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40:エーデルワイスの咲く国で再会した二人。物語のその後を考察(16話)

  第16話、物語はついに終わりを迎えます。南北に分断された朝鮮半島でセリとジョンヒョクは再び離れて暮らすこととなります。軍事境界線を超えて自由に会うことができない二人。ジョンヒョクはセリに「エーデルワイスの咲く国で再開しよう」と告げます。

ジョンヒョク所属の「国立交響楽団」は、北朝鮮の名門オーケストラ(16話)

 ジョンヒョクは軍を除隊後、再び音楽家として道を歩み始めました。朝鮮民主主義人民共和国国立交響楽団に入団しピアニストとして活動します。では国立交響楽団はどのようなオーケストラなのでしょうか。
 1946年に中央交響楽団として設立後、様々な芸術関連団体を統合・独立を経て現在の体制となりました。対外活動も多く行っており、1982年には20世紀朝鮮半島を代表する作曲家の一人である尹伊桑(ユン・イサン)氏を平壌に招待し、彼の代表曲であり韓国の民主化運動を描いた「光州よ、永遠に!」を上演しました。2000年には韓国を訪問しKBS交響楽団と共演、2008年には指揮者ロリン・マゼール率いるニューヨーク・フィルハーモニックと交流を行いました。さらに2013年には北朝鮮を訪問した元・大阪フィルハーモニーの首席指揮者であります井上道義氏のタクトでベートーヴェン交響曲第9番「合唱付き」を上演しました。

 このように華々しいプロフィールをもつ同楽団ですが、北朝鮮ならではの特徴もあります。それは音楽性と楽器編成です。北朝鮮において音楽は政治と強く結びついていて、金正日総書記は音楽や映画などの芸術を朝鮮労働党の思想の宣伝手段としました。彼によると音楽で重要なものは「大衆を導く思想性」であり、指導者や国家を称え労働を賛美する楽曲を演奏させました。
 同楽団も西洋のクラシック音楽よりも北朝鮮国内で作曲された音楽を多く上演しています。また、金正日総書記は民族の独自性を大切にし、西洋楽器に加え北朝鮮で独自改良発展させた民族楽器との「配合管弦楽」編成を推奨しました。同楽団に所属する作曲家たちによる代表作である管弦楽「青山原に豊年がきた」、新たに編曲された「アリラン」も配合管弦楽編成のために作曲された楽曲です。 

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(写真)国立交響楽団のCDと紹介リーフレット。ジャケットのイラストは楽団の活動拠点である牡丹峰(モランボン)劇場

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