たかが数百円をされど数百円と思う瞬間

ダメンズ製造機と大学時代から言われ続け、ちょっとフェミよりの同級生には「雲丹みたいな子がいるから男が調子乗る、あんたみたいな女は公害」とまで言われたことがある。貢ぎ癖も尽くし癖も自覚はなくて、ただただ愛する人には喜んでもらいたい、という精神に乗っ取って生きていただけだ。その裏で私が別の人たちから数々の貢ぎ、尽くし、施しを受けていたことを彼女たちは知らない。物事は多角的に見た方がいいと思う。経済が回っているように、恋愛だって回っている。常に同じベクトルを向いているとは限らないし、その熱量だってかなりの差はあるのだから、自分の納得のいくようにどこかで補ってもらいながら、バランスをとらなければ心は枯れる。

大学生のころ、ビンテージ物の古着が好きな子に恋をした。ビンテージ物なんて私にとってはただの廃材に見えたりもするんだけど、これむっちゃ可愛くない?と言われれば「うん!可愛い!着てみなよ!」って笑顔で言ってしまうし、「一点物ですよ」(ビンテージなら大概一点物だけど)なんて言われたら「買った方がいいよ!」なんて言ってしまう。「ちょっと予算オーバーやな…」なんて残念な顔をされれば「何の為に私連れてきたん?アクセサリーじゃないよ。とりあえず買ってきなよ」と財布のひもが緩む。「あ、でもさっきのサングラスも可愛かったよな?」って言われたら、さすがにそれはスルーする。私には全く理解の出来ない世界の12万もするビンテージ一点物のニットを買って彼に渡し(しかも本カノがいる)私のテンションは上がる。ま、バイトちょっと頑張ればいいや。食費は同伴で済まそ。そんなくらいしか考えない。しかし家に帰って気にかかるのが「サングラスの存在」悔やむ。サングラスもついでにお買い上げしなかった自分を心底悔やむ。翌日私は一人またGoogleマップを見て1時間ほど電車に乗ってそのお店に向う。当然目的はサングラスだ。謎に彼と私、色違いで購入。一旦帰宅して、身だしなみを整え、彼のバイト先に向う(深夜のコンビニだ。)レジに並んで、お菓子を買うついでに、紙袋を渡す。この瞬間私の脳内アドレナリンはドバドバ出まくってて、冬にも関わらずジトッとした汗をかくほどだった。そう喜ぶことは全部してあげたいのだ。ラウンジのバイトが終わってから行ったのでほんのりお酒には酔っていたが、サングラスを買ったのは素面の私である。

他にもエピソードはあって、13時間労働週に半休くらいしかなかった職場で働いているとき、半同棲のような半居候のようなカップルではない謎な存在に恋をしていて、欲しい物あるーって言われたときも、一緒に買い物に行くにも私が動ける時間は24時間営業のコンビニとスーパーが開いてる時間位で、キャッシュカードと暗証番号を伝えて、マイナスにならないようにだけお願いね!と伝え私は出勤した。家に帰るやいなや、彼は嬉しそうな顔でこれ買った!!と教えてくれて、またしても私には理解できない音楽に使う道具?機械みたいなものだったが彼が喜ぶならそれでよかった。

好きな人となら、サイゼリアどころかマックだって、ミスドだって、吉牛でも全然構わない私なんだけど、(しかも私が払っていいし。)、好きでもない人との食事は苦痛だし、私の大好きな化粧品を顔につけるのさえ勿体ないと思ってしまう。最近エレガンスのプードルの限定を買ったんだけど、もし別の安いパウダーで化粧を済まされていたら脈はないと思ってほしい。この頃友人ともカラコンすら惜しいなんて話をするんだけど、好きな人に会うのはお気に入りの1dayだけど、どうでもいいときは1month使ってるから。多分曇ってあなたの顔はあまり見えていないし、瞳がもしうるうるしていたらコンタクトの調子が悪いということである。

ちょっとの距離のタク代だって、自販機で買うジュース代だってそんなものはちっとも気にならない。たかが数百円だ。これが恋の魔法だ。しかしある日突然、たかが数百円がされど数百円に思える日がやってきたりする。されど数百円で食い止められればいいのだが、気付けば私の百円返せ!くらいになっていたりする。そうここでラブイズオーバー、恋は終わってる。

女がお金を払うなんてありえないっていう思想のもとに生きている女性陣はそういうポリシーなんだから元から数百円も出させるような男には手を出さないだろう。ただ私のようなタイプだと、百円返せ。が恋の終わりの合図なのだ。

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