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PE (Practical English) 合格者割合の推移 [2021~2024年度 横浜市立大学]

このnoteは、新入学生における、横浜市立大学の全学部の必修科目であるPractical English(PE)の単位認定者(免除者)の割合の変化を2021年度から2024年度にかけて集計した記録です。


Practical Englishとは?

横浜市立大学への受験を考えている方や他大学の方々もこのnoteを読まれていると思うので、Practical Englishについて簡単に説明します。
既にご存知の方は「合格者割合」の項まで読み飛ばしてください。上の目次からジャンプできます。

Practical Englishとは、横浜市立大学(以下、横市)で独自に行われている英語を学ぶ講義です。講義はすべて英語で行われます。
週3回、3単位の講義で、全学部の必修科目です。1年前期から始まります。
略称はPEです。横市ではPEと言えば、普通は体育(Physical Education)などではなく、このPractical Englishの事を指します。ここでも以降はPEと表記します。
横市の公式ホームページでは、PEについて以下のように記載されています。

プラクティカル・イングリッシュの目的は、学生の実践的な英語力を、リベラルアーツを学ぶために必要なレベルまで引き上げることです。このクラスでの授業はすべて英語で行われ、学生は英語を使うこと、英語で学ぶことを修得します。そして4つの基本的なスキル(読む・書く・話す・聞く)を使いながら授業を進め、3年次に進級する最低達成水準として、TOEFL-ITP 500点という基準スコアを設定しています。

横浜市立大学 Practical English, 2024/03/09閲覧,
https://www.yokohama-cu.ac.jp/academics/core/pe/index.html

PEの難しさ

PEの単位を取得するためには、講義を受けた上で、TOEICなどの特定の英語資格で基準点に達する必要があります。
英語資格の基準点は以下の通りです。

  • 横市内で行われるTOEFL-ITPで500点以上

  • TOEFL-iBT(インターネット版) 61点以上

  • IELTS(アカデミック・モジュール) 5.0以上

  • TOEIC L&R 600点以上

  • 実用英語技能検定(英検) 準1級以上

この基準点はかなり厳しい基準です。個人的には、全員に要求するレベルとしては高すぎると思っています。

PEは必修科目であり、合格するまでは毎期履修が必須です。週3回の対面講義を受け(講義を欠席しすぎても落単)、試験を受けることになります。PE合格は3年次への進級要件なので、2年後期の終了時点で合格できなければ留年が確定します。私の同級生(だった人)にもPEによる留年者がいます。

また、授業が週3回と多く、1年次ではこの3回の講義が午前中の1,2限に講義が行われます。朝が苦手で遅刻や欠席を繰り返してしまい、出席日数が足りず受験資格すら得られなかった、という人もいます。

横市ナビ(大学内の非公認団体)の以下の記事で、PEについて詳しく記述されています。PEについて知りたい方、特に横浜市立大学への受験を考えている受験生の方々は参考にしてみてください。

ここからが本題です。
横市では、例年4月1日に新入生全員が学内でTOEFL-ITPを受験します。このTOEFL-ITPで500点以上を取れた新入生は、PEの講義が免除されます。講義を一切受けずにPEの単位(3単位)が取得できるという事です。
また、特定の英語資格で基準点に達している場合も、申請を行えば同様にPEの講義が免除されます。基準点は先ほど挙げたものと同じです。

入学時点でこれらの基準を満たせた新入生にとっては、PEは何もせずに(?)3単位貰えるだけの授業です。楽な、というよりも存在感の無い講義という印象を持っている人もいます。PE合格に苦戦している学生もいる一方で、PEへの印象は人によって大きく異なると思います。

では、PEの講義を受けずに免除できる新入生はどの位いるのでしょうか?

