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無機質なのは宇宙か、人か

2/19(日)マチネ観劇
見に行った舞台の感想を好き勝手に書いています
今回も上演台本は買ってません、観た記憶のみなのでご容赦を
配信は21日夜公演のようですが、ネタバレございますので配信で初めて見る方は
ご観劇後にでもどうぞ



脚本

今回はSFものとのことで、さらに参考にされた映画は大メジャー系のたぶんシュコー、とか言うアレではなく、良作をたくさん観たと中田さんがちろっと仰ってました。
なので物語の展開は足腰がしっかりとした安定感を感じつつ、登場人物に現代的要素が入ってたり、セリフのセンテンスにキャッチコピーになりえそうな「黒い希望」(だっけ?)とか、「だって人間の記憶は消せないじゃない!」など、言葉の良さがあって、個性3、ポピュラー7みたいな安心感がありました。いつも割合が逆だったりしますし。
相変わらず出てくる登場人物はみんな実は大変で、毎回思うけど中田さんは本当に酷い人ですよね。
幸せな人全然出てこねえ。


演出

佐藤さんの演出は多分初めて拝見するのですが、この脚本と小劇場の良さを生かして、大変、絵作りと段取りが良かったと思います。もうこれだけでもチケット¥4500の価値ありました。多分映像だけしか知らないとか、大きすぎる劇場だと、この演出出来ないんですよね。

暗転は4回かな?どれも15秒くらい。場面転換の多さからするとこの少なさで作れるのは結構すごくて、上演時間105分も本当にありがたくて、役者さんたちも手慣れなのが良くわかる上手さでした。
記憶を思い出す、そこの光景を演じる(≡思い出してる)、現実に戻る、というシーンがストーリー上、何度か出てくるので、照明が最初にちょっと入ったらあとは芝居で観客を連れていってくれるのが、基礎力高くて良かった。
これがお芝居で見せるのが難しい場合は、常にこのシーンは光の色が緑、とか、背景のセット都度変えるとか、暗転を毎回挟むとかになっちゃう。

物語上、1人の人にフォーカスが当たるシーン、その時にメインになる人が話すシーンなどは、演出と役者で役作りの練り上げがあったかは気になりますが、舞台の使い方はとても良かった。


その他役者さんなど箇条書き

  • R2-D2みたいなやつかと思ったら掃除機、という最初のつかみ、観客とは勝手なもので、あの形が出てきたら「あーR2-D2的お手伝いね、はいはい」とか先取りしてっちゃうもんなんです。
    しかも今回はこの掃除機、なんと2回も期待を裏切るという仕事をやってのけており、絶妙な作りをしてくれた小道具班さんを褒めたい。マジでえらい。開閉式だし、お父さん入ってるし。観た回ウケてました。

  • 最初、船員たちの芝居がなんだかやたらコミカルだったり、芝居がかってる、のにも理由があったのがよくわかります。データがそうだからなんでしょうね。なので脱出選抜で連れて行かれる人間の皆さんは普段着にみえる、こってりしてないナチュラルなお芝居が映えます。絶妙な差ではありましたが、よかった。
    佐野さんちょい固いか....?と思ったりもしましたが、ナチュラルなお芝居苦手ではないはずなので、感覚でそう見えただけかも。

  • 次の話の展開する場所が、衝突した船の生き残りである別府さんから、あなたたちもロボットですよ?と告げられる所。
    もう、こういうシーン大好き。いいよねー、これ小劇場じゃないと観れないと思う。
    出来ていたと思いますが、芝居精度を常に上げて欲しい所だと思いました。それも力まずに。毎回新鮮に。
    別府さんが一生懸命話す言葉を、ウソだと思わずに聞く気になる何か、が芝居の作りどころだと思います。
    なので別府さんはパワーよりも説得力の種類を。聞くお三方は違和感と動揺を感じながら、でもなんか、前にこんなことあったな....と、何かが腑に落ちてくる、三者三様の動揺が、味わいのある空間になって、お芝居のうまさが伝わる所かなと思いました。

  • 中山さんのくるぶし具合は見てるお客様が心配してくださってたら大成功。八百屋舞台じゃないし、痛めずに上手くグネって見えるようにされてたと思います(痛めてないことを祈る)

  • 斉藤さん前より身体の使い方良かったと思いました。あんまりくねくねするようなシーンなかったからかもだけどw

  • 脚本でいうと、ここまでの間に、観客に楽になってもらう、笑ってもらったり、真面目過ぎない芝居なんだな、と思ってもらうのが大事かなと思います。ここまでの間に緩んでもらうと、後でシリアスなシーンが刺さるかと。

