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相鉄グループ、ポイント事業の難航【前編】~会社規模に反比例する相鉄経済圏の分散っぷり~

結論

一つの持株会社の傘下のくせに。なんだこの自称経済圏


まえがき

 2024年3月1日より、相鉄グループでは「相鉄ポイント」を導入します。「なぜ今になって?」と思うし、何なら世間一般のECショップや金融業の「相鉄経済圏」に "まだ" 至れていないと言う段階にあります。
 そこで、「なぜ、『相鉄沿線なのに使いづらいのか』」を探ることにし、改めて他社のポイントシステムを調べなおしてみたら、その歴史を調べるだけでまず一苦労。それゆえに、「ポイントシステムの歴史」だけで一つの記事が生まれてしまいました。ゆえに、今回は相鉄ポイントについて2本立てにし、「相鉄ポイントが誕生するまで」を前編として投稿します。

「相鉄経済圏」のポイント史

この歴史を知る前に確認したい背景情報

 相鉄ホールディングス。初代相模鉄道を端緒とした神奈川県の大手私鉄である。この大手私鉄の歴史の多くは他所で語られているのでざっくりとしか触れないが、「砂利採取業、陸運業にて財を成したのに今ではそれを捨てて不動産業、運輸業、流通業に徹する会社」と言う事業形態に至っている。現在の相鉄はホテル業にて全国、アジアの宿泊ネットワークを、流通業にて神奈川県広域の流通網を、小売業にて神奈川県最大の繁華街である横浜駅西口(北幸、南幸)を統括している。
 しかし、これを「相鉄経済圏」の括りで見るとこれは大変怪奇な歴史となる。実際は、こうなることは必然であり、その原因は以下の三者の不和にあるとみられる。

  • 相鉄アーバンクリエイツ、相鉄ビルマネジメント (以下、ア) ……かつての横浜駅西口のような都市開発の部門。ジョイナスを筆頭とした相鉄のテナント類の開発、運営を行う。港南台シネサロンの運営会社。

  • 相鉄ホテル (以下、ホ) ……1998年の横浜ベイシェラトン ホテル&タワーズの運営から始まり、現在の相鉄ホテルズの経営を実施。

  • 相鉄ローゼン (以下、ロ) ……相鉄グループの流通最大勢力。飲食店の合弁会社に始まり、物品販売業・映画館業・飲食店業・広告業を担当。元東証二部上場企業。かつての相鉄ムービルの元運営会社。

前者二者はまだしも、最後の相鉄ローゼンの独走ぶりは凄まじいものだった。この独走ぶりはある意味でNTT本体とNTTドコモの間の別会社ぶりと似ています。なんなら、これを基本神奈川県内でやっていたと言うのだから恐ろしい。

~1981年 相鉄グループの統一クレジットカード「シーガルカード」の運用を開始

  当時の資料が手元になく、どのような意図で発行されていたかは不明。おそらく、現代のようにインターネットが普及する前の世代におけるキャッシュレス化需要を受け入れるものだったと考えられます。

~?年 「ウェルカムカードポイント」のサービス開始(ロ)

 「相鉄経済圏」の中で欠かせないのがこの「ウェルカムカードポイント」。今まで多数のユーザーがポイントを貯め、商品券を手に入れ……を繰り返していたことだろう。実はこれ、ハッキリとした開始日が分かっていない。雰囲気的に相鉄LIFEのブランドが確立した90年代辺りに今のカード体制になったと考えられるが詳細は不明のままです。

2006年 相鉄カード はじまる

 世は「オートチャージ」がブームのさなか。相模鉄道株式会社は本格的なクレジットカードの発行に踏み切る。その名も「相鉄カード」年会費無料・家族カード無料のクレジットカードである(なお、2024年現在でも新規発行が出来ます。)。
 そんな相鉄カードだが、当初より多数の得点を組み込んでいた。

  1. 年会費無料。ETCカード実質無料
    年会費は永年無料である。実は関東大手のクレカで年会費が永年無料なのはまあまあ珍しい。一応ETCについても年会費無料のようだ。
    「ETCカードは初年度年会費無料、次年度以降も前年度にETCのご利用が1回以上あれば無料です。(年会費税抜500円+税)」

  2. PASMOオートチャージサービスに対応
    オートチャージに対応している。年会費無料かつオートチャージ対応と言うことで、電車利用しかクレカに用がないような人にはおススメのカードだ。

  3. 相鉄の定期券購入に使える唯一のカード
    相鉄カードは地味に相鉄線内の駅にて電車・バス定期券の購入に使える唯一のクレカだった。

  4. 相鉄各施設の利用でポイントが貯まる
    何と相鉄グループの各施設にてポイントが回収できると言う素晴らしいシステムである。何なら各施設のポイントカードとの二重取りもできると言う大変お得な制度である。しかも、相鉄ジョイナスなど横浜駅西口各施設では期間限定で10%引き!!

  5. iD一体型にできる
    うん。

  6. 提示特典、利用特典多数
    空港のラウンジ……とまではいかないが、国内の様々な場所にて提示するだけで割引が効くと言うウルトラ効果つき!空港ラウンジのようなプレミア体験が相鉄沿線にて身近にできる!

