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2023.1.21NovelCoreワンマンライブ-Untitled-所感「22歳の若者が挑む表現の幅」

※セトリの詳細は他の方のレポートを参照してください。
※あくまで個人の感想ですので他の方の感じ方を否定するものではありません。

2023年初めてのライブは豊洲PITで行われたNovelCoreのワンマンライブでした。

“人類滅亡後の東京” をコンセプトに決行される本公演。この時代を共に生きる者達へ、強く問いかけ、その “心の叫び” を音楽を以て体現する。
全国ツアーを経てビルドアップしたバンド、新たな要素となるダンサー、事実上MCパートが存在しない構成 / 演出。
過去最大スケールでのワンマンライブ、絶対に見逃すな。
公式ホームページより

こうした事前告知のインパクトもあり、多くのOUTER(Novel Coreのファンネーム)がチケット争奪戦に挑み激戦となりましたが、なんとか当選にこぎつけ、遠征して参加することになりました。友人や母はチケットが取れず、彼女らの想いもしっかりと背負って参加しようと心に決めると同時に、2022年のNo Pressureツアーの福岡、大阪公演が素晴らしかったので、今度はどんなものを見せてくれるのだろうかとワクワクして眠れず、下着を後ろ前に履いて出かけるというミスを犯すほど、かなり情緒は乱れていました。

その一方で、No Pressureツアーのパフォーマンスの仕上がりがあまりに素晴らしかったので、変な演出変更などせず、あれを一つの到達点として、豊洲でリリースしたてのEP”iCoN”の収録曲を加えて発展させても良かったのになぁ とか、変にストーリーや茶番劇(失礼)が添加されることで、Novel Coreとコアバンドの世界観が邪魔されることにならないといいけど といった不安も大きく、手放しで楽しみなだけではなかったように思います。(好きすぎて、その好きなものが変になってほしくないと願う気持ちですね)
また直前で、声出しOKの発信もあり、黄色い声で雰囲気ぶち壊しみたいになったらやだなぁなんてことも若干懸念していました。

そして迎えた当日。タワレコ渋谷店での衣装展示やパネル展を楽しみ、会場前に設置されたキービジュアルのアートパネル前で友人にそそのかされて開脚して撮影をした後に、ありきたりな表現ですが期待と不安に胸を膨らませて会場に入りました。会場はすでに熱気に包まれていて、薄手のシャツワンピース(正確には、理性を失ってポチってしまった、No Pressureツアー大阪会場でNovelCoreが着用していた36200円(泣)のロングシャツ)でも暑いぐらいでした。

公演はまず舞台を覆う大きな白い布をスクリーンとして、映像からスタートしました。世界が荒廃し都市が陥落し人々の希望が失われる…その世界に音楽を届けに降り立った という内容でした。
そこで初めて気づいたんです。あ、これはただの舞台用の「架空の設定」ではなく、これまで戦争や疫病や環境破壊で苦しんできた人類の過去、そして今コロナウイルスや戦争でまた世界中の人の幸せや生活が脅かされている現在、さらにこれから起こりうる先の見えない未来のことなんだと。
どんな困難な時代、どんな苦しい時、何もかも無くなってしまって絶望する場面でも、音楽ができること、むしろ音楽にしかできないことが確かにあって、そこにアーティストとしてコミットしていきたいんだと。この豊洲PITがツアーのオーラスではなく、単独公演である意味もここにあるんだなと思いました。そんな大切な決意表明を何度もしませんよね。気づいた瞬間にもう泣いてました(早い)。

スクリーンになっていた幕が取り払われて登場した(動いていないのに降り立った感じが秀逸。セットも作り込まれていました)Novel Coreは、決意を感じさせるまっすぐな視線で顔つきが何とも精悍です。前回のNo Pressureツアーでも、自分の寂しさを歌うことから一歩抜け出して、人の寂しさに寄り添うフェーズに入ったんだなと強く感じましたが、この日はまたそこから一歩踏み出して、プロとして人に気持ちを届ける側の覚悟を感じました。

iCoN収録曲はじめ、事前告知の通りMC無しでどんどん曲がすすみます。「設定」の中で寸劇やナレが入ることもなく、先ほどのテーマがまさに音楽を通してだけ伝わってきます。「言葉はいらねぇ、この音楽で理解してくれ」と言わんばかり。バンドアレンジがまたものすごかった!今回からキーボードも加わり、より一層厚みをましていました。曲と曲をオリジナルな編曲でつなぎ、「あれ?新曲かな?」と思ったらきちんとリリース済みのあの曲につながる といったことが何度もありました。曲の新たな魅力を発見できますし、ああ、この曲とこの曲は確かにテーマがつながっているなと感じ取ることもできました。でもこれは結局、ライブごとに曲をフルリニューアルしていることに近いので、NovelCoreはじめコアバンドの並々ならぬ熱意と努力とセッションの時間がなければ成り立たないと思います。脱帽です。だから遠征大変でも現場に足を運びたくなるんですよね。

そしてなんと言っても今回本格的な披露が初めてだったダンス!!BE:FIRSTのSOTAなど、ダンスを得意とするアーティストのインタビューにも度々出てくるように、ダンスは音に合わせて身体を動かしているだけではなくて、歌や楽器演奏と同じく音楽を表現する手段の一つ。今回の公演でもダンサーが加わって、音楽を表現してくれることで、舞台が華やかになるだけではなく、聴こえてくる声、音に加えて視覚でも音楽を「観る」ことができ、曲の世界観が広がって行きました。ダンスレッスンをなかなかできていないと言っていたNovelCore自身も、要所要所でダンスを披露し、それ以外の部分でもこれまでにないほど身体を音楽に乗せて動かし、それが本当に楽しそうで生き生きとしていて見ているだけで自然に身体が動き出しました。まだまだ「ダンスが上手い人のダンス」までのレベルではないですが、もともとリズム感と運動神経がいいんでしょうね、「やっと踊っている」みたいな印象ではなくちゃんとカッコよかったです。「世界を踊らせる」が今年のテーマのBMSGの一員として申し分ない初披露だったと思います。

照明バキバキ、ダンスノリノリ、ゴリゴリ全部盛りのセトリが続いた後、一転して引き算のステージが始まり、ギターのクマさんと語り合うように座った状態で、I THINK I GUESSなどをアコースティックアレンジした数曲が歌い上げられたときにさらにまた感動の波がやってきました。もともとNovelCoreはラップだけでなく歌唱が上手いアーティストだと思っていましたが、「歌、うまっ!!!」と思わず言いたくなるくらい、もともと上手い歌がさらに上手くなっていました。No Pressureツアーで会場ごとにカバー曲にトライするという無謀なチャレンジをやりきり、苦手な音域や音ののせ方からも逃げずに歌った、いわば修行の成果が出ているなと感じました。これでボイトレ受けていない(古い情報なのでもしかしたら今は受けているかもしれませんが)なんて嘘でしょ?!単に音程やリズムが合っているという技術的な話ではなく、歌に気持ちを乗せて届ける準備が完璧に整ったんだな、だからMCが要らなくなったんだなと思いました。いや、もしかしたらあえてMCを外すことで、音楽で届けるしかない状況を自ら作り追い込んだのかもしれませんね。そのくらいやりかねない。

そして、EVE。キーボードの伴奏だけでこちらもフルアレンジで演奏されたのですが、この伴奏でどっから音とるんだというようなオシャレかつ難しい構成で、新曲だけでなく前の曲もさらに磨いてしまう姿勢とスキルに驚きました。ちょっとだけレトロ感があった(ごめんなさい)EVEが、原曲の良さはそのままにスタイリッシュに生まれ変わっていました。

公演中、2回休憩と着替えのためNovelCoreがはけるタイミングがあったのですが、そこもバンドメンバーが輝くゴリゴリの演奏と、ダンサーが今回の世界観を身体的に表現するパフォーマンスで埋められ、NovelCoreがいない空間でもチームコアが世界観を守りながら自分の表現でしっかりと気持ちを届けるのだという気迫が伝わってきて、私たちは一瞬も休めませんでした(笑)。
しかしあの短い休憩を挟んだだけで、ダンスもしながらよく歌い切ったなと思います。

声出しについても、最初の登場と最後の武道館発表以外で懸念していた黄色い声は無く、彼が作る世界観をOUTER全体でしっかりと守っていました。OUTERをもっと信じなければいけませんでしたね、反省。なぜアーティストが声出しにこだわるのか、声出しがないライブに慣れていた私には実はあまりピンと来ていなかったのですが、実際に気迫溢れる素晴らしいパフォーマンスを見た時に「おおー!」っと感嘆の声をあげたり、一緒に歌ったり、「ありがとう」「おめでとう」を伝えたり、気持ちを受け取るだけではなく気持ちを返すことができるのは思っていた以上に喜びを感じましたし、何より命を削るように気持ちを届けたいと思っているアーティストからしたら、それが確かに届いているのだという手応えが得られるというのは、何にも変えられない特別なことなのだと強く思いました。いつも「この曲のここで声を出せたら気持ちいいだろうな」と思っていたところで声を出せて、会場の皆でNovelCoreに気持ちを届けるんだという気持ち、あの時間確かに私たちは一つでした。

Untitledからのジェンガは反則でした。Untitledは今回のライブのタイトルでもあり、テーマがまさに世界が終わる日にもこうして歌を歌っていたいという歌なのですが、この曲からこの日の企画が生まれたのか、この日の企画があったからこの曲が生まれたのか、どちらなのか気になるところですね。個人的には前者かなと思っています。一つの曲から自分が本当にやりたいこと、伝えたいことが見えてきて、それを一つの舞台として作り上げてみようという野心が生まれたのかなと。
ジェンガはTwitterにもつぶやいたのですが、さまざまな立場で苦しみや息苦しさ、不安を抱えている一人ひとりが「自分のために歌ってくれているのではないか」と感じられるような、不思議な包容力を持った曲だなと改めて感じました。生コーラスでもぜひ聴いてみたいですね。

ちなみにNovelCoreのライブでは必ず泣いてしまう私なので、専用のリムーバーがなければ落ちない強力なウォータープルーフのマスカラをつけていったのですが、冒頭からたびたび号泣しているのに加えて、最終兵器・ジェンガによってマスカラ以外のアイメイクが全て落ちてしまい、結局意味があったのかどうかはわからない状態に。もうタトゥーメイクにするしかないか?!

全ての演奏が終了し、NovelCoreが感謝の気持ちを語りながら泣いていました。この日を迎えるまでの想像を絶する大変な準備と努力が成功に結びついて安心したのと、これまでの道のりを経て、SKY-HIのゲストとして有観客の前に立った豊洲PITをワンマンで満席にし、日本武道館公演決定を全てのOUTERの前で発表できる、感無量になるなというほうが無理でしょう。

「始まりの歌を歌うぜ」からのSOBER ROCKで最高潮に。オッオッオーオオーと歌うところを私たちが歌わせてもらって、歌でおめでとう、ありがとうを伝えたところでSKY-HI登場。ちょっとこの辺りから息ができないくらい気持ちが昂ってよく覚えていません。この曲が生まれた時は本当に2人きりで、BMSGや NovelCoreが何者になるのか何を成し遂げられるのか何も見えていない状態でした。「お前の夢は俺の夢」のパートは必ずNovel Coreの方を見て歌うSKY-HI、2人の強い絆を感じます。NovelCoreは自立して自分のやることを決めて企画する人なので、あまり「事務所の色」が見えないアーティストなのですが、SKY-HIは全てをくれる人、惜しみなく全部教えてくれるとインタビューでNovelCoreが語っていたように、わたしたちの見えないところでちゃんと繋がっているのだなと思うと胸が熱くなりました。
私はこの日上手(観客から見て右側)前方の端の方にいたのですが、最後舞台袖にはけるときにNovelCoreがSKY-HIにハグしに行っていてもうエモさが渋滞していました。

終わった後は皆放心状態で席に座っていて、会場から「規制退場などはありません、清掃がありますのですぐお帰りください」とアナウンスがあってもなかなか「帰る」という頭に切り替わらなかった人は私だけではなかったようです。

まだ22歳になったばかりの若者が、ここまでの感動を生むステージを作り上げたことに改めて驚くとともに、「これは見つかってしまうな」と感じました。これまでも、彼の楽曲やラップや歌唱は素晴らしいもので、そこに彼の性格や経歴、MCでのメッセージ性、OUTERへの寄り添い方が加わって総合してNovelCoreの魅力を形成していたわけですが、その「音楽以外」の部分はフェスやYouTubeなどで偶然彼を目にする人には伝わりません。しかし今回、NovelCoreは音楽だけで伝えることについてチャレンジして、照明、バンド、ダンス、映像などあらゆる手段を駆使して表現の幅をグンと広げてきました。しかもそれは、まだまだ伸び代を持った、ファーストステップのクオリティが非常に高いしオリジナリティもある。「誰々みたいだね」と表現できないので、一度魅力を感じてしまったら逃げられません。
今年一年かけて、武道館に向けておそらくさまざまなアウェイに飛び込んで、初見の人たちに言葉ではなく音楽をぶつけていく、それを受け止めた人が1人、また1人とわたしたちの輪の中に入ってくる、そんな未来が見えた節目が見えた1日でした。

これから新規の人たちがたくさん合流してくると思いますが、私たちOUTERはNovelCoreがめざす「今の距離感のまま武道館もドームも行く」夢を一緒に見るために、ライト層や興味本位の「にわかファン」もあたたかく優しく受け入れていきたいですね。曲だけ知ってるし聴いたりするけどどんな人なのかよく知らないしライブも行かない みたいな人が一定数いるくらい裾野が広いアーティストにならないと、ドームまでは行けませんから。

NovelCoreはもともとすごく繊細で、傷ついても心を武装することなくありのままの自分で勝負する人だと思います。今は面白くてワクワクしながら音楽の幅を広げることを楽しんでいると思いますが、その中で厳しい評価にさらされたり心無いディスりを受けたりして、行き詰まりを感じたり落ち込んだりすることも出てくるでしょう。そんな時に、傷ついた彼を安心させられるような、心の拠り所になれるようなファンであり続けられるかどうかは大きな分岐点になると思います。距離が近いからこそ彼の急速な成長に置いていかれないようにしたいな、私たちも今よりさらに成長しなければいけないなと、決意を新たにした夜でした。

昨年のNo Pressureツアーの所感はこちら↓

1stワンマンレポはこちら↓

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