こころに絆創膏

坂道で転んだ。星野源を聴きながら、少し遠回りして夕暮れの路地を下っていた途中だった。両膝から下をザーッと擦りむいた。久しぶりに派手にやっちゃった…こういうときオトナってどんな顔すればいいんだっけ?と思いつつ、あまりに痛くて道端にうずくまる。傷口は未だにニガテだ。ダラダラと止まらない血にオロオロしてしまう。

すると、一度わたしを通り過ぎて行ったおばちゃんが、道を引き返して近づいてきた。幼い子どもに話しかけるような口調で「大丈夫?転んじゃったの?」と声をかけて、絆創膏を2枚くれる。その種類のやさしさは何だかとても懐かしい感じがして、でも恥ずかしくて、わたしはまたオロオロしてしまった。

転ぶとこんなに痛いんだ、こんなに血が出るんだ、そして、こんなに心配されることなんだ—。「どんなに痛くても何食わぬ顔で立ちあがり歩き出す」のが正解だと思ってきたから、ちょっと衝撃だった。痛いときは痛がる、血が出たら止まるのを待つ、困ったときは人にやさしくしてもらう。これでいいのだ。

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