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ヴィム・ヴェンダース監督の新作[PERFECT DAYS]に格差社会の肯定を感じた。([ベルリン・天使の詩]の監督なのに)

ヴィム・ヴェンダース監督の新作[PERFECT DAYS]に格差社会の肯定を感じた。([ベルリン・天使の詩]の監督なのに)
このプロジェクトの(企業と機関と代理店の利害が交錯する)成り立ちを知って、私は宙を睨んだ。総論として残念な逸品である。

トイレ清掃人の単調な日常に禅的な諦念を持ち込めど、小津安二郎のニヒルとは別次元にある。([アメリカの友人]の監督なのに) 田中泯のホームレスも形式的存在に過ぎない。([Pina/ピナ・バウシュ 踊り続けるいのち]の監督なのに) 歌う小料理屋の女将が石川さゆりって酒メーカーのCM設定じゃん。(日本映画なら肩を寄せて妖艶にお酌してくれるのに) 運転手つき高級車で木造アパートに乗り付ける主人公の妹が麻生祐未なのは魅惑的に貧富の落差を示したけれど、情念のドラマに発展せず。商店街の古書店や浅草の居酒屋、老人がくつろぐ銭湯やOLがランチする木漏れ日のベンチなど、世相の点景はスタイリッシュに屹立しているけれど、重厚な底力が響かない。([パリ・テキサス]の監督なのに)丁寧な植木の手入れ、いじらしい姪っ子の家出、夜の幻想イメージ、文庫本、カセットテープ、缶コーヒー、BGM、みんな気になる断片のモザイクだ。良質素材の串団子だ。
そして役所広司はカンヌ男優賞。プロジェクトの成功、あっぱれである。

小津安二郎に指示されても涙する芝居を演じられなかった笠智衆の不器用の重みを想い、私は腕を組んで唸る。

[都会のアリス]は無骨で一徹でやさしかった。

https://www.perfectdays-movie.jp/

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