上阪徹『成城石井はなぜ安くないのに選ばれるのか?』(あさ出版、2014)

 一読して感じたのは、人を大切にするということだ。

 外部の資本が入ってきた時に、当時の原社長やほかの従業員の人は、成城石井のやり方でこれからもやっていきたいと考えたそうだ。小売業に関わらず、かかる経費を安く済ませようとしたら、人件費を削り、無駄なことはせずに効率化し、店舗運営していけばいい。けれども、そうはしなかった。レジでは人をたくさん配置して、人がいないということにならないようにする。そういった工夫もほかの店には見られないところだ。

 店に人がいないというのは、ここ数年で当たり前の風景になりつつある。自動レジや自動貸し出し機など、有料・無料の施設問わず、普及してきている。しかしながら、お店に人と話をしに来ているのだとしたら、どうだろうか。人が少なければ、お客さんと話す余裕も無いし、何より忙しそうにしている店員ほど、話しかけにくいものはない。そう考えると、時代の流れとは逆行しているが、今の時代の人が買い物に求めている流れには沿っていると言える。

 安いものを求めたいのはもちろんだが、安くても悪かったら買わないという流れがある。それは、本書の中でも語られている。それに加えて、良いものを求める気持ちは、年収に関わらないという部分も指摘していた。

 成城石井のレジを見てみると、レジを打つ人以外に、袋詰をしている人がいる。その袋詰めの人は、人の多いレジや多く買い物をしているお客の列の台に行って、品物を詰めている。2台のレジを行ったり来たりしながら、テープを張ったり、空気を入れながら、果物を小さな袋に入れている。

 成城石井では、アルバイトやパートであっても、入社時に半日の研修を受けるそうだ。そこで、接客の仕方や袋の詰め方などを習うようだ。しかも、ビデオを見ていれば済むというものではなく、ロールプレイやディスカッションもするそうだ。こんなに研修にお金をかけているところも無いだろう。それでも、行うのは成城石井の理念を浸透させようとしているからだ。

 本書を読んだら、早速お店に行きたくなった。これも、成城石井が持つ魅力の一つなのだろう。

 

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