  • 転換や、前袖からハケて奥袖から入ったら、そこはもう違う場所、の使い方、大変よかった。

  • 暗転は能動的な、効果的な暗転、があってもいいかもと思いました。宇宙空間は暗いとこも多そうです。

  • 脱出選抜が決まる、研究所のシーン、野口さんのような公務員いそーw 説明が立板に水、という感じの解像度がよかった

  • お父さんの掃除機。音響さんのチョイスが優勝。お風呂が沸いてそうではあるけど家電ならもう優勝です。

  • 役作りについては後述もしますが、多分お父さんの役柄は、しづマさんご本人に近いお人柄なのかなと思いますが、誠実さ一本で掃除機になったように見えたので、やっぱり同乗したい、という押し付けがましさ、エゴみたいなのがどこかにあるといいのかもと思いました。できれば、そんなにかっこよく見えない方向で。

  • コックピットで集合しての戦闘シーン、ここだけは劇小が豊洲360°シアターになる時間、どんなにBGMや攻撃音がデカくてもセリフが聞こえてほしいシーンで、遊佐っちと石塚さんの声が通っててよかったです。適任でした。「ダメ間に合わない!」は役者になったら一度は言いたいセリフ。

  • 平塚さんが息子だ、とわかる決定的なシーンはなくて、なんとなくこの関係性は母子なのかな...?旦那さんがあの人?ほうほう、という感じで理解してました。
    大変悲しい役柄の平塚さんでしたが、平塚さんいつも役作りが可愛いですね。可愛く見えました。
    飛行船でそのまま育った子供っぽさとか、船内での関係性のために身につけた処世術とかを反映していたのかな。
    あれ、子供の時に乗船して周りは特に気にしなかったのかな?なんかその辺聞き逃した。
    多分短絡的だったり、浅はかだったり、ニートみたいな人?の種類をたくさん知って作ると良さそうと思いました。変なとこで怒るとか。全部人にやってもらおうとするとか。あと栄養価がダメそうだから、肌は汚そう。

  • みんな大好きやよい軒メニューでバケモノになった店長を取り戻すシーン、どうして大統領さんは小林さんをいつもバケモノにするんでしょうか。不思議ですね。
    最初の人間だった時、ナチュラルなお芝居が良ければ良いほど、バケモノ時が映えますし、今回小林さんの担当領域がドロドロなのかなと思いました。今回女優さんでいうと小林さんと渡辺さんがドロドロ領域ご担当かなと思います。
    人間時には気のいい店長だけど、髪も巻いて意識もして、でも一緒に乗船できないとなったら何かを抱えてるような、バケモノ時はそれが溢れて欲しいような。
    呪いがメニューで解けていくところ、芝居のしどころだと思うので(無駄に)、ナタリーポートマンばりにやって欲しい所でした。そんな芝居出てないですけどねナタリーポートマンは。客席はウケてる時間ですが、丁寧に解けていく段階の芝居を見たかったです。

  • 山本さんの最後のシーン。山本さんの存在感で埋め尽くされるシーンですが、このシーンの調理と方向性は、遊佐っち含む役者さんお二人と演出家さんで話し合ったのかは気になりました。
    観客としてはここは恐怖のどん底に連れて行って欲しいかなと思いました。みんなヘトヘトになるまで頑張ったあと、「惑星なんてない」という独白は、大変絶望的です。言う気になった訳があると思いますが、多分懺悔では言わなそうだよな...とも思うけど、ここまで頑張ったんだよ俺も、みたいな無責任さだったら、役者さん2人で協力して「困ったね」「どうしようね」みたいなシーンになったりするかもです。
    正直に言ったから許してくれ、でもなく、言ったけど何もできないから一緒に神に祈ろう、に聞こえたけど、そちらよりかは彼が神に近づいてしまうかもしれないシーンなのかな?と感じました。支配を予感させる「入信します?」とか。
    遊佐っちの、聴く側の芝居の引き出しの多さ、を見たいところでもありました。

役者さんのMVPは気のいいおっちゃんなんだろうな、と思ったら本当にそんな役でやってくれた音野さんと、母のエゴをちゃんと出していた渡辺さんに。お芝居でお母さんなんだなとわかったので。
全体的に美男美女で演じる方が多かったですが、もし役者さんのお気持ちが許してくれるなら、もっと汚くブサイクな領域をやってくれると、整っていない人間のおかしみを見れた気がするので見てる方は楽しいです。


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