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11:貝プルコギはガソリン焼き⁈トウモロコシ麺はどんな味?北朝鮮の食と酒(1-5話)

 韓国ドラマには食事のシーンが多く、いずれも美味しそうで印象に残ります。『愛の不時着』では北朝鮮の料理がたくさん描写されていましたが、北朝鮮の人々は実際にはどんなものを食べているのでしょうか?ドラマに登場する食べ物を中心にご紹介しましょう。
※この記事では1-5話に登場する食べ物とエピソードを紹介しています。視聴中の方は話数表記を見てネタバレに気を付けてご覧ください。

チスがこっそり飲んでいた蛇酒は、お偉い方々への贈答品(1話)

 1話でピョ・チスが廃屋でこっそり飲んでいた蛇酒は、現在でも薬効を期待して飲む人が多い貴重なお酒。政府の幹部や富裕層への贈り物として重宝されているそうです。
 北朝鮮では、漢方として珍重される高麗人参で作った酒も生産されており、こちらはお土産品や贈答品として有名です。

開城の労働者たちに大人気だった、資本主義の味「棒コーヒー」(2話)

 チョルガンがインスタントコーヒーを作り、空になった紙の袋をマドラー代わりに淹れたコーヒーをかき回して飲むシーンがあります。
 この時、チョルガンが入れたのが、棒(マッテギ)コーヒーです。棒(マッテギ)コーヒーは、北朝鮮独特の呼び方であり、韓国ではコーヒースティックと呼ばれています。北朝鮮では外来語を直訳することが多いのです。
    ドラマでは「下の街の棒コーヒー」、つまり韓国の製品として登場します。
 かつて北朝鮮ではコーヒーは「資本主義の味」とされ、ごく一部の外国人観光客向けのホテルやレストランだけで提供されていました。金正恩時代に入り、平壌や地方都市にはコーヒーショップが登場し、流行に敏感な若者たちは文化的な嗜みとしてコーヒーを飲むようになりました。平壌にはラテアートを施してくれるカフェもあります。

 北朝鮮でコーヒーが流行するきっかけとなったのは、韓国の現代グループ出資のもとに発足した開城(ケソン)工業団地です。南北の平和と協力の象徴として韓国側は5千億円ほど投資したと言われ、北朝鮮の外貨獲得手段ともなっていました。
 その開城工業団地の従業員たちにおやつとして配られたのが、この棒コーヒーとチョコパイでした。当時の北朝鮮は今よりも食糧事情が悪く、チョコパイのように砂糖やチョコレートをふんだんに使った菓子はなく、たちまち北朝鮮の労働者たちに人気となりました。

 韓国製品を取り締まる立場にありながら堂々と棒コーヒーを飲むチョルガン少佐と、それを頑なに固辞するジョンヒョクのシーンを覚えていますか?棒コーヒーが二人の対照的な姿を描くための演出に、効果的に使われていました。

ジョンヒョクがセリに作った朝食は、味噌仕立てのトウモロコシ麺(2話)

 北朝鮮に不時着したセリはジョンヒョクの舎宅で一夜を過ごします。翌朝、ジョンヒョクはセリのために麺の朝食を作ります。迷惑極まりない闖入者であるはずのセリのために、早朝から粉をこねて製麺機で麺を作るこのシーンには、ジョンヒョクのやさしい人柄がよく表れています。

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