ここから相鉄カードによって神奈川を基軸とした「相鉄経済圏」が広く展開される……はずでした

2014年5月31日 相鉄HDがサンルートを子会社化(ホ)

『相鉄ホールディングス(横浜市西区)は30日、ホテルチェーンを全国展開するサンルート(東京都渋谷区)の全株式を取得、連結子会社化すると発表した。』

お、これで相鉄カードも全国のホテルでお得に貯めれるんだろうな……。
・相鉄ホテル (横浜ベイシェラトン除く)、コテージアルカディア、レストランオークテラス→2.0%還元のママ
・横浜ベイシェラトンは10%割引
……しっぶ
しかし、これ以降相鉄では相鉄フレッサインとサンルートを統合した「相鉄ホテルズ」としてグループを形成し、ポイントサービスを拡張します。

2015年 12月1日 ジョイナスポイントカード 誕生(ア)

 まさかジョイナスにポイントカードが!?てか今まで普通のポイントカードすら無かったの!?このジョイナスにポイントカードが誕生するもつかの間、相鉄カードには追い打ちを打つように改悪が続く。

2016年 相鉄カードのショッピングセンターでの割引、廃止(ア)。

 なんかすごいことやらかしていません?もう10%引きやらないなら相鉄カードを持つ意味なんてほぼなくない?と言うレベル。あ、定期の購入があったわ……。

2017年 相鉄ホテルズ、「FRESA CLUB」配信開始(ホ)

 相鉄フレッサインの事業拡大に合わせた対応のようだ。これはキャッシュバックとポイント運用が可能なシステムだが、サンルートとはまた違うポイントシステムだったようだ。

2020年 2月3日 券売機、定期券発売所でのクレジットカード相互利用、開放

『相模鉄道では2020年2月3日(月)始発より、各駅の券売機および係員定期券発売所において定期券をご購入する際に、相鉄カード以外のクレジットカードもご使用いただけるようになります。』
本当に持つ意味がない。なんなら相鉄カードのブランドにないJCB、AMEX、Dinersすら使える。
また、この1ヶ月後の2020年より相鉄全線にて「定期券QR予約システム」が始まり、春の風物詩だった臨時の定期券発売所もひっそりと終了しています。
なお、この予約システムを用いた定期券の受取はサービス開始当初よりスマートフォンの所持が事実上必須ですが、通勤通学ともに全線全駅にて対応。当初より通学定期券を新規継続の両方でネット予約に対応させたことは珍しいことだったようです。

【参考】2020年6月1日 Vポイントが始まる

 相鉄にとって今や切っては切れない存在が戦後混乱期の帝国銀行、そして現在の三井グループである。かつての住友銀行系の三井住友カードは以前より提供していたポイントサービスである「ワールドプレゼント」を「Vポイント」に名称変更した。

実は、この少し前に相鉄カードの独自ポイントシステムは「ワールドプレゼント」に吸収されました
え?

2021年 相鉄ホテルズクラブがリニューアル(ホ)

 リニューアルしたのは良い。サンルートも一つの経済圏に統合できたのも良い。だが、どんなに泊っても極論500円引きだけ?弱すぎでは????

2022年 相鉄LIFEのポイント、ついに統合される

 意外かもしれないが、相鉄系不動産物件でのポイントカード統合がされたのもこの年だったりする。なんでだよ。

この参考文献の気になる部分を抜粋する。

『「相鉄ジョイナス」「ジョイナステラス二俣川」「相鉄ライフ二俣川」で利用できる「ジョイナスポイントカード」に、「相鉄ライフ」7 施設(三ツ境・さがみ野・南まきが原・緑園都市・やよい台・いずみ野・いずみ中央)と「港南台バーズ」を追加することで、一つのポイントカードで全 11 商業施設のご利用が可能となります。』

商業施設「相鉄ライフ」「港南台バーズ」のポイントカードを 「ジョイナスポイントカード」に統一【相鉄ビルマネジメント】 | 相鉄グループ (sotetsu.co.jp)

ここまでは良いのだ。問題は次の一文にある。

『1.「ライフ・メンバーズ・カード」(相鉄ライフ三ツ境)、「緑園都市ライフポイントカード」(相鉄ライフ緑園都市)、「相鉄ライフいずみ中央ポイント倶楽部」(相鉄ライフいずみ中央)、「バーズメイトポイントアップカード」(港南台バーズ)を「ジョイナスポイントカード」に統一
2.「バーズメイトポイントアップカード」のポイントはジョイナスポイントへ自動的に移行、そのまま利用可能
3.「ライフ・メンバーズ・カード」「緑園都市ライフポイントカード」「相鉄ライフいずみ中央ポイント倶楽部」廃止』

商業施設「相鉄ライフ」「港南台バーズ」のポイントカードを 「ジョイナスポイントカード」に統一【相鉄ビルマネジメント】 | 相鉄グループ (sotetsu.co.jp)

港南台バーズは1976年、相鉄ライフ三ツ境も1986年開業だと言うのになぜここまで統合されずに放置されたのだろうか。何なら吸収されるポイントカードが2020年代になってもなお4枚もあったのが異常すぎる。
 しかし、これでも統合出来なかったポイントがある。ホテル、鉄道、そしてローゼンである。これらのうちホテル除く2者がいよいよ一体化される。

2024年3月1日 ウェルカムカードポイントとジョイナスポイント、統合

 ようやく来たか。って感じですね。これで長年続いた「ウェルカムカードポイント」と「ジョイナスポイント」が合併されます。さて、ここまで分量が増えすぎたのでこの記事は予告通りここでおしまいです。

それでは。

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