
ピンゾロ等の一回こっきりの賭けに・・・
「プレス」する事は、珍しい部類であります。
 

「おい、おい、おい」
手持ちが、$30くらいしかない貧乏ウエスタンのくせに・・・
なぜ、$150の配当で我慢しない。

ほぼ間違いなく、数秒後には・・・
「俺は、なんて馬鹿なんだ」と自分を罵りながら・・・

一瞬だけ自分のモノになった$150のチップを見送ってるぞ。

・・・などと、自分の過去を振り返りながら・・・
心の中でアドバイスを送るのでした。
 

しかし!!
なっ、なっ、なんと!!

男は、再び、ガッツポーズをしているではないか!!

それも、クルリと1回転してからのガッツポーズである!!
 

貧乏・・・いや、もう貧乏ではないので・・・
成金ウエスタンと呼ぼう。

その成金ウエスタン以外のプレイヤーは・・・
またまた、綺麗にチップを片付けられて行く。

もちろん、私も例外ではない。

ただ、一人だけ浮かれる成金ウエスタンを・・・
少々冷めた態度ながらも・・・
周りのプレイヤーは、祝福の声を掛けておりました。

配当は、30倍なので・・・$4500である。

たったの$5が、サイコロ2回転で、$4500である。

それも、スロットマシンのように、税金を取られたりもしない。
手取り$4500である。
 

成金ウエスタンの喜びようは、半端ではなかったが・・・
それを見ていても、一円にもならない・・・
私と他のプレイヤー及びディーラーは・・・

次の勝負へ進む為に、私にサイコロを渡すのだった。

その時、成金ウエスタンは・・・
高額チップをディーラーから受け取るのに夢中で・・・
賭けには参加していませんでした。

私は、エネルギーを、成金ウエスタンに取られたのか・・・
少々無気力で、サイコロを・・・
成金ウエスタンの方に、転がしたのです。
 

すると、さっきまで有頂天だった成金ウエスタンが・・・
「ジーザス」と叫んだかと思うと・・・

立ちくらみに合ったのか、目頭を抑えながら・・・
テーブルに、もたれかかっていたのです。
 

なっ、なっ、なんと!!
またもや、ピンゾロが出ていたのです。

成金ウエスタンは、勝負から下りてしまっているので・・・
当然、ピンゾロには賭けていません。

もし、先ほどのチップを「プレス」していればと考えてしまうのか・・・

成金ウエスタンのショックは、相当なようでして・・・
ドンヨリした空気をまといながら、テーブルを後にして行ったのです。
 

・・・って、ボロ勝ちしたんだから、ノープロブレムやろ!!

あんた以外のプレイヤーは、みんな3連敗やぞ!!

3連敗なのに、サイコロを振り続ける俺の立場になってみ!!

居心地悪いったら、ありゃしない!!
・・・などと、心の中でつぶやきながら・・・
成金ウエスタンを見送っていたのであります。
 

ここで話は終わりません。

それから、数時間後、成金ウエスタンは・・・
再び、クラップスに帰って来ました。

取らぬ狸の皮算用ショックからは、完全に立ち直ったのか・・・

また、大勝ちした分で、たらふく御馳走でも食べて来たのか・・・

血色は、すこぶるよく、脂ぎっていて・・・
元気モリモリと言った感じであります。
 

そうこうしている内に、私のシューの番が来ました。

成金ウエスタンは、当然私を覚えているらしく・・・
二匹目のドジョウ狙いで、「ピンゾロ」に$5を賭けるのであります。

それを見て、モノは試しと・・・
私もピンゾロに$5を賭けてみたのであります。
 

コロコロコロ。
当然のように、「ピンゾロ」が出ました。

$150ゲットです。

成金ウエスタンは、これまた当然のごとく、「プレス」し・・・
$150を、もう一度「ピンゾロ」に賭けます。
 

私も、「プレス」と言い掛けたのですが・・・
ディーラーが、配当を手元に持って来てしまったので・・・

「まぁ、来る訳ないから、いいか」と、一般的な結論を出し・・・
チップを収納したのであります。

なお、賭けを下りると言わない限り・・・
元の賭け箇所には、チップはそのまま残ります。

つまり、手元に配当されるのは・・・
ピンゾロに賭けられている$5を引いた分であります。

よって、私は、次回もピンゾロに$5を賭けたままであります。
 

コロコロコロ。

出ました。成金ウエスタンの1回転ガッツポーズ!!

またもや「ピンゾロ」であります。

数時間前とは違って、$150の配当を2回受け取れた私ですが・・・
喜びを爆発させる、成金ウエスタンを前にしては・・・
なぜか、嬉しさも半減。

・・・って言うか、10分の1ほどになってしまい・・・
ため息がもれる始末であります。

でも、本当に泣きたいのは、ピンゾロに賭けていないプレイヤーですよね。

ひたすら、パスラインのチップをまきあげられてるんだからさ。

悪いシューターですいません。本当に申し訳ないです。
 

・・・って事で、もし、私が投げるのを見かけたら・・・
一度ピンゾロに賭けてみると良いかもしれません。

もしかしたら、成金日本人となり・・・
次のエピソードとして、掲載されるかもしれませんからね。

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