鉄拳は人生だ・前編

2009/3

・親戚の家にあった家庭用鉄拳2が初プレイ。準の10連が最強だと思っていた。準とポールと平八を使っていた。

・数年後、遊びに行った先で友人がプレイしていた鉄拳3を見る。確かPRACTICE MODEか何かでシャオのコンボを練習しているところだった。双壁掌(66WPWP)、弧月閃(9RK)、鳳凰の構え~弓歩盤肘・超遅(2WP中2WP)、10連コンボなどの流れる様なモーションに魅了された。このキャラを自在に使えたら楽しいだろうなと思った。が、背向けRK→3LP→RPLP→66WPWPのコンボが難し過ぎて、何とか出来る様になった頃には飽きてやめた。
そしてどちらかと言うとおまけで付いていたTEKKENBALLにハマった。

・また数年後、何が切っ掛けかは忘れたが友人とゲーセンで鉄拳4をプレイする。3の時練習したコンボが入らなくなっていて最初はだいぶショックだった。
でもこれに結構長い期間深くハマった。当時仲の良かった友人と今のホームである宇宙船に毎晩通った。連係を考えるのが楽しくて仕方なかった。自分なりに編み出して「最強の連係だ…」と確信したのは「雀連→振り向きしゃがパン→蒼空砲」だった。(つまり、そんなレベルだ)
ネットやら掲示板やらとは完全に無縁だったので、家庭用で連係を考えたり空コンを練習したりした。
鉄拳4の後半頃に友人がネットで鉄拳を色々と調べたらしく、シャオユウで1番強いのは『垂れ乳巌竜』という変な名前のプレイヤーだと知る。名前とは裏腹に動画を見て感動したのを覚えている。
彼は挑発を使いまくっていた。その日から真似しておれも挑発を使いまくった。そしてカウンターで技を食らいまくった。全く強くならなかった。
その後もネットで情報を漁ることに楽しさを覚えた友人は次々に様々な情報を仕入れてきた。そしてその度に彼は強くなっていった。
『フレームって考え方があって、60分の1秒が1フレーム。これでパンチの早さとかが決まってるらしい』
「へぇーみんな一律じゃないのか」
『ポールとかシャオユウは早いみたいだな。で、マードックとかは遅い』
「あー確かにそんな感じするな(笑)。で、シャオユウの左パンチはどれくらいなの?」
『えーと、確か4フレームだったな。ニーナとかポールも4フレーム。マードックは5フレームだったかな』
「ふーん。あんま変わんないんだな」
『あ、あと投げを確実に抜けられる方法も分かった』
「へーどうやんの?」
『掴まれたらまず□押して次に△押して最後に△押したまま□押す。これを掴まれてから10フレーム以内に素早くやると何でも抜けられるらしい。鉄拳はホールド入力が出来るからな。垂れ乳とかもコレやってたんじゃないの?』
「なるほどね!だからあんな抜けてたのか」

いやー…無知って恐ろしいし恥ずかしい…(*/ω\*)

・その友人とはやがてお互い忙しくなり連絡もほとんど取らなくなった(今はもう鉄拳とは無縁の生活を送っていることだろう)。
ゲーセンにも足が遠退いた頃、鉄拳と関係のない友達に『イトウって覚えてる?アイツゲーマーで鉄拳もかなり強いらしいよ』と唆される。「ハハハ。鉄拳4ならその辺のゲーマーレベルの雑兵には負けないな。じゃあ今からここに呼んでみてよ」と無駄に自信満々なおれはその時、直後に訪れる絶望感の予期すらしていなかった。

イトウとは久し振りに会った。もともと友達の友達という感じで挨拶を交わす程度の仲だ。
イトウはリュックサックを背負って現れた。おもむろにリュックサックの中から取り出したのは…そう、ゲーセンのレバーだった。それを見てその場にいたイトウとおれを除く全員が爆笑した。お前何持ってきてんだよ、と。イトウは『俺コレじゃないと出来ないんだよねー』などと平然と言っていた。
手早くプレイステーション本体にコントローラを接続し直しながら呟く。『本職はバーチャなんだけどな』『戦う前から言い訳かよ(笑)』
その頃になっておれはようやく、得体の知れない危機感を覚え始めていた。あれ…もしかしてコイツ…結構デキる系…?
取り敢えずお互い1番自信のあるキャラから、ということでおれはもちろんシャオ。イトウはリーだった。

結論から言うと、イトウは半端じゃなかった。

リーにはおろか全キャラでボロボロに負けた。1勝30敗くらいだ。唯一勝ったのが『使ったこともない』というニーナだった。それも辛勝だった。
彼のスタイルはこちらが出す技を横歩きや横移動でスカし、スカったところに右アッパーやシルバーニーを入れ、こちらが出す技をガードしたらワンツーミドルやシルバーニーなどをこちらがガードされて動けないところに入れてくるという何ともウザいスタイルだった。

※確定反撃やスカし確定という概念について知ることになるのはもっとずっと後のことです。

彼は余裕からか、途中からおれに色々と教えながら対戦してくれた。それでもプライドの無駄に高かったおれはアドバイスなどほとんど聞かず、もはや半べそ状態だった。でも背向けからしゃがみで高速で下がっていったのには素直に驚いた。懐かしいな、あのネタ(苦笑)

その後しばらく経って、彼はどうやらバーチャでかなり有名らしいということを知る。バーチャをやる人は聞いたこともあるのではないだろうか。
そう、イトウのRNはあの「イトシュン」だった。この事実はおれに少なからず自信を取り戻させた。あーだから負けたんだなー♪と…。
まったく持って現金なものである。


続く

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