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九階の窓辺

西日の差す九階の窓辺で、これを書いている。

窓からの眺めは申し分ないのだけれど、ガラスにはおびただしい数の小さな虫の死骸が貼りついていてぎくりとする。目の前には4台のパソコンとプリンター、それを取り囲むようにあるのは、硬くて重たい本たち。長年の勤めにより草臥れ互いに寄りかかる図書館のそれらとは違って、古い本だが傷みは少なく自らの力で凛と本棚に整列している。中には永遠の眠りにつきし哲学者たちの生涯を尽した思考が詰まっている。背後にある分厚い辞書の棚が地震で崩れて脳天に突き刺さったらやばいな、と冷や汗を浮かべていると、それを見てデッサンの骸骨がカレンダーの中で笑っている。

この空間、生のにおいが妙に薄い。

でもなぜか、居心地がいい。

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