鉄拳は人生だ・後編

2009/3

・忘年会シーズンも終わり年が暮れ、やがて新たな年が来て世間は正月をゆったりと過ごしている頃。
おれは1人、新年早々興奮気味で立川にいた。もちろん初めての鉄拳5をプレイする為だ。足取りは軽く、もはやスキップ寸前で、顔はニヤけて気持ち悪いことになっていたと思う。正月?何それ?新キャラ?
意気揚々と向かった先のゲーセンで、思う存分シャオと戯れた。鉄拳コーナーには正月にも関わらず人がちらほらいた。
そもそもカードなんて全く買う気はなかったし、TEKKENNETの存在もよく知らず、新技は伏鳳烈倒と流星連脚しか知らなかった。が、それだけで充分過ぎる程戦えた。お願い伏鳳烈倒はガード不能で、ぶっぱ流星連脚ヒット後の断空脚は確定だった。
そして、朝一から3時間程プレイし続けて、昼頃に一度外へ出てカイジに電話した。

「対人で8連勝した!!!」

『マジ?すげーな』

「超楽しいんだけど!」

『俺はさっきカード買っちゃった』

「ええぇぇぇ!?Σ( ̄□ ̄;)…カードはちょっと早くない??」

『今7級だよ』

「早えーーっっ!!じゃあおれも買おうかな…でもカード持っててあんま強くなかったら恥ずかしいよな…」

ちなみに、カイジは年末の時点で既にTEKKENNETにも加入していた。おれは技表を見るためだけに月300円払うなど馬鹿げていると切り捨てた(TEKKENNETの他の機能を何一つ知らなかった…)。
当時おれの認識として、カード所持者はそれだけで上級者だった。自分がカードを持つなどおこがましいとすら感じた。過去にイトシュンとカイジに心を折られたことで、鉄拳に対する態度や思考がだいぶ弱気で臆病になっていたのだろう。今思うと少々あの頃の自分が可哀相だが、面白いし分かりやす過ぎる(笑)
結局その日カードを買い、数時間やり続けて5級までいった。が、カイジは4級になっていた。この時すげー悔しかったのを覚えている(苦笑)
TEKKENNETについてもゲーセンのポスターを見て様々なことが出来ると分かり、立川からの帰り途中にはもう新規入会していた。すぐに念願の技表アプリをダウンロードし(あれよく出来てたよね)、把握していなかったシャオの技や新キャラのコマンドなども調べた。
そこに『チーム』があった。基本的に強い人は皆チームに属している印象があった。1日も早くチームを作りたかったが、「チームに入っているにも関わらず大して強くな(ry」とここでも弱気な持論を繰り広げた為、カイジとの協議の結果、2人とも2級まで上がったら自信を持ってチームを作ろうと決めた。2級のどの辺りにそこまでこだわる根拠があったのか、今となってはよく分からない。
・次の日、晴れて2人とも2級になり、チーム名について5分程熟考した末に『大乱闘鉄拳ブラザーズ』は生まれた。
RNは村上春樹の名著『ねじまき鳥クロニクル』の主人公オカダトオルの愛称から『ねじまき鳥』にした。笠原メイの様な子に『こんにちは、ねじまき鳥さん』なんて呼ばれたら素敵だなーと安易に思ったからだ。まさか数年後『ねじまきさん』という愛称でこんなにも広く呼ばれることになるとは夢にも思わなかった(苦笑)
・立川の寂れたゲーセン(今はもう潰れてしまった)に三が日から1週間程通った頃、カイジから『立川には猛者が集まるゲーセンがあるらしい』と紹介される。それが立川オスロー2号店、通称『オス2』だった。
オス2はカイジの言う通り、平均したレベルが周囲のゲーセンより群を抜いて高かった。絶えず人も多かった。
マフィさん、さばさん、アンカーさん辺りはその中でも抜けていた。うめりさんも強かった。gippyさんだけは当時からずーっと変わらずエンジョイだった(笑)
あの時代、おれは今よりピュアで人見知りで、無知で無謀な雑魚だった。オス2に半年以上ほぼ毎日通ったが、知り合いと呼べる人は1人もいなかった。声を出したことすらほとんどなかった様に思う。周り全てが敵だと認識していた。
しかし、寧ろそのことが居心地良く、楽しかった。今とは質の違う殺伐とした感じがあった。半年以上1人で闇雲に手探りでただシャオだけをプレイし続け、掲示板を覗いて色々な情報収集をしたり、KZさんのシャオサイトを画面メモして勉強したりした。
5.0も終わりに近づいた頃になってようやく確定反撃が最も重要なのだと知り、家庭用を買って全キャラのほぼ全ての技を調べて確反のある技を表にまとめた。そしてランダムに再生したそれらの技をガードする練習・確反を入れる練習にした。
現在のスカ挑打の精度は言うまでもなく経験が築き上げたものだけれど、確反の精度についてはこの時の努力が強く起因したと自負している。
それまで万年緑段(四段、五段、師範)だったが、結局最後になって拳達まで上がったところで5.0は終わった。心から満足だった。

しかし、これはまだ急成長の前兆に過ぎなかった。

5.1編へ続く

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