調査方法

PE合格者割合のデータを示す前に、調査方法を簡単に紹介しておきます。

大学構内の掲示板に掲示されていたPractical English合格者一覧の学籍番号を数え上げて集計しました。

  1. 掲示されている合格者一覧の紙を撮影

  2. Adobe ScanによるOCRやiPhoneの写真アプリの文字認識機能を使用して、学籍番号をテキストデータ化

  3. 文字認識が間違っていないかを確認してExcelに貼り付け

  4. COUNTIFS関数で学籍番号の数を学部・学科別に数え上げる

  5. 数え上げた合格者数を入学者数で割って合格者割合を算出

学籍番号と学部・学科の関係はYCU Campus Guide Book 2023 p.29に記載されています。

https://www.yokohama-cu.ac.jp/students/dr3e640000002bbs-att/YCUCampusGuideBook2023.pdf

各年度の入学者数はYCU受験生ポータルより引用しています。

この調査を2021年度から2024年度まで4年間行い、各年度の学科別のPE合格者割合を集計しました。

合格者割合

ようやく本題に入れます。
2024年度から2021年度に遡る形式で記述します。医学部は医学科と看護学科で分け、それ以外は学部別で示しています。カッコ内は合格者数(人)/入学者数(人)を示しています。

2024年度

2024年度入学生 Practical English合格者割合
全体: 41% (400/987)
国際教養学部: 47% (141/302)
国際商学部: 34% (99/287)
理学部: 21% (27/129)
医学部医学科: 96% (89/93)
医学部看護学科: 25% (27/109)
データサイエンス学部: 25% (17/67)

2023年度

2023年度入学生 Practical English合格者割合 全体: 44% (432/981) 国際教養学部: 53% (159/300) 国際商学部: 34% (101/296) 理学部: 24% (32/132) 医学部医学科: 96% (86/90) 医学部看護学科: 27% (27/100) データサイエンス学部: 43% (27/63)

2023年度入学生 Practical English合格者割合
全体: 44% (432/981)
国際教養学部: 53% (159/300)
国際商学部: 34% (101/296)
理学部: 24% (32/132)
医学部医学科: 96% (86/90)
医学部看護学科: 27% (27/100)
データサイエンス学部: 43% (27/63)

2022年度

2022年度入学生 Practical English合格者割合 全体: 45% (439/973) 国際教養学部: 52% (151/291) 国際商学部: 35% (101/287)理学部: 28% (36/127) 医学部医学科: 100% (91/91) 医学部看護学科: 36% (40/110) データサイエンス学部: 30% (20/67)

2022年度入学生 Practical English合格者割合
全体: 45% (439/973)
国際教養学部: 52% (151/291)
国際商学部: 35% (101/287)
理学部: 28% (36/127)
医学部医学科: 100% (91/91)
医学部看護学科: 36% (40/110)
データサイエンス学部: 30% (20/67)

2021年度

2021年度入学生 Practical English合格者割合 全体: 49% (464/943) 国際教養学部: 60% (174/288) 国際商学部: 38% (104/273) 理学部: 36% (44/123) 医学部医学科: 97% (87/90) 医学部看護学科: 35% (37/106) データサイエンス学部: 29% (18/63)

2021年度入学生 Practical English合格者割合
全体: 49% (464/943)
国際教養学部: 60% (174/288)
国際商学部: 38% (104/273)
理学部: 36% (44/123)
医学部医学科: 97% (87/90)
医学部看護学科: 35% (37/106)
データサイエンス学部: 29% (18/63)

推移

サムネイルになっているグラフです

入学生 Practical English合格者割合推移 2021→2022→2023→2024年度
全体: 49%→45%→44%→41%
国際教養学部: 60%→52%→53%→47%
国際商学部: 38%→35%→34%→34%
理学部: 36%→28%→24%→21%
医学部医学科: 97%→100%→96%→96%
医学部看護学科: 35%→36%→27%→25%
データサイエンス学部: 29%→30%→43%→25%

考察

学部・学科による違い

まず、医学科の合格者割合の高さが目立ちます。2022年度は100%(全員が合格)で、他の年度も100%に近い合格率です。
他大学の医学部と同じく受験生のレベルが非常に高く、PE合格レベルに達しない人は医学科の入試を突破できないと考えられます。医学科に合格できた人は、PEの心配はしなくて良さそうです。
ただし、医学部ではPEを前提科目とした上位の英語講義が必修なので、英語講義は全員受講します。余談ですが、医学科と看護学科は2年次からは他学部とキャンパスが違うので、なんとなく距離感があります。個人的には実質別大学という認識があります。

次に合格者割合が高いのは国際教養学部で、2024年度は47%でした。その次は国際商学部、理学部、データサイエンス学部、看護学科が同じくらいの合格率で、20%, 30%台でした。
国際教養学部は国際文化や国際社会について学ぶクラスターがあるので、他学部よりも英語が得意な受験生が集まる傾向にあると思います。

年度による違い

年度による違いはそれぼどありませんが、データサイエンス学部は、2023年度の割合が43%と2021, 2022年度と比べて1.5倍近く高くなっています。これには入試科目の変更が影響したと考えられます。
2023年度から、データサイエンス学部は二次試験にて英語が課されるようになりました。
TOEFL-ITP500点には共通テストより高い語彙力が求められるので、共通テストの英語ができてもTOEFLができない、という人は多かったはずですが、二次試験の英語は共通テストよりも語彙のレベルが高い上、共通テストではあまり重要でない文法力を問われる英訳問題も含まれます。より高度な語彙力と文法力が求められるようになり、これがデータサイエンス学部の合格者割合の増加に寄与したと考えられます。
ただし、2024年度入学者のデータサイエンス学部の入試倍率は3.0倍で、例年の5倍近い倍率から大きく減少しました。その影響なのか、2024年度の合格者割合は25%と、2023年度の43%より低下して例年以下の合格者割合となりました。

また、理学部の合格率が36%→28%→24%→21%と年々減少していますが、この原因は分かりませんでした。入試方法の変化は無く、倍率が下がってもいませんでした。

おわりに

学部によって大きく差がありますが、新入生のPE合格者は全体の半分程度という事が分かりました。この合格率には推薦入試を通じて入学した学生も含まれていますが、一般入試で共通テストと二次試験の英語が十分できていた学生でも、PEを合格できなったというケースは少なくないはずです。

横市生としての個人的な意見ですが、英語が苦手な方が横浜市立大学を受験することはお勧めできません。一般入試では英語の分を他の科目で補えれば合格できるかもしれませんが、PEは英語をどうにかするしかありません。
せっかく入学できても、卒業できなければ意味がありません。PEのせいで留年したり、ましてや卒業できなかったりしたら時間と学費の無駄です。

他大学を検討する際も、PEのような独自の科目や制度には注意が必要です。志望大学の絞り込みは面倒な作業だと思いますが、調べれば分かる事を知れずに大学とのミスマッチが生まれるのは勿体無いです。どうせ受験勉強は辛いものなので、どうせなら自分に合った大学を選びましょう。

軽くフォローしておくと、横市での留年する学生の割合が他大学と比べて特別に高いわけではないと思います(データをまだまとめていないので確証はありません)。ほとんどの横市生はPEをクリアして3年生に進級しています。
また、横市に合格した後にPEの制度を知る学生も少なくなく、中には英語が苦手な学生もいますが、最終的には進級できている人がほとんどです。
進級のためにできなければいけない事なので、英語が苦手でも、TOEICの対策を怠らなければ留年する事は無いでしょう。

英語が苦手でなければ、PEについて過度に心配する必要はありません。横市への入学が決まったら、4月1日のTOEFLに向けて準備を始めることをお勧めします。一般入試で合格した場合、試験まで時間がない上に、新生活の準備で忙しいと思いますが、過去問を解いてみるだけでも違います。過去問は無料で入手できれば一番ですが、購入してしまっても良いと思います。それでPEの講義を免除できれば大きな利益です。

4月1日のTOEFLで合格できなかったとしても、早めに、できれば1年前期で合格できるようにしましょう。学期末のTOEFLはPE履修生なら1回無料で受験できますが、TOEICの方が簡単だと言われています。また、チャンスは多いほうが良いです。TOEICは受験料がそこそこ高く、リピート割引以外の割引も無いですが、後期もPEを履修するよりはマシです。
PEが1年後期以降まで長引いてしまうと、PEと時間が重なって他の講義が履修できなくなってしまったり(PEは不合格なら強制履修です)、GPAが低くなったりしてしまいます。早めに合格しましょう。

PEを前期に取得できないと

後期も1週間に3回PE授業の授業がある
1年生のうちに取得できないと、2年生になっても、授業回数は減らないので、専門科目を履修できない
GPAのスコアが低くなるので、GPAが関係する事柄(例えば、研究室配属、環境学習、インターンシップ、一部の奨学金など)に影響を及ぼす

必ず1年生のうちに単位を取得しよう
データサイエンス学部の新入生オリエンテーションで配布された資料


以上、横浜市立大学のPE合格者割合についてのまとめでした。ご一読いただき、誠にありがとうございました。以降は編集後記などの雑記です。


編集後記

このデータは私のTwitter(現𝕏)で公開したものですが、鍵垢にしてしまったので、noteで再度まとめ直しました。考察はツイートしてなかったので追記しています。
このPEのデータは、2024年度の結果までは更新する予定です。 予定通り、2024年度のデータを追記しました。来年度以降は私は卒業しているので、興味がある方がもしいましたら引き継いでくだされば幸いです。Power Queryの使い方などは調べてみてください。

プログ系サービスの利用はこのnoteが初めてでしたが、一つのトピックについて詳細に書くのにnoteは便利だと感じました。Twitterでも課金すれば長文を投稿することは可能ですが、やはり短い投稿がメインなので、長文は読む気が起きませんね。
マイナーな情報については、私自身が普段noteやQiitaの記事の内容に助けられているので、このnoteで知りたい人に向けて情報を残すことができたら良いなと思っています。このnoteの情報はあまりにもマイナー過ぎると思いますが。
今後もまとめるような話題があれば執筆しようと思います。次はストレート卒業率について取り上げようと考えています。前提知識の説明が不要なので、このnoteよりは短くまとめられると思います。

おまけ

昔の横浜市大新聞に、横市でのPE導入時の様子が確認できるライブドアブログの記事が存在するので紹介しておきます。興味のある人は在学生でもあまりいないとは思いますが、もし興味がありましたら訪問してみてください。あまり考えられませんが、ブログ閉鎖に備えて概要を記述しておきます。先にこっちが閉鎖されるかもしれませんが。アクセス日はすべて2024年2月4日です。


「特集・新カリキュラムの全容」2005年04月10日
新しいカリキュラムにてPEが新設されたことを示している。


「3年次進級条件 クリア5割」2006年10月29日
3年次進級条件であるTOEFL500点の割合が53%(横浜市大新聞の調査結果)であったことを示している。
記事内の論評では、試験合格率が低い状況が指摘され、大学が授業運営の失敗について十分な説明を行わず、学生に対して不公平な姿勢をとっていると批判している。


「現2年生 仮進級へ」2007年02月22日
TOEFL500点の3年次進級要件を満たしていない2年生に対して、3年次前期までの仮進級制度が導入される事が通知されたことを示している。
記事によると、3年次進級要件の達成率が低く、全体の半数近い留年者が出る事を危ぶまれていたため、大学側が救済措置を講じた。大学側は同制度を平成19年度前期までの措置とし、以後は実施しないとしている。


「3年次仮進級者 6割が進級できず」2007年09月28日
仮進級していた3年生のうち58%が2年次に戻ることになった(留年した)ことを示している。
記事内の論評では、学内広報と新聞の調査結果の相違から、仮進級者の中には退学者や休学者がいる可能性があると指摘されている。学生に対する大学の冷淡で無責任な態度に対する憤りが示されている。また、進級できなかった学生がゼミの研究中断の可能性や経済的な問題に直面することに触れ、今後は大学による学生全体へのサポートが必要だと訴えている。


「新学長 不安払拭する人選を」2008年01月26日
本学の学長であったブルース・ストロナク氏が、2年間の任期を残して辞任することを表明したことを示している。学長は2006年4月に就任。国際的な競争力の向上を目指して少人数教育と英語教育に注力しTOEFL 500点以上を3年次への進級条件に設定した。学部一期生の約2割が不合格となり、辞任の理由は公にされていないものの、これにどう対処するのかという行き詰まりも退任のひとつの理由だと、この記者は推測している。

なお、記事内に「もしかしたら、そういった進級条件はなくなるかもしれない。」とあるが、記事執筆から16年経過した2024年2月現在において(TOEIC L&R 600点以上等で代用できるものの)TOEFL-ITP 500点以上の条件は残っている。









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