図3

クリーム玄米ブラン

高校三年生の時、大学受験に失敗した私は、19歳の一年間を浪人生として過ごした。 朝から授業を受け、自習室で20時まで勉強。家に帰ってからは単語帳の類しか手を付けない、というルールを決めた。家でやっても効率が上がらないのは高校時代に実証済みだったからだ。その代わり、ほとんど欠かさず毎日予備校に通った。家ではまったく勉強をしなかったので、家族には本当にこいつ大丈夫なのか…と思われていたみたいだけれど、このやり方が功を奏したのか、一年後には無事志望校合格を掴みとることが出来た。

 わたしが予備校時代に痛感したのは、健全な思考をするにはまず健全な身体がいる、ということだった。 そこで睡眠と食事を変えた。

睡眠に関しては、思考錯誤の末、NHKのEテレで2355(23時55分からやっている5分間の番組。おもしろい)を見た後すぐに布団に入り、ラジオでJET STREAMを聴きながら眠りにつき(大沢たかおの声がびっくりするほど安眠を誘う)、翌朝は同じくEテレの0655(6時55分からはじまる5分間の番組。これまたおもしろい)を見れるように起床するという生活パターンに行き着いた。

 食事に関しては、お腹がいっぱいになるとどうしても眠くなってしまうので、昼間に食べる量を減らした。朝食も昼食もかなり軽めに済ませ、とにかく20時まで自習室で粘り、空腹の限界ぎりぎりで帰宅し、夕食にありつく…このパターンが一番勉強に集中できたのだ。そんな中でマイルールになったのが、「昼食はクリーム玄米ブラン二枚」だった。「○○な味わいのクリームを、玄米と小麦ブランで練りこみザクザク香ばしく焼き上げた生地でサンドしました」…味の種類も豊富で、そこそこ満腹感もある。受験本番に近づくにつれ、食べる時間も惜しくなるほど逼迫してきたわたしにはうってつけだった。稀に耐えがたい空腹に襲われ吉野家でひとり牛丼をかきこむ日もあったけど、基本的に来る日も来る日もクリーム玄米ブランを食べ続けていた。

 こんな生活を続けた浪人時代だが、実は結構気に入っている。自分の身体を完全に自分のコントロール下に置くことで、最大限の頑張りを引き出すことが出来たからだ。好きな時に寝て、好きな時に起きて、ゆっくり美味しいご飯が食べれる、お酒も飲める…大学生活はなんて幸せなんだろう。でも、あの頃を思い出すとちょっと恵まれ過ぎている気がする。たまには少し自分を追いつめなくては…。

というわけで、今週の私の昼食はクリーム玄米ブラン2枚と相成った。飽食は想像力を鈍らせるのだろうか、思った通り、ちょっと食べる量を減らした方が調子がいい。しばらく続けてみよう。ところで残念なことがひとつ。現在午前4時を回っている。ぜひとも睡眠時間も正したいところだ